主人公、幼馴染と共に明日を。
長いです。ラストは甘々で。
繋いだ手からあの二人の事を思い出した。
「ねぇ、リクさんとリラさんって不思議な人達だったね?」
「ああー、あいつらなぁ。」
「結局あの双月ってのは一体何だったの?あのおっきな赤い月と蒼い月が、今回のそもそもの原因なんでしょ?」
「・・・話すのはいいけど、長くなるぞ。」
「いいからいいから。聞いてるうちに眠くなるよきっと。」
まるで寝る前に母親に絵本をせがむ子供の様に、寝っころがったまま要を見上げる。要は溜め息一つで諦めたのか、ベットの横に座って私と同じ目線になった。
二人で手を繋ぐ、昔と変わらない風景。なんて幸せなんだろ。
「まぁ、俺もあんまり詳しくは調べて無いんだけど・・・」
そう言いながらも語ってくれたのは、この目で見てきた筈なのにまるで現実感のない絵本のようにへんてこな物語。
昔々、ある国に物凄く悪い王様がいました。この王様は世界中の誰よりも魔力が強かった為、誰も王様の事を止めることが出来ません。王様はどんどん悪いことばかりするので終いには魔王と呼ばれ、皆に恐れられていました。
そんな魔王を止めるために他の国の王様達が皆で相談しました。そして世界中の若者を集めて、その中で一番魔力の強い人に魔王を倒してもらうことにしたのです。
彼は勇者と呼ばれ、魔王を倒す旅に出ます。沢山の辛いことを乗り越え無事魔王を倒した勇者は王様に向かってこう言いました。
「王様、王様、魔王はとても強いので倒すことは出来ません。なのでこれからは魔王が悪さをしないよう私が見貼っておきましょう。」
そうして勇者は魔王を連れて二人空に上り、いつまでもいつまでも皆を優しく照らしたのでした。
めでたしめでたし。
「・・・これが俺が調べ物をしているときに偶然見つけた絵本の内容だ。最初は中身を見ただけで気にもしなかったんだが、なんとなく気になってな。調べて見たら、本自体があり得ないほど年代物だっていうのが分かったんだ。」
「年代物?絵本なのに?」
「ああ、そもそも双月ってモノが何なのか、誰も知らなかったんだ。ただ夜になると魔力を発して人々に力を与えてくれる存在。こっちで言う太陽みたいな、元々からある大いなる自然の恵みと皆が思い込んでいたらしい。」
そのいわゆる太陽に当たる存在がいきなり消えたのだから人々は皆大騒ぎ。犯罪まで横行し出してこのままじゃ世界の崩壊だと藁をも縋る思いで呼び出されたのが要だった。ただ問題は呼び出した人達自体、何をどうすればいいか全く分かっていなかった事。とにかく要を呼び出せば救われると思っていたらしい。なんて大雑把な。
ただ、結局はその行為が正しかったらしく、要が一人になった時にリクさんがいきなり現れた。そして告げられた内容はなんと世代交代。ここで遂に我慢の限界が来てキレまくったそうなんだけど・・・うん、詳しくは聞くまい。何とか力をリクさんに分けることで役目を免れた要は、日本に帰るためにありとあらゆる書物を捲ったそうだ。
その時に分かった事を纏めて推察すると、恐らく双月って言うのは誰も覚えていないくらい大昔に創られた魔力製造機なのでは、ということだった。
「この絵本にあるように、最初はあの世界にいる人間が生贄に選ばれていたんだと思う。」
「生贄って・・・」
「絵本ではよくある英雄譚のように書かれているが、実際は強制的なものだっただろうな。何せ自分の魔力を無理矢理吸収されて世界中に放出されるんだ。並みの人間には耐えられない。恐らく短いスパンで人を変えては繰り返されていた筈だ。それでも人口の少なさから事足りていたんだろうが、魔力が安定したことで爆発的に人口が増えた。そうなると、もうあの世界の人間では支えきれなかったんだと思う。リクが言うには、今ではあの世界の人間が双月に入っても一時間も持たないそうだ。」
