海の街
初投稿作品です。文章がたどたどしく、読みにくいと思いますがそれでも読む!という優しい方がいてくださればうれしいです…。
海の近くの小さな街に小さな、だがしかし伝統のある寄宿学校がある。
その学校の名前はアンジュ・ポルト学校。本当に古い学校で曰く、今年で創立500周年だとか。
ところで、この学校にはというより、この街には5年に一度『天使』と呼ばれる守り神が訪れる。この守り神は平和の象徴で、それはそれは大切にされていた。だが、この街には世界を壊した大戦争以来『天使』は訪れなくなった。この戦争のおかげで世界は壊れ、ほとんどの街は壊れたが『天使』が訪れていたこの街は戦火を逃れることができた。戦争が終結してから既に数えきれない年月が経ち、世界は再び力を取り戻したものの、文明の中心であった魔法は戦争以前より衰退し、この街を除いて姿を消しつつあった。
「あーもうっ!何で私が『天使』様役なのよっ!!!」
大きめの部屋に響くかわいらしい少女の叫び声。
勢いよくドアをバンっと開け、部屋の中央にある机までずかずか進み、見事な金髪のツインテールを揺らしながら、机を勢いよくたたく。
「大体、もっと適役はいるでしょっ!?何で私!?こんなふわふわな服、学校の奴らに笑われるのが目に見えてるじゃないの!!!」
少女はすごい剣幕だが若干目を潤ませている。
「まあまあそう言わず頼む。誰もこの役をやりたがらなくて困っとるんじゃよ。」
そしてこちらはそんな少女をどうどうとなだめる初老の男性。
困ったような顔をしながらも少女の晴れ着に内心にこにことしていた。
「たまにはそんな服もいいじゃないか。とっても可愛いぞ、ルー。」
ルー、と呼ばれた少女は照れたのか顔を真っ赤にする。
実際、ひまわり色の瞳を潤ませ照れて赤くなる様子はその格好も相まってとても可愛いらしい。
――この少女、ルー・パトリオット・オプファー。
アンジュ・ポルト学校の2年生。(ちなみにこの学校、6年制で14歳の時に入学し20歳で卒業というちょっと変わった学校である。)
輝やかんばかりの金色の長い髪をツインテールにし、それぞれを蒼のリボンで結んでいる。そして、誰もが目を見張るであろう顔立ち。大人しくしていたら「綺麗」という表現が使われるのだろうが、その表情のせいで「可愛らしい」というほうがしっくりくる。
普段は男物の動きやすい服を着ているのだが今日はフリルのついたふわふわの蒼いワンピースを着ていた。
「またそんなこと言ってっ!!私、天使様役なんていう重要な役やりきれる自信ないのに!おじいちゃんはいっつも無茶ぶりするんだからっ」
「ほほほ。大丈夫じゃよ。儀式も形式的なものじゃし、適当にやっていればすぐ終わる。」
「それが校長兼街長の言葉?もう本当にいい加減なんだから。」
ルーは怒りを通り越して呆れた。
――この老人、フェレル・オプファー。
この海の街の街長でありアンジュ・ポルトの校長でもある。
その容貌はちょっと薄めの白髪に小さく優しそうな目、といった典型的な「おじいさん」という感じだ。
「街長なんぞそんなものだ。ふむふむ、今日の式典でみなの驚く顔が楽しみじゃ。こんな可愛い天使、なかなかいないからのう。」
…ちなみに、重度の孫ばかでもある。
「はぁ…。この街、こんなんが街長で大丈夫なのかしら…?
