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主人公、恋を知る。

1 ヶ 月 !?

あわわ、すいません遅くなりました!!






 

 晴れやかな休日を満喫していた幸せな日常から一転、いきなりの拉致監禁。理不尽な目に会い訳が分からないまま、女性としての尊厳を最悪な形で踏みにじられそうになっていた。


 正直、頭の中がぐちゃぐちゃで。この感情が何なのか、自分でもはっきりしない。



 ただ、今自分の上に覆い被さっている人は間違いなく、ずっと会いたくて焦がれた大事な幼馴染で。

 焼け焦がれそうな程自分を見つめる視線も、噛み着くように口づけられた唇も、痛いぐらいに全身を弄る大きな掌も。全て、初めて知る行為ばかりなのに、相手が要だと思うだけで全く恐怖は湧いてこない。


 むしろこれは、絶望のあまりに気が狂った自分が勝手に見ている幸せな夢なんじゃないかという考えばかりが頭を過って。耳に馴染んだ声がかつてないほど熱を含み、何度も何度も繰り返し紡がれる自分の名前だけを頼りに、必死でその体に縋った。

 恐かった、嫌だった、いっそ死んでしまいたかった・・・覚えのあるぬくもりに包まれながら、要と共に在れる今の自分を必死で確かめていた。




 それでも。心が落ち着いて来たのか、次第にその手が自分の下肢に掛りかけたのに気付いてしまって、一気に羞恥心が襲って来た。必死で要に制止を掛ける・・・流石にそれはちょっと無理だ。要ってば・・・。


 我に返ると、気が高ぶっていただけに恥しさは半端ない。だって、だって!自分が男の人と触れ合っているだなんて!しかも相手は、ずっと一緒に居た幼馴染で。だけどその幸せを知ってしまった今、他に相手など考えられない。恋が、愛が、どんなものか何て今まで理解しようとも思わなかったけど、今なら分かる。

 私の世界は、昔から要でいっぱいで。要だけを、ずっと、ずーっと求めていたんだって。



 理解した瞬間、全身が心臓になってしまったかと思うくらい鼓動が騒ぎ立てる。お互い気まずい空気が流れていたけれど、少し照れたような顔した要は、それでもきちんとした言葉を私にくれた。


 菜乃がずっと好きだった、ってーーー。




    ***********






 「それで。じゃあ、まずあんたら全員腹掻っ捌いて詫びてもらおうか。」


 嫌がる私を無理矢理横抱きにしたまま、にこやかにそう言い放つ人の発言の黒さにびっくりして、一瞬誰の声か分からなかった。


 「・・・ぇ!?要っ!?」


 何の冗談だと半笑いで幼馴染の顔を見上げるも、その目は欠片も笑っていなくて。目の前の人達を見下すかのような視線は、暗く冷たく、何処までも容赦なく冷え切っていた。


 ・・・ゾクッ。



 「俺は、徹底して、世界中に周知しろって言った筈だよなぁ?今後どんな理由があろうとも『異世界召喚』なんて馬鹿げたことはするなって。二度目は無いぞって。それを条件に、この世界の終わりの先まで持つくらいの魔力を双月にチャージしてやったんだ。俺としてはその分使って世界中ぶっ壊して回ってもよかったんだぞ。それをお前ら全員で泣いて頼むから仕方なく譲歩してやったんだ。・・・それを、寄りによって菜乃を、だと?しかも五柱に連なる王族が主犯?・・・それが導く先はここにいる者なら誰でも想像出来るはずだよなぁ?」


 「「「「・・・はっ。」」」」



 「世界も自分達で守れないような王族なんて、全員まとめて死んだ方がましだと思わないか?えぇ?」




 ・・・誰この魔王・・・。






     ***




 身支度を整えた後、恥しくてベットから出ようとしない私に今の状況を思い出させたのは、要の「一緒に女性二人が攫われていなかったか?」という言葉だった。

 一気に血の気が引く。もしかして、二人も私と同じ目に遭っているかも知れない。慌てて二人の安否を確認しようとドアを開けた私達を待っていたのは、片膝をつき頭を下げた状態の、廊下一杯にずらっと並ぶおじさま達御一行だった。


 え・・・。何?何事?

