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幼馴染、悪夢再び。

時間が開いてしまい申し訳ありませんでした。


これ以前の全話を、若干修正させて頂きました。話の筋に変更はありません。




   

 「どういうことですか?」


 こんなに部屋一杯に人がひしめき合っているのに、何の音も聞こえない。ドクドクと、自分の心臓の音だけがやけに大きく耳に響く。


 震える指先を力を込めて握りしめ、情報を一つも漏らさないよう、ただただ目の前の男だけを睨みつけた。


 30前後のその男は、柾木輝大まさきあきひろと名乗った。どうぞ、と、その場に突っ立ったままの自分をソファに座らせ、そして。

 

 今すぐにも噛み付きそうな自分を前に、いきなり頭を下げた。



 「すまない。君が『なの』さんを心配している気持ちは痛いほど分かる。しかし、現状全く手掛かりが見つからないんだ。ちょっとでも時間が惜しい。先に君の、『なの』さんの話を聞かせてくれないか?」


 大の男の、形振り構わない懇願に、自分の苛立ちをぐっと抑える。この人は自分と一緒だ。冷静になれ。



 「・・・分かりました。ただこれだけ聞かせて下さい。菜乃はまだ?」


 「見つかっていない。今必死で探している。ここは今、警察の仮の捜査本部として動いている。」


 あまりの緊迫した状況に、思わず唾を呑みこむ。今気付いたが、隣のソファの中年の男が二人、名乗りながらこちらに会釈していた。刑事だろうか。


 「・・・そんな大したことはありません。菜乃・・・橘菜乃、16歳、藤沢高校一年です。俺は隣家のもので、同じく藤高一年の西織要と言います。今日はたまたまモールに買い物に出かけただけで、そんな、菜乃に誘拐されるような原因なんか・・・。」


 「君は一緒じゃ無かったのかい?」


 そう刑事が尋ねる。


 「出かけるのを急に思い立ったみたいで、朝家を出る前に誘いに来てくれたんですけど、俺はまだ寝ていて・・・。母親に起こされて後からその話を聞いたんで、遅れてやってきたんです。メール、何回も送ったんですけど、返事が無くて。場所を聞こうと電話したらここに繋がって・・・。あいつの家はごく普通の一般家庭で、毎日一緒にいますけど、特に変な揉め事も何も無かったと思います。」


 菜乃が誘拐・・・?この期に及んでまだ信じられない自分がいる。菜乃の周りには、特に何もおかしなことなんか無かったはずだ。それは誰よりも自分が知っている。


 毎日、一緒にいたのだ。同じ学校、同じクラス、部活も、登下校も、おまけに家まで隣同士だ。一体誰が入り込めるというのだ。

 確かに高校に入ってから菜乃の存在を知った男どもが多々ちょっかいをかけては来たが、一つ一つ丁寧に畳んでおいた。今更二人の間に立ちはだかろうだなんて、たとえジャニーだろうとも容赦しない。


 その忌々しい顔ぶれを思い出すも、犯罪に走るような粘着質の者はいなかったし、第一、もし狙われていたなら、相手がよほどの達人で無い限り視線で分かる。そうやって恋敵を見つけて来たのだから。



 そういったことを、余計な事を省いて目の前の男達に説明する。

 空調が効いている筈なのに嫌な汗が止まらない。心臓が鷲掴みにされてしまったみたいだ。こうしている間にも菜乃は・・・!



 「そうか・・・、ありがとう。やはり原因は見つからないのか・・・。」


 「彼らは巻き込まれただけの一般人のようですな。」


 「僕と菜乃は家族のようなものです。必要なら何でも話しますから!とにかく状況を教えて貰えませんか?」


 言葉にするとより心臓が軋んだ。菜乃がいないなんて、これ以上耐えられない。

 マジで勘弁してくれよ・・・!