というかもう天使様役は決定なのね…」
ルーは本気で落ち込みながらも腹を括る。
もうおじいちゃんが私以外に天使様役を頼むとは思えないし。
一回決めると譲らないのだ、この老人は。
今から頑張って儀式の内容を覚えるしかない。
―『天使の訪れ』。…それはこの街の一大イベントであり、そしてはるか昔の、大戦以前から続く儀式でもある。天使が来ていた戦前は5年に一度、天使が来る日に盛大なおもてなしをし、この街を守ってくださるようお願いをしていた。
しかし、天使が訪れなくなってからは「天使役」の者が代理となって儀式を行っている。まるで、天使が帰ってくるのを待っているかのように―
と、これがこの街に伝わるお話だ。
…嘘か本当か知らないけど、私的には眉唾ものだと思っている。
大体、天使なんて本当にいたのかも怪しいものだ。ある話に尾ひれがついて『天使』という存在が出来上がった、という方が何倍も自然に思える。
でもまあお祭りは好きだし天使なんてものがいたら素敵だな、とも思うのだが。
だが。
何故か儀式当日の今日の朝に『この衣装で天使役、よろしくね☆byおじいちゃん』と書かれた紙とこの衣装がベッドの枕元にあるというのは腑に落ちない。
無茶ぶりにもほどがある。
そんなルーの心を読み取ったのか、フェレルは問題ないというように小さな紙切れを出した。
「大丈夫じゃって!今年は儀式を簡略化したからやることは少ないんじゃよ。
ルーはこの紙に書いてある通りに魔法を使って飛ぶだけじゃ。」
ルーは紙切れを不満気に受け取り、ざっと目を通す。
…まあこれなら…
「…なんとかなるかな。ただこの通りに飛べばいいんでしょ?」
するとフェレルはにこにこしながら頷いた。
「そうじゃ。よろしく頼んだぞ、ルー。儀式は深夜12時からじゃ。11時には儀式会場の海まで来ておくれ。」
「わかったわ。…で、儀式までこの格好じゃなきゃダメ…?」
ルーはとても恥ずかしそうに俯き、ワンピースをちょっとつまんだ。
いつもと全く違うフリルがついた可愛いらしいワンピース。
…この、なんかすごくいたたまれない…。
「ふむ…。」
フェレルはそんなルーの様子を見て考える素振りをし、満面の笑みで言った。
「着替えはだめじゃ☆」
「くぅっ!!儀式までに衣装汚れたらどうするのよ!!」
無駄な抵抗とわかりつつも一応は抵抗を試みてみる。
しかし、そんなはかない抵抗も一蹴されてしまった。
「でも、その衣装で今回の儀式の天使役がわかるんじゃよ。
ルーがその格好で歩き回ってくれたら発表する手間が省けるからの。
それに、汚れてもお前は魔力でどうにかできるじゃろ。」
「うぅぅぅ。おじいちゃんの意地悪…。」
ルーはそのままとぼとぼと元来た扉からで…
「こらこら、どこから出るつもりじゃ。」
…出ずにフェレルの後ろの窓を開けた。
―参考までに。ここはアンジュ・ポルト学校の校長室。何故かこの学校の校長室は3階にあるのだ。
「もう来たときより時間経っちゃったから学校の中、準備とかで人が歩き始めてるもん。そんなところをこんな格好で出歩けるわけがないじゃない。」
ルーはそういうと窓から飛びおりる。
そのまま重力に従って落ちるかと思いきや、ルーの背中から純白の羽が生え、軽やかに空を舞う。
「ということでまた後でね。おじいちゃん。」
そう言い残すとルーはワンピースをはためかせながら飛んで行ってしまった。
フェレルは苦笑しながらルーを見送り、ぽつりと呟く。
「結局は儀式でバレるんじゃから変わらないと思うんだがのう。
…それにしても、いとも簡単に『天使の魔法』を使う。」
『天使の魔法』、それはかつて天使が使ったとされる魔法。
もちろん、人間には使えない。空を飛ぶ魔法は厳密に言えば天使の使った魔法ではなく天使の特徴だが、人の魔法には空を飛ぶ魔法は存在せず、便宜的にそう呼ばれている。
『天使の魔法』は普通の魔法とは違い、自分の属性の眷属を使わない。
(眷属とは世界に満ちる自然が形を変えたもの。普通、目に見えない。この眷属がいないと魔力がいくらあっても魔法は発動しない。…例に出して言うと砂漠とかでは、ほとんど水の魔法が使えない、等。)
直接自然の力を使うため、使う魔力も人の魔法に比べると少量ですむのだ。
『天使の魔法』の種類についてはまた追々…。
ところで『天使役』には、学校の中で最も魔法に優れた者がなる。
ルーは普通の魔法はからきしだが、空を飛ぶ魔法を始めとした『天使の魔法』を使うことができる。
だからこそ『天使役』に選ばれたのだ。
「本人には、まったく自覚がないのが何ともいえないがのう。」
その昔、守り神を失いその帰還を待ち続ける街。
そして現れた『天使の魔法』を使う人間。
…まさか、な。
フェレルはルーがいなくなった空をしばらく見つめたが、程なくして机にあった書類に目を通し始めた。
初めまして、兎季といいます。
まずは拙い文章を読んでくださってありがとうございました!
思いたって、受験勉強中に投稿してみました。(現実逃避ともいう)
文章は書いている本人も読みにくい!と思うほどです。…これから精進していきます…。
更新はちまちまゆったりとしていきたいです。
※11月4日。
文法の誤りを訂正し、魔法の説明を少し追加しました。