そうして出された事案が、双月の神に頼ると言うこと。双月を神聖化していた人々は必死に神に姿を現して貰えるような方法を模索した。狂ったような信仰心を持ちながらも技術を編み出す上で自分達に都合のよい細かな条件を付け加え、そしてそれは成功してしまった。そうして現れたのは、皮肉にも神も何も理解しないただの異世界からの迷い人。それでも結果は想像もしないほど大成功を収めた。
「編み込んだ条件が良かったのか、異世界人は皆かなりの魔力を保有していたそうだ。長い長い年月を交代無しでこなしてしまう都合の良い生贄、それこそ存在を忘れられてしまうくらいに。」
たとえば昔は三年交替だったものが、異世界人を使うと五百、六百年は軽くもったらしい。
「でもそのスパンはあの世界の人達にとっては長過ぎたのかもな。数代は何とか繋いだ歴史も、リク達二人を順番に召喚してそれぞれ赤と青にの双月に据えた直後に途切れてしまったようだ。一国が起こした戦争が引き金となって世界全土を巻き込んだ大戦が起こったらしい。五百、六百年に一度のイベントってのは、人に何かを決意させるきっかけに成り得たんだろう。世界は勝手に自滅して双月のシステムごと忘れ去られたようだ。」
「えっ?じゃあ・・・あの世界が滅びたってこと?」
「ああ、あの二人にしたら蚊帳の外だからな。眼下で起こる戦いに干渉することも出来ずただじっと双月の役割を全うしていたらしい。」
「リラさん達可哀想・・・。」
「いや、あれはあれで納得っつーか、感謝しているらしい。何度も『役目を譲らなくていいのか?』って聞かれたからな。いいも何も、俺はあそこに留まるつもりなんかこれっぽっちもないのにな。あいつらそれ聞いてすげー不思議そうな顔してたし、俺達とは価値観が違うんだろ。
その後、人口が極端に減少し文明はかなり後退して、大規模な機械も術も使われなくなったおかげで二人の魔力もなかなか衰えなかったんだと。あいつら結局800年近くは双月やってるらしいぞ。」
「800年っ!?」
「ああ、気ぃ狂いそうな話だろ?でも二人にしたら自由気ままな良い環境なんだと。だけど遂にリクの方に限界が出始めた。新しい『勇者』を召喚するというシステム自体を皆知らないから変わりは来ないしさてどうしよう・・・ってとこから俺達もゴタゴタに巻き込まれたって結末。」
「へー・・・なんていうかほんとに壮大な話に巻き込まれたもんだね。事情が全く分からなかったけど、今聞いても全く頭に入ってこないや。」
「だろ?まぁ、ただの物語として認識しとけばいいよ。無事に帰ってこれたんだしな。」
そう言って子供みたいにわしゃわしゃと頭を撫でられる。
「それにしても、あれから実質、また一日経ってないんだよねぇ。何だかそれが一番不思議。すっごい長かったなぁ。」
「・・・まぁな。ほんといい加減にしてほしーわ。二度とご免だ。」
「そんなこと言ってそのうちフラッと呼ばれちゃったりして?」
「勘弁してくれ。」
あはは、心底嫌そうな顔。まぁ、そりゃそうだよね。だって要は・・・
「なんせ勇者様、だもんね?」
「だからやめろって・・・」
あっ、この不貞腐れた顔、あの時の顔だ。葉月さん達と会議してた時。顔を赤くしてこっちを気にしてたもんね。そうか、照れてたのか。
そりゃあ高校生にもなって自分が勇者だなんて呼び方されたら恥しいわな。要が勇者・・・うわきっつい・・ぶっ・ぶくっ・・・もうダメ!我慢できない!!ぷは!!
「ていうか、勇者だって!!要が!ゆ、勇者様!!!」
あははははははははははははっ!
「お前なぁ・・・!!」
やっば、笑いの欲求に任せて力いっぱい爆笑してしまった。さっきとは別の意味で涙が出ちゃったし。案の定、要は顔を真っ赤にして大激怒していた。だけどそんなの恐がっていられないくらい可笑しくてニヤニヤしてしまう。だって要をからかえる事なんて滅多にないから!
「ああいーよ、どうせ俺は勇者様!だよ!・・・もう勝手に笑ってろ。」
そのまま繋いでた手を振り払って顔を思いっきり背けられた。あらら、すねちゃった。やりすぎたか。
・・・ん?