 刑事達が顔を見合わせ頷いた。簡単に事件の概要を話し出す。


 二時間ほど前、隣のモールで急激な光が一帯を照らしたこと、一瞬だった為それほどのパニックにはならなかったこと、しかしその場に一人、泣いている赤ん坊が発見されたこと、買い物客の証言によれば、間違いなく傍のベンチには母親らしき若い女性の姿があったとのこと、そしてその後の捜索で、付近で持ち主のいない携帯電話と、すぐ近所の大学病院のインターン用のネームプレートが見つかったこと・・・。



  

 「実は私はそこそこの資産家でね。妻と娘には常時ボディーガードを付けている。彼らにも勿論現場にいて、それを見ていた。あまりに一瞬の出来事で、何が何だかさっぱり分からなかったんだそうだ。・・・彼らの報告で事件が発覚。人の証言や防犯ビデオを元に確認したところ、妻も含めて三人の女性がいなくなっている。報告では、光は一瞬で消え、人を誘拐するような時間は全く無かったと言う。しかし、現に人が三人も消えているんだっ!」


 「つまりなんだ・・・、菜乃はあんたの嫁さんの巻き添え食らった可能性が高いってことかっ!?」


 「・・・分からないがその可能性は高い。単純に消えた三人のうちで一番金を持っているからな。」


 「っ金持ちのいざこざに無関係の菜乃を巻き込んだのかっ!あいつはまだ16だぞ!!」


 「それがまだ分からないと言っている!金が目的ならいくらでも払うさっ!しかしっ!その要求がどこからも来ないんだっ!!」



 柾木は憤りを隠せないのか、目の前のテーブルに拳を強く叩きつけた。



 「待てど暮らせど誘拐犯からの連絡は来ない!現状、妻の身に何が起こっているのかさっぱりだ。正直、残りの二人が私の妻を攫ったのかとも考えた。実際その方面でも捜査を進めたが、無駄だった。

 一体どうやってあの大人数の人の目を掻い潜った?僕自身で先程防犯ビデオを確認したが、時間は僅かに二秒、光で映像が一瞬ブレたのみで、施設的にも抜け道なんて存在しない場所だった。こんなこと、警備のプロの目から見てもあり得ないんだ。


 ・・・では誘拐ではないのか?それこそ、ありえない。妻は何があろうと美羽を・・・子供をこんな所に置き去りにするような女じゃない。

 ありとあらゆる可能性の話だけが進んで、動きが全く起こらない。本当にお手上げ状態だ!県警にも連絡して極秘に規制線も張って捜索中だし、うちの警部会社のネットワークも全て使っている。しかしどこにも欠片も引っかからないんだ!


 ・・・ついさっき、妻以外の女性の身元がようやく判明して、確認の連絡をさせていた所だ。もし、犯人の狙いがどちらか二人なら、そちらに要求が行っている可能性があるからな。それぞれに人を向かわせている。その最中に君からの電話だ。」


 そこまで一気に言いきった柾木は、頭を抱えて顔を膝に埋めた。その憔悴しきった様子に自分の姿が重なる。



 「・・・真美子に何かあったら、僕はこれからどうやって生きていけばいいんだ・・・。」



 ・・・そんなの、こっちが言いてぇよ!!!



 話を聞いている間にも地道な捜査は続いているようで、馬鹿でかい部屋を大勢の大人達がせわしなく行きかう。


 こんな状況なのに!菜乃の為に何も出来ない自分の無力さに絶望を感じる。いっそ闇雲にでも探し回るか?そんな馬鹿な選択肢まで頭に浮かぶ。

 自分ひとりで一体何が出来る。今ここで、金と警察権力を持って最大限の捜査を行っている。これ以上の力なんて、所詮一高校生の自分には無い。少なくとも何らかの確実な情報を手に入れるまでは動く意味が無い・・・。


 だから柾木は例えささやかな情報であろうとも、藁にもすがる思いで自分をここに引きこんだのだろう。あの落胆も頷ける。


 「もう一人の女性の線は無いんですか?」


 「ああ、職場に確認を入れたんだが、確かに戻って来ていないそうだ。彼女は休憩時間に急に買うものが出来たと同僚に告げて出て行ったらしい。確実ではないが、見た所、特に変な様子も無かったらしい。」



 本当に手掛かり無しだな・・・くそっ!なんのためにGPS付けてると思ってんだ!



