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主人公、召喚される。

 

 次はどの店に入ろうかな。ちょっと見ない間に新しい店増えてるなぁ。


 

 言い訳をさせて貰えるなら、だ。直前にそんなことを考えていたせいだと思う。私がその場を、凄く凝った造りの・・新しいアンティークショップか何かだと思って疑いも・・・そう、周りを見渡しもしなかったのは。

 「だからおまえは危機感が足りないんだ!」という、要の突っ込みが聞こえた気がした。




   *************


 

 

 はて?確かさっきまでモールの廊下を歩いてたよな・・・。

 すぐそばのベンチに座りベビーカーの中の赤ん坊をあやす若いママさんを微笑ましく眺めつつ、仕事中なのだろうか、首からプラスチックのプレートを下げたパンツスーツの女の人とすれ違った・・・そう、その時。メールが来たんだ。そうそう、それで確認しようと携帯を開こうとして・・・。急に立ちくらみがして、手に持っていた携帯を落として・・・



 「あれっ!?携帯どこ?」

 「えっ!美羽ちゃんどこいったのっ!?」

 「・・・ここどこ?」



 自分の声に他の人の声が重なって。顔をあげると、今思い浮かべた女性達が、同じようにこちらを見ていた。



 「「「こんにちは・・・?」」」



 思わず三人で会釈をしあってしまった。


 ・・・・。



 「・・・あのっ!」


 少し呆然としてしまい、二の句を繋ぐことが出来なかった私とスーツ姿の女性に、いち早く立ち直った若いママさんがあたりをきょろきょろ見渡して、二人にすがりつく。

 

 「あの・・・赤ちゃんを見ませんでした?赤いベビーカーに乗ってる一歳くらいの女の子なんです!私ったら一瞬めまいがしちゃって・・・ここはどこなの・・・っ!?さっきまで目の前にいたのに!!」


 話すうちにだんだん怖くなってきたのか、口調が焦ったものに変わる。みるみるうちに顔面蒼白になっていくママさん。


 「あっ、そうですよね。先ほどベンチに座っていらっしゃった・・・」


 「そうっ!どこにいるか知ってるっ!?」


 ママさんがもの凄い勢いで菜乃に食いついてくる。恐いっ。母強しっ!ごめんなさい!ただの合いの手でしたっ・・。


 「ごめんなさい。分かりません。先程モールでお見かけしたものですから、つい声に出てしまって。・・私も同じなんです。ちょっと立ちくらみがして・・・」


 後になって考えてみても本当に情けなくなるのだけど、このとき私はまだ自分の状況がいまいち掴めていなかった。二人はとっくに周囲の様子がおかしいことに気付いていたというのに。だから若いママさんが発する必死さも、そりゃあ大変な事だけども、すぐ解決するものだと心のどこかで軽く考えていた。

 子供が迷子ならばまず捜すのは・・・


 「落ち着い下さい。まず迷子センターに行きましょう!私、店員さんにこのこと伝えて来ますね。」  


 「・・・あなた・・」


 ママさんが今にも泣き出しそうな顔を余計にしかめた。え・・なんで?




 「ねえ。」


 ふいに、それまで黙って周りを見渡していたスーツ姿のOLさん?が、割り込むようにこちらに声をかけてきた。


 

 「ちょっと様子がおかしいみたいだ。二人とも、見て。あっちの人達・・服が・・・」


 


 「・・・えっ?」

 

 疑問の声を発したのは私だけ。そのときになってようやくあたりを見渡し、二人に遅ればせながら・・・奇声を、上げた。


 「はぁっ!?なんじゃこりゃぁっ!!」



 先程から視界の端に捉えていたアンティークで纏めた・・そう、まるで中世ヨーロッパ風の空間の先には、なぜかその場に似つかわしい・・・・・・スタイルの人々が、みんな揃ってじっとこちらを凝視していた。


 そして、その集団よりもなお異彩を放っているのが、菜乃が奇声を上げた原因で。

 菜乃達との丁度中間に、いや、菜乃達三人だけを覆うように、そのシャボンのような不可思議な・・がドーム状に張られていたのだ。

 光を反射してか、それはキラキラと七色に輝いて・・・あまりの美しさに、私は思わず手を伸ばして膜に触れた。


 「「あっ・・」」


 後ろで女性二人の呟きが聞こえる。私が触った瞬間、触れた場所から膜はサァーーっと涼やかな音をたてて儚くも消えてしまったのだ。


 うわー・・なんかこれまずかったかな?すぐさま二人を振り返ったが時すでに遅し、二人とも何とも言えない微妙な顔をしていた。そして何より自分自身が、物凄く取り返しのつかない事をしてしまった気がひしひしとしてきたのだ。

 

 そう、先程から見なかったふりをしていた、奥の方に佇む人達の事とか・・・。



 嫌な予感はますます強まる。ついには、その集団の真ん中で一人だけ豪華なイスに座り、偉そうにふんぞり返っていた見るからに外国人だとわかる風貌の男が、決定的な言葉を放った。




 「ようこそ、異界の方々。三人とは驚いたが・・・とにかく歓迎しよう。私の妃たちよ。」



 


 「「「はぁーーー??」」」




 女性三人の声が広間に響き渡った。

 

 あっまた重なった・・。私たちなんか似てるのかな・・。ははっ・・。


 

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