「え・・・ちょっと待って?要が勇者ってことは・・・ええっ?もしかして要、1年もあそこにいたの!?
」
「・・・・・・遅っ」
再びこちらを向いた要は心底呆れたって顔で私を見た。
「ええっ?いや、だって・・・あんまり深く考えて無かったんだもん。待って昨日まで一緒にいてそんな時間・・・そうか、元の時間に帰ってきたのか。」
「そーだよ。一人訳分からんとこに放り込まれたけど、お前会いたさで必死になって勉強して自力で帰って来たの。おわかり?」
すねた口調のまま要が何か言ったけど全く耳に入ってこなかった。だって、だって!ていうことは!!
「ちょっと!あいつら人の幼馴染に何してくれてんのよ!要!今すぐあっちに連れてって!あいつら私がもう一回ボッコボコにしてやる!」
うがー!こんなん寝てられるか!!思わず体を起こし、苛立ち紛れに布団を思いっきり殴りつける。
「おいおい、落ち着けって。今更何言ってんだよ。」
そんな爽やかにはははって笑われても流されるもんか!!
「信じらんない!マジでぜぇっったい許せない!一年だよ!?そんな長い時間要を一人でいさせたの?マジあり得ない、ああ、何ですぐ気付かなかった私!そしたら何が何でも報復してやったのに!ほんとばかばかばかばかっ!」
「・・・・・・」
要が何か言いたげにこっちを見るがそんなのに構っていられない。
「ちょっと待ってよ、刑務所にまだあいつらがいるから・・・あっ、でももうシナリオ出来ちゃってるし罪状加算は無理なのかな・・・?いや待って・・・」
必死に考えるも、大した案も出てこない自分の頭が嫌になる。ああもう!こういうのを考えるのは要の専門なのにっ!
「・・・いや、そもそも俺を呼んだのあいつらじゃないし。」
そんな事はどうでもいいっ!
「要っ!」
「お、おおっ?」
私の据わった目にビビって後ずさる。失礼な。
「万が一、またあっちに呼ばれる様な事があったら絶対私も一緒に行くからねっ!?要一人で行かせるなんて絶対絶対ぜーーったい許さないんだから!分かった!?」
「・・・いや、もう行かね・・・」
「分かった!!?」
鼻息荒く詰め寄る私を無言で見つめ返す要。ハイというまで目を逸らして堪るか。私はやると言ったらやる。こんなに腹が立ったのは久しぶりだ。
暫く(一方的に)睨み合ったままでいたけど、ふいに要がふんわり笑った。それはもう嬉しそうな顔で。
「菜乃?」
「うん?」
「なーの。」
「な、何?」
やばい、壊れた。今度は私が後ずさる・・・なんとなく離れた方がいいような。だけど次に要の口から出てきた言葉はとても思いつめた口調で。私はすぐに態度を改めた。
「・・・・・俺な、ずっとこのままお前の隣にいるのが当たり前だと思ってたんだ。16年ずっと。」
「うん。」
「でもあの晩・・・、お前にとっては昨夜だけど・・・目が覚めたらお前が隣にいなくて、帰ろうにも帰れなくて・・・あんとき生まれて初めて死ぬほど後悔した。今までそれなりに馬鹿やって来たけど、あんなに辛くて苦しい状況に陥ることがあるなんて考えたことも無かったんだ。」
「うん。」
「とにかく帰ることに必死で、不安で、かっこわりぃけど、正直泣いちまいそうだった。」
「・・・・・うん。」
「見ろ。」
「?」
「・・・思い出しただけで手が震えてる。未だに恐いんだ。この手を離したらまた、お前が目の前から消えてしまいそうで・・・また一人になりそうで。あっちでいろんな奴に出会って、面白いやつも、尊敬出来る奴もいた。目新しい事もあって結構刺激的だったよ。魔法が使えるなんて状況、普通有り得ないだろ?でも、ずっと苦しかった。何してても、誰と居ても・・・どうしても駄目だった。その考えが頭にこびりついててどうしても離れない。」
「・・・・・」
