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主人公、読み間違える。

  おおー。すっごいいい天気。今日はいいことがありそうだな。



 ・・・そう、今朝一番に思ったのはたしかそんなことだった。私は、いつも鈍いと馬鹿にしてくる要の発言を、自分の勘の悪さを、改めて実感していた。




   *********************




 丸一週間続いた期末テストも、昨日やっと終わりを迎えた。成績は、張り合う相手がいるからか、そこそこいいほうだ。まぁ結果的にはいつも惨敗なのだが。張り合う相手・・・産まれる前からお隣さんで、幼稚園から小・中・高とずっと一緒に通っているというスーパー腐れ縁の、いわゆる幼馴染、西織にしおり かなめ

 何故かあいつはテスト前になるとやったら絡んでくるので、気付いたらそれにのせられて、結構根をつめて勉強してしまってる。・・・上手いこと掌で転がされてるのは・・・潔く認めよう。


 そんな習慣を昔から続けていたせいか、脳みそいったい何で出来てんだほんとに同い年かよふざけんなっ!と何度つっこんだかわからないくらい頭の良い幼馴染と一緒に、県下一の進学校に無事入学することが出来たんだから、感謝するべきなんだろう。・・・だけどあの絡んできたときのムカつきっぷりったら、思い出すだけで・・・! んん、イライラはお肌の大敵!この若さで眉間にシワなんていりません!考えるな、私!


 今回もまあ何とかいけたでしょうっと、そこそこの手ごたえを感じたことに安心しつつ、いつものように、要とやいのやいのとバカ話をしながら帰宅した。

 二人とも寄り道も思いつかないくらい疲れていたので、家の前で別れて、晩ご飯を食べてお風呂に入りそのまま灯りも消さずにベットに倒れこんだところまでは覚えていた。



   *********************




 ・・・12時間爆睡って。いくらなんでも寝すぎだろ自分。


 

 でもまぁ、おかげで体調はばっちり。それに、今日は部活も休みで予定もない。

 いつもだったら休日は部活で剣道に明け暮れているため、たまーに訪れる完全休暇のこんな日は昼過ぎまで寝てるからか、すごく外に出たい気分になった。何かうずうずするというか・・・凄く素敵なことがありそうなそんな予感がする。


 雲ひとつ無い青空を見つめ爽やかな朝を感じながら、私は今日一日を満喫するべく行動することにした。もちろんその(凄く素敵なこと)を体験するのに必要不可欠な人物を巻き込むことも忘れない。



 よし。とりあえず要を誘って久々に買い物にでも行こうかな。 








 「えっ、要まだ寝てるの?」


 「そうなのよー。ご飯食べてすぐ寝たはずなんだけど。夜中に何か騒いでたから、結局夜更かししたのかもね。」


 「そっかぁ。」


 「菜乃ちゃん、よかったら上がって起こしてあげて?一緒に朝ごはん食べて行きなさいな。」



 勝手知ったるお隣さん。親同士も昔からの友人同士で、昔から両家の中では子供たちは一緒くたにされてて、おばさんにもいつも可愛いがってもらってる。



 「んー。じゃあいいや!すっごいいい天気だし、ちょっと買い物に行こうかなって思っただけなの。別に約束してた訳じゃないから起こさなくても大丈夫だよ。朝ご飯もちゃんと食べてきたし、ちょっとぷらぷらしてくるね!」


  「そうなの?あんまり遅くならないようにねぇ。じゃないとすっごくこっわーい顔になった誰かさんのお説教が始まっちゃう。」


  「・・・肝に銘じます。」



 「あれ始まるとちょっと長いのよねぇ」というおばさんののほほんとした声を背中に聞きながら、ちょっとじゃねえよ!と心の中だけで突っ込んでおく。

 ・・・おばさんに汚い言葉使いは厳禁だ。うっかり口を滑らせようものなら、こっわーい誰かさんよりもさらに恐ろしいお仕置きが待っている。菜乃は、他の誰よりもおばさん相手の方が自分が女の子らしくあることを少し悲しく思う。

 笑顔が誰よりも怖いって・・・。さすが親子ですよね。





 そんないつものやり取りをして。電車で20分程の場所にある若者に人気のショッピングモールを一人でうろちょろして。


 朝感じたようなことなんかすっかり忘れて、私はいつものように、キラキラと美しくディスプレイされた夏の新作達を目に映してはその可愛さに身悶え、家族連れやカップル達のあいだをすり抜け、一人ウィンドウショッピングを楽しんでいた。

 

 そこにはなんの変哲もないただの日常が広がっているだけ-----。





 しかし、その日常の空間を切り裂くように。いきなり目に焼きつく程の強烈な光があたりを包み-----。


 買い物に来ていた客達のざわめきが落ち着く頃には時すでに遅く。その空間は非日常の残滓を色濃く滲ませているだけだった。





 












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