 

 驚いたのも一瞬、人間は見たくないもの程注意を向けてしまうのか、ボロボロになりながらもかろうじて痛男と分かる物体を視界の端に捉えてしまった。先程の恐怖が僅かに這い上がり思わず声を挙げた私を、要は問答無用で抱き上げ耳を胸に押しつけ塞ぎ外界から遮断してくれた。

 よくわからないけれど、要は一言二言おじさま達と会話をし、そのまま何処かへ案内されているようだ。

 因みにそれ以降ずっと、どれだけもう大丈夫だと言っても全く聞き入れて貰えなかった私は、要の腕の中に収まったままだった・・・こんなことならベッドから出るんじゃなかった。


 そうしてあれよあれよとこの部屋まで連れて来られて。

 部屋に入った時、真美子さんと葉月さんに再会してやっと落ち着くことが出来た。二人も、いつの間にか連れ去られた私を酷く心配してくれたようで、ずっと涙目で謝ってくれていた。



 それにしても、だ。


 何なんだ、この状況・・・。なんだか立派なイスにふんぞり返って座る幼馴染に、その膝の上で横抱きにされている虚ろな目をした自分、被害者な筈なのに置いてけぼりの真美子さんに葉月さん、そして折角場所を変えたばかりだと言うのに変わらず深々と頭を下げているおじさま達・・・。カオスだ。


 

 「ええ?聞いてんのか?国王さん。」


 「・・・勇者殿!此度の件は我が国の意向ではけして無い!我々としては、帰国後、すぐさま会議での内容を法律化し、広く周知する所存であった。まさか第二王子がこのような大それた野心を抱いていようなどとは・・・。」



 ・・・ゆうしゃ。



 「ほお、知らなかった、と?自分の息子の事をねぇ。何か、あんたは国のトップのくせに反乱分子の把握もしてなかったって事でいいんだな?」


 じゃあやっぱりあんたはいらないなぁ?




 黒い。黒すぎる。お前はどこのヤクザだ。そしておじさま達全員、既にボロボロなのは何故だ。



 「この陣を使うのに、一朝一夕では足りない。かなりの時間をかけてエルザから情報を入手していたはずだ。俺は言ったよなぁ?わざわざ国際会議とかめんどくさいもんまで開いて。召喚陣ってのは普通の魔法と違ってそれ自体がめちゃくちゃ危険なもので、かつ成功したとしても自ら世界を滅ぼすような物を無理矢理呼びつけるような物だって。今は大人しくしてるけど、俺だってやろうと思ったら一瞬で世界滅ぼしますよ、って。

 なのに各国から陣を探りにひっきりなしに密偵が送り込まれて来てた。勿論見つけるたびに処分はしているが、必ずもの分かりの悪い考えなしの馬鹿が出てくる、って。だから自分の国の馬鹿は自分らで全て処分しておかないと、何かやらかしてたら見せしめにその国ごと潰すって。・・・これが、世界の末端での出来事ならまだ分かる。しかしあんたらは、寄りにも寄って一番分かりやすい所を見逃したんだ。ただ肉親だからってだけでな。」


 「そ、それは・・・。」


 「つまり、国ごと纏めて潰してくれってこと、だよな?」



 瞬間、要の体からもの凄い熱気が放たれた・・・ような気がした。まるで一瞬だけ通りすぎたような熱さ。気のせいかと思った瞬間、周りのおじさま達が全員バタバタと吹き飛んでいった。


 「・・・かっ?要?」


 見上げるとそこには見たことも無いような酷く冷たい目をした男。


 「もういい、時間の無駄だ。あんたらはさっさと消えろ。」

 

 要が言い終わるが先か、その人達の周りを囲むようにいきなり火柱が上がった。



 「うわぁ・・・あぁっ!!」



 何これ・・・。確かに中の人達は暑さで悶え苦しんでいるのに、同じ室内にいる私は全然熱くない。かすかに熱気を感じるくらい。暫く呆然と見守るだけだったが、このままではまずい。