「今、こっちではどうなっているんだろう。皆心配しているだろうか。ちゃんと帰れるのか、帰れても時間がずれてて誰もいなかったらどうしよう・・・菜乃はどうしてるだろう。泣いてるかもしれない。探して危険な目に合ってるかもって・・・堪らなかった。」
苦しげな表情が酷く胸を打つ。その痛みを何とかしたくて要の手をきつく握りしめた。
「・・・ずっと、お前に会いたかったんだ。」
「うん・・・うん!」
その言葉が単純に嬉しくて、目の前の要がただ愛しくて。自分も同じ思いでいることを伝えたくて一生懸命頷いた。何度も何度も・・繰り返す間もなく気付けば握っていた筈の手を引っ張られて思い切り抱き締められていた。
「菜乃、好きだ。」
・・・ドクンッ
「ずっと・・・、ガキの頃からずっと好きだった。お前の隣にいるのが俺じゃなきゃ嫌で、これからも当たり前にそうするつもりだった。・・・でも今の関係を壊すのは何か恐くて・・・ビビっていつでも言えるって言い訳して先延ばしにしてたんだ。ほんと、馬鹿だよな。ずっとそのままでいられるはずなんかないのに。」
「要・・・。」
「菜乃、好きだ。もう恐くてもいい。何でもいいから・・・お願いだから・・・傍にいてくれ・・・」
要の腕が苦しいくらい私の体を締め付ける。
・・・要、震えてる・・・。
「要、私も!私も同じだよ。要とずっと一緒にいれるって勝手に思ってた。ごめんね、心配かけてごめんなさい。私も要じゃないと嫌だよ。だから泣かないで。」
「・・・誰が泣くか・・・馬鹿。」
腕の力が緩んで要がフッて小さく笑ったのが分かった。可笑しくて顔を上げたら頬っぺたを抓られた。それも思いっきり。はぁ!?
「痛ったぁ!何よ、泣き虫要ー!」
「俺が泣き虫ならお前のその垂れ流してる物はなんだ。」
「ふふふ・・・だって、だってーー・・・要が、ここに、いてくれるから・・・嬉しくて。要、大好きっ!」
ああ、すんごく嬉しいけど・・・ティッシュが欲しい。涙拭きたい。けど言える雰囲気じゃない。・・・もういい、この際要のシャツで拭いてやる。喰らえとばかりに抱きついたままその胸に顔を擦りつけてやった。
「っ・・・・・、もう、無理。」
え?何?
「んんっ?・・・・んーっ!んーーっ!!!」
瞬き一つの間に感じたのはぶつかるように重ねられた唇の感触、びっくりして固まってる間に角度を変えて何度も何度も噛みつかれた。
「・・・目ぇつぶって・・・」
いったん離れた唇は、大きな掌で瞼を強制的に閉じられた瞬間また戻って来た。次第に勢いは緩くなっていったけど終わる気配は全くない。背中を大きな掌でゆっくりと撫でられる。心臓の音が激しく打ちすぎて胸が痛い。硬直した体が熱を持ったように暑い。
く、苦し・・・。唇を何度も甘噛みされてどうすればいいか分からない。ドキドキが強すぎて頭がぼうっとしてきた。もういっぱいいっぱいで閉じた瞼から涙が零れ落ちた。
「嫌か?」
それに気付いたからか、要が私の頬を両手で包みながら、止まらない涙を親指で拭っていく。その感触に励まされてもう一度目を開いた。
鼻がくっつきそうなくらい近い距離で要が真っ直ぐに私を見ていた。涙で濡れた親指でそのまま私の下唇を擦りつけるように撫でる。要の目線が・・・また私の唇に落とされた。
「嫌じゃない・・・けど、ドキドキして死にそう・・・」
「ん」
返事も無いまままた甘噛みが再開される。その合間に掠れた声で乞われるまま開いた隙間から、温かく湿った舌が入り込んできた。こちらを窺うように優しく口内を動き回る。
「んっ」
やっ、変な声・・・出た。どうしよう、頭おかしくなりそう・・・。
「菜乃・・・すげぇかわいい。もう一回・・・」
今度は躊躇い無く入り込んで来た舌にただただ翻弄されっぱなしになった。
「・・・菜乃、まだ・・・死にそうか?」
もうどれくらいキスしてるかも分からない。要がまた変な事を聞いてくる。
「な、何でっ?」
応える声が上擦る。
ぼうっとする焦点を辛うじて合わせると壮絶な色気を放つ幼馴染が物凄くいい顔で・・・笑った。
