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6話

早絵視点です。

直接描写はありませんが、一応R15です。



頭痛が痛い。

間違った、頭が痛い。


この独特の痛みと倦怠感には覚えがある。液きゃべが欲しい痛み。

有り体に申すと二日酔い。

あああ、昨日、浮かれて飲みすぎた・・・。

翌日にこんなに気分悪いのは、お酒の飲み方を知らなかった学生以来かもしんない。


取りあえず、シャワー浴びて洗濯機回して掃除して冷蔵庫が空っぽだから買い出しして。

久々のお休みだし、やることとやらなきゃいけないことは山ほどある。

ぬくぬくの布団の誘惑には抗いがたいけど、化粧も落とさずに寝たのは間違いないし、汗をかいたのか体がべとべとして気持ち悪い。


観念して目を開いた先に待っていたのは、慣れ親しんだアパートではなかった。



『へ』



眼鏡が無いからあんまりよくは見えないけど、ここ、確実に、あたしの部屋じゃない・・・。


体が沈みそうなほどふかふかのスプリングに、真っ白でな清潔なシーツ。

ぷらす大量のクッションと枕。

ていうか、広っ。足を伸ばしてみてもベッドの先にはたどり着かない。

こ、これは、憧れのキングサイズなのでは・・・!

あたしのベッドは日本から持参した敷布団を敷いてあるから、いささか硬い寝心地のシングル。

シーツはネットで一目惚れして購入した淡いオレンジのパイル生地。

ちょっとおっきかったのが誤算。

枕は、これまた実家から送られてきた昔懐かしのそばがら。



ここは、どこだ。

そして、最大の謎。何故だか素っ裸のあたし。

え、まさか、見知らぬ誰かとヤっちゃった・・・? 

この歳になって、そんな無軌道なことを・・・?


幸いというか何というか、眼鏡はベッド横のサイドボードの上にきちんと置かれていた。最早身体の一部となって久しいそれを掛けると、ぼやけていた視界が一気にクリアになる。

部屋を見渡すついでに、意識的に排除していた隣りを見た。

他人の気配は感じていたが、まさかそんな面白い事態にはなっていないだろうと高をくくっていたのだ。いや、お得意の現実逃避をしていたといった方が正しい。


だが、いつまでもそんなことを言ってもいられないだろう。覚悟を決めて、横で健やかな寝息をたてている人物を振り返る。



今年で二十八にもなるのだから、男性経験が無い訳ではない。

断じて。

だけど、経験豊富とは決して言えないことも、自分のことだから重々承知している。


だから、なんで。

我らが社長様であり、自分の直轄の上司であるダニエル・カーターがいるんだっ!?

当たり前だけど、熟睡してる時は三十路の男でも無防備なんだなあ。あ、ひげが生えてる。

なんて、言いたいわけではなくっ。



『いやいやいやいや』



数は少ないし、最後に致したのはかれこれ年単位で前のことだが、身に覚えのある事後特有の倦怠感に、いろんな液体でどろどろしてる身体。


ヤった。


これは、どっちが誘ったとか、そんな明確な記憶があるわけではないが、確実にヤっちまってる。



『あちゃー』



お互い、アルコールの勢いとか、今回のごたごたとかで、つい勢いだけで、そおいう行為になだれ込んでしまったのは容易に想像できる。

しかし、これはあたしの中では在ってはならないミスだ。

職場の、しかも毎日否が応でも顔を合わせる直属の上司と致してしまったなんて。

あたし、週明けからどんな顔して仕事したらいいんだ・・・。


ていうか、ここ、多分ボスの自宅だよね。女の子は自分のプライベートゾーンに入れるの嫌って言ってたのに。まさか、そんなに女あつかいされてない!?  

まさかの男友達ポジション!? 

てか、このマンション、あたしのアパートの千倍くらいのお家賃なんだろうなあ。


そんなとりとめのない、くだらないことをつらつら考えても、この愉快な状態は好転しない。


ならば。


しばらくの間、ベッドの上で素っ裸で熟考。

傍から見ると、すんごい間抜けな光景だろうなあ。あたしなら指さして笑う。



『よし、』



無かったことにしよう。

一度腹を括ってしまえば、そこからの行動は早い。


どうやら、寝室どころか玄関に入った辺りから散らばっている服や下着を拾い集め、素早く身につける。うああ、パンストが無残な姿に・・・。

これは諦めるしかないか。


起きないでくれよー、と祈りながら忍者もかくやと言わんばかりの忍び足で部屋を出る。

戸締りは気になったが、確認したらオートロックのカードキーだったから安心だ。

出てから気づいたが、このマンション、ワンフロアに一部屋しかない・・・! 

しかも、ガードマンとコンシェルジェが常駐だ・・・。


す、住む世界が違う。



逃げれるだけ逃げる気満々のヒロインです。

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