 「要!これ要がやっってるの?やめて!今すぐ消して!!」


 「・・・駄目だ。」


 さっきまであんなに冷たい目をしていたのに、こっちを向いた途端切なそうに顔を歪めた。


 「こいつらを放っておいたら、また同じことになる。もしかしたらまた菜乃が無理矢理召喚されるかも知れないんだ。・・・そんなのは放っておけない。」


 「要・・・。」


 「今回はギリギリ間に合ったが、次は分からない。俺は自分の大事なものを奪い取るやつに容赦はしない。」


 要の目が狂気の色に染まってる。駄目だ、完全にイッてる。・・・仕方ない。覚悟を決めた私は、要が目を離した隙に一気に行動を起こすことにした。



 まずは肘鉄で鳩尾を確実に。



 「っぅぐっ!?」



 手が緩んだ隙に要の腕を抜けだし体を回転させ床にしゃがみ込み。



 「なっ、菜乃?おぃ、ちょ・・・っ!」



 そのまま屈伸の要領でーー顔面目掛けてーー上段回し蹴り。


 ドゴッ


 「っっごほっっ・・!!・ぅっ・・・。」


 私の蹴りをまともに食らい、椅子ごと吹っ飛び後ろの壁に激突する要。



 「ええええーーーー!?」


 自分でやっておきながら、その姿に一番驚いたのは私だ。


 ちょっとちょっとちょっと!要ったら何まともに受けてんの?いつもだったらどんなに奇麗に決めても片手で受け流される技。それでも要の目を覚ます役ぐらいには立つだろうと思いっきりやったのに・・・!


 「・・・た・・・橘さん?彼・・・大丈夫・・・か?」

 

 呆然と立ちすくむ私に葉月さんが声を掛ける。気付けば先程の渦巻く熱気は何処へやら、床に転がったままのおじさん達が皆、これ以上ないってくらい蒼褪めた顔で私を凝視していた。いや、今はそれどころじゃない。



 「・・・ぎゃーーー!!要ごめーーーん!死なないでーーー!!」


 「・・・勝手に殺すな・・・。」


 ダッシュで駆け寄る私を床に座り込んだまま睨みつけてくる。でもその焦点はいまいち定まっていなくて相当なダメージを負ったのが見て取れた。


 「っごめん!ほんっとにごめんっ!大丈夫?首いっちゃってない?まさかまともに当たるなんて思っても見なくて!」


 言うが早いか、要の体をあちこち触って確かめる。・・・良かった、一応血は出てないみたい。しかしあの状況でちゃんと受け身は取れたんだろうか?下手したら後頭部強打で後遺症っ・・・!!


 「・・・い、医者!!この中にお医者様はっ・・・!」


 「・・・いやいや待て待て待て。・・・腕で受けたから首はイッてない。それよりも・・・お前、この力・・・。」


 要の視線がはっきりと私を捉えた。それに安堵した途端涙が溢れてきた。ほんとによかった!もし要に何かあったらと思うとぞっとする。私は要の言葉を遮りその胸に抱きついた。


 「ふぇ~ん!良かったぁ、かなめぇ・・・ごめーーーん!!」


 「・・・っ!!!・・・嫌、うんまぁ、別に。これくらい大したことねぇよ。・・・だから泣くな。」



 要の腕が私の背中に回る。そのままギュッと・・・ギュッと?


 ん?と違和感を感じながら顔を上げると、横から要の顔が近づいてきて、少し開かれた唇が・・・。

 あまりのことに固まったその時、知らない男性の声と・・・聞き覚えのあるような女性の声が静まり返った広間に響き渡った。




 「・・・ぷっ!!あは、あはははははははっ!!!か、カナメの、あの顔っ!!」


 「しー、静かにぃ!リクったらぁ、騒いだらカナメにばれちゃうじゃなぁい!折角イイところなのよぉ。」



 へ?いいところ?


 振り返れば私達をじっと見守る大勢の目線。


 今私達ここで何を・・・?もしかして全部見られて・・・!?・・・ぎゃーーーっ!!!!


 先程までの膝上抱っこに匹敵する羞恥が襲ってきて、急いで要から離れる。今度は抵抗なくすんなり逃げられた。・・・恥!人前!いやぁ!!




 「・・・お前ら・・・。」


 「「はぁーい!カナメ!こないだぶりー!!」」



 混乱する人々のど真ん中、声だけはするも確かに誰もいないはずの場所に、まるで精巧なホログラムのように徐々に姿を現したのは・・・、見知らぬ男の人と、その腕を組んで妖艶に微笑むリアルメイドの・・・リラさん、だった。



 




 





 




 

 






普通に考えて膝上抱っこで人前ってないな。菜乃ごめんよー。




以前活動報告に載せていた、菜乃&要の友人視点の小話を「こんな恋の話はいかがでしょう」というタイトルで投稿しております。

もし興味がありましたら作品リストからどうぞ。

どこかで告知はしたと思うのですが念のため。しつこく感じられたらごめんなさい!




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