 「そうだGPS!奥さんにGPSとか付けて無いんですか?」


 「妻の手荷物は全て子供と一緒に現場に残っていた。」


 意味ねぇし!菜乃も何でよりによって携帯を落として行くかな、あの馬鹿!

 イライラが止まらない。本当に自分には何も出来ることは無いのか?



 「・・・その防犯ビデオって俺にも見せて貰えないですか?」



 駄目元で柾木に頼んでみる。刑事達に怒られるかと思ったが、あっさりと許可された。柾木がいるからだろうか。ついでに押収物としてビニール袋に入れられていた菜乃の携帯も、データを絶対消さないという約束で見せて貰った。




 「なんだ・・・?」


 携帯を手にした瞬間、覚えのある妙な感覚に思わず全身に鳥肌が立った。


 ・・・おいおいおいおい。これって、もしかして・・・




 「ビデオ、用意出来ました。」


 若い刑事っぽい男がモニターをこちらに差し出す。


 映像がスタートする。店舗に沿った廊下を上からのアングルで撮った映像なのだろう。人々がおもむろに通り過ぎていく様子が無音で流れる。画面の中央にはベンチに座りベビーカーを揺らしている若い女性が映っていた。あれが柾木の妻だろうか。

 

 そして丁度人の流れが止まった時、左手後方からショートボブにスーツ姿の女性の後ろ姿が、右手前方から髪の長い細身の少女が・・・間違いない、菜乃だ!


 その三人が奇しくも同じ画面上ですれ違おうとしたその時、正面の菜乃がポケットから何かを取り出した。

 携帯だ!菜乃がそれを顔に近づけようとして・・・突如画面がホワイトアウト。


 それもつかの間、映像は本当に一瞬で復活した。


 だがしかし。画面上からは、ただ人々が混乱する様子が流れるのみで。そこに確かに映っていたはずの、三人の女性の姿だけが、まるで悪趣味な手品のように・・・、ぽっかりと消えていた。



 「これで全てだ。」


 柾木の声が悲痛に響く。


 「・・・まじでか・・・。」


 大人達が自分の返答を待っているのが分かったが、正直それどころではなかった。




 まさかそんな事が、この現代社会で起こる訳がない。

 

 なのに、なのに!昨日まで、自分はその起こり得ない《悪夢》にどっぷり浸かっていたではないか!





 ・・・原因、思いっきりあるじゃねぇかっ!!なんでよりによってこれを忘れるかな自分!!




 手にした携帯にも、今見た映像の光にも・・・まだ一日と立っていないはずなのに、そのあまりの忌々しさから記憶を完全に消去していたあの悪夢を否応にも思い出させる、紛うこと無き『陣』の気配が濃厚に漂っていた。



 ・・・っあ・い・つ・らっっっ!!俺が何のために強制招集掛けたと思ってやがる!

 舌の根も乾かんうちにこれだぁ?・・・つぶす!絶対つぶしてやる!!


 よりにもよって!菜乃を召喚するなんて!!そんなに俺に滅ぼして欲しいのか・・・!?

 そうかそうか。全部纏めてきっちり畳んで丸めてゴミ屑のように捨ててやるからなぁ!首洗って待ってろよ!!






 

 そして頭の冷静な部分では・・・・・


 ビデオを見終えたとたんに固まり、一気に殺気を膨らませ始めた自分を見て。

 何らかの情報を期待している人々になんと言い訳をしようかと・・・。必死で頭を働かせている自分がいたーーー。












いきなりの警察沙汰に内心動揺しまくりの要さん。


終わった筈の《悪夢》にやっと頭が辿り着きました。遅いよ!


追記:活動報告に今回の話に全く関係のない小話を乗せました。宜しければご覧ください。

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