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幼馴染、蒼褪める。

和食って本当に美味しいですよね。





 ・・・遅いっ!あいつはどこをふらふらほっつき歩いてるんだっ!


 最初のメールを送ってからすでに二時間が経過していた。




 今すぐ家を飛び出そうとしたが、折角作った朝ごはんを、まさか無駄にする訳はないわよね?と満面の笑みで母親に詰め寄られ、しぶしぶ食卓についた。

 ・・・久々の『我が家の朝食』に感動して、三杯もご飯をお代わりしたのは、まぁ、しょうがないだろう。


 

 ・・炊きたて日本米!出汁の効いた味噌汁!焦がし醤油が堪らない鮭の塩焼き!カリカリのベーコンエッグ!

 恋い焦がれた日本食に感動しながら、無言で一心不乱にがっつく自分に、母は笑いながらお代わりをよそう。


 「ほんと一体どうしたの要。まるで海外出張から帰ってきたパパみたいねぇ。」


 「・・父さんは?」


 少々気恥ずかしくもあるが仕方あるまい。こちとら・・(以下略)。


 「お仕事よ。休日出勤なんてっ!てぶつぶつ言いながら出かけて行ったわ。」


 「・・・そうか。」


 ほんと変な子ねぇと席を立つ母親の背中を見ながら、やっと帰ってきた実感が湧いてくる。

 人心地付くとやはり気になるのは菜乃のこと。


 「母さん。ちょっと出かけて来る。」


 「菜乃ちゃんと電話繋がったの?」


 「いいや。・・・向かう途中にでも繋がるだろ。待ってる時間がもったいない。」


 「・・場所はやっぱり分かってるのね・・。嫌、何でもないわ・・。」




 何故か目が据わっている母に見送られ、チャリと電車を乗り継ぐこと一時間。

 出来たばかりのころに菜乃と行こうと約束していたショッピングモールに、やっと足を踏み入れることが出来た。



 あいつ、買い物に夢中になってメールに気か付いていないのか?


 何度打っても帰ってこないメールに痺れを切らし、もう一度GPS機能を検索する。



 

  《検索結果・・予測レベル☆☆☆☆☆ 現在地・ Hotel Brilliant 25階》




 「はあっっ!!?」


 それはモールに隣接されている、レストランやウエディングで超有名の高級ホテルの名前だった。


 しかもこれ最上階なんじゃ・・!?


 予想もつかなかった検索結果に愕然とする。だが、動揺している場合じゃないと、すぐさま足をホテルの方向へ向けつつ、菜乃に電話をかける。


 トゥルルルルルル・・ トゥルルルルルル・・ 


 繰り返される発信音に苛立ちが募る。最悪の事態が頭をちらつく。


 早く出てくれ菜乃っ!と、気が狂い出しそうになった時、・・・電話がつながった。



 「・・もしもし。」


 それは聞いたこともない男の声。一瞬で頭に血が昇る。


 「ってめえっ!!菜乃に何してやがるっ!!!」


 自分でも驚くほどの低い恫喝が口から出て、携帯電話を震わせた。悪い予感に冷や汗が出て、心臓が軋みを立てる。


 「君は・・・。」


 「さっさと菜乃を出しやがれ!あいつに手ぇ出したら唯じゃすまさねぇぞ。・・もうホテルの中にいるし、階も分かってる!諦めて菜乃を返せ!!警察呼んでフロントで怒鳴り散らすぞ!」


 「いやっ!ちょっと落ち着け!事情があるんだ。・・丁度いい、案内を寄越すからここまで来てくれ。」


 「事情?そんなの知るか!さっさと菜乃を出せ!」


 「その『なの』さんにも関係してるんだ。もう向かってるから・・・、見つけたな?そのままついてこい。」


 確かに前方のフロントから、慌てた様子のホテルマンが自分の方に向かってくる。


 「わかった・・すぐ行く。」


 菜乃に一体何があったのか。一刻も早く詳細を知ろうと、案内のホテルマンをも問い詰めるも何も知らないようで。一瞬で最上階に駆け上がるエレベーターにさえ苛立ちが止まらなかった。


 そこでようやく、自分まで身動きが取れなくなったらどうしようもないと少し冷静さを取り戻し、ダッシュで携帯を操った。

 一番リストの上にあった父のアドレスを呼び出し、単語で、菜乃の名とホテル名を打ち、メールを送りつけておいた。最悪の場合、これで伝わるだろう。



 やっと辿り着いた扉の前。ホテルマンがノックをすると、すぐさま扉が開いた。



 「西織 要様ですね。」


 「ああ。菜乃はどこだ。」


 「どうぞこちらに。」



 なぜ自分の名前が出たのかもどうでもいい。

 黒のスーツを着た大柄な男に連れられ玄関を抜けると、大勢の人の気配がした。

 全く状況が掴めない。意匠を凝らした擦りガラスの扉の奥には、沢山の黒が動いているのが分かる。



 なんだ・・・?



 扉が開かれ、人々の視線がこちらを刺す。大量のパソコンが設置され、ピリピリとした空気がこの馬鹿広い部屋を支配していた。

 その緊張感の中央、自分と発するものと全く同じ・・すなわち怒気を漂わせた男が、自分を目にして立ち上がる。



 「よく来てくれた。正直手詰まりでね。君の力を貸して欲しい。」



 聞きたくない。物凄く嫌な予感がひしひしとする。さっきの圧迫感がより酷くなって襲いかかる。




 「これは一体・・・。」





 「単刀直入に言おう。この携帯の持ち主の『なの』さんと・・、私の妻と、もう一人女性が。現在行方不明になっている。恐らく、誘拐事件だと思われる。」





 


 


 

 

要、やっと現状把握。



GPS機能に関しましては、数年前に何度か遊んだくらいで記憶が曖昧です。表記が違っていたらすいません。


今日の活動報告におバカな小話を上げました。宜しければ覗いてみてください。



2/28 最後の方の文章に、関係ない部分が混じっていたのを修正しました。

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