「確かめてやるよ。」
「ひゃぁ・・・っ!」
服の上からでも分かる。熱い掌が私の片方の胸を覆った。そのまま掌で撫でられ、直にその動きは大胆になっていった。
「うん、すげードキドキしてるな。」
凄く嬉しそうな声が聞こえるけど恥しくて顔を上げられない。でもそうすると自然に目線は胸元に行ってしまう。大きな掌の中でどんどん形を変えられてしまう胸。ゾクゾクと何かが背筋をかけ上がった。もう無理だと目をぎゅっと瞑った時に、服の下で下着がずれた。
「あっ!」
要の親指が・・・胸の中心を掠めた。
「あっ!あっ!あっ!」
見つけたと囁かれ同じ所を執拗に弄られる。もう片方もあっという間に同じようにされてしまい、あまりの感覚に羞恥が一瞬で何処かに行ってしまった。
「やっ!私へんっ・・・!」
「変じゃない。」
すっげーかわいい
悪戯な両手はそのままで、唇を私の耳に掠めながら囁く。その上のペロッって舐められた。
ビクッ
・・・くそう、人の反応見て絶対楽しんでる!悔しい!
羞恥の涙で溢れた目を見開いて要の顔をギッと睨み付ける。
「意地悪っ」
「・・・何で?」
なんでってなんでって、理由なんか言えるかバカァ!
「大丈夫だって」
「ふっ!んっ、ん・・・んぁあ!」
また唇を塞がれ両胸への悪戯が開始される。これの何処が・・・!大丈夫なんだ!
それでも唇を食まれ舌を差し入れられるともう駄目で。慣れない感覚に頭が回らない。
「ふぅ・・、ん、んんっ・・・」
「俺も」
我慢してる。死にそーなくらい
ほとんど唇を離さないまままた訳の分からない言い訳をされた。
「んんー・・・!」
延々と施された甘い感覚のせいで私の理性は全く働いてなかったようで。いつベッドに押し倒されたのかもあやふやだ。
チュッ、っとやらしい音をたてたキスを最後に、要の体は私の上から離れて行った。
「・・・かなめ・・?」
「・・・どうだ、寝れそうか?」
私にお布団を掛けながらも、艶を全身に纏ったままニヤリと意地悪く笑うもんだから、呆けた頭に一気に血が上る。
「眠れるわけっ・・・ないじゃない」
自分の発言に恥ずかしくなって最後は消え入りそうなほど。だけどそんな私を更に嘲笑うかのように余計な言葉を告げられる。
「じゃあもう一回してやろうか?」
ブンブンブンブン!
首をマッハで横に振った。目が本気だ!
「ブッ!」
くっくっくっ
顔真っ赤、と笑われれば余計に羞恥が沸く。もうこいついやだっ!頭から布団を被って視線から逃れた。
「ほら、もう寝ろ。」
布団の上からポンポンと宥めるように優しく叩かれる。子供か。
「・・・要」
腕だけ外に出して手をヒラヒラさせる。
「ん。」
ポンポンという音はそのままに、片手にはいつもの温もりを。ひねた事を言ってもこの上なく安心する。悔しいから絶対顔は出してやらない・・・暑いけど。
やがて眠りの欠片が訪れて意識がうっすらと掠れてきた。
ポンポンポンポンポンポンポンポン
「菜乃、また明日、な。」
うん、また明日。これからも・・・毎日・・・いっ・・しょに・・・・いよう、ね。
ずっと、ず・・・っと---。
オヤスミ
額に落とされた柔らかい温もりを最後に、私は眠りの中に落ちていった---。
END.
ここで一旦の完結とさせて頂きます。
次回からは活動報告に載せていた馬鹿話等を修正して順次投稿していくつもりです。
このお話は、作者にとって初めて書いて初めて完結させたという、かなり拙いながらも思い入れのあるものですので、今後も思い付くままに更新して行けたらと考えております。
宜しければこれからもお付き合い頂ければ幸いです。
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また感想など頂けたら凄く嬉しいです!
それでは一先ず。ありがとうございました!




