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山手線を周り俺は池袋に向かった。

この街はどこか好きになれない。何故かと問われれば上手くいえないが。

こんなにも発展している東京屈指の繁華街にも関わらず、どこか暗い。

影が多く見えるのだ。目に見えるものも、見えないものも。

それは実際には見てないが、昔話に聞く戦後の『闇市』に感じた。

この街はそんな影も引きずってきてしまったのかもしれない。


サンシャインがあり、買い物客などで賑わっている東口に比べ、西口はオフィス街だ。

さらに北口となると飲み屋やいかがわしい街になり、俺が感じる闇市の根源のようだ。

俺が待ち合わせに向かうのは、西口を出てマルイの方に進んだ先にある喫茶店。

ここはサラリーマンなどが多く入る場所だ。

俺もスーツを着用してきた。たいがい仕事の時はスーツだが。

なにげにこのスーツは上物だ。


中に入り窓際の席を探すと今日の依頼人がいた。

目印にテーブルの上にタバコとケータイを奇麗に並ばせるよう指示した。


「お待たせしました。木村さんですか?」

俺はその男性に声をかけた。

「え?あ!はい!そうです。木村です。本日はどうも」

依頼人は少し驚いた様子だった。いつものことだ。

俺は席についた。

店員が近づき俺はコーヒーを頼んだ。

木村さんもコーヒを飲んでいるようだった。

「お待たせしましたね。すいません」

「いえ、そんなことは・・・。いや、失礼、想像よりも幾分若かったので・・・・」

「お構いなく。はじめまして、ジャックです」

俺は気にせず名乗った。

いちいち気にしてられないし、早く終わらせて帰りたかった。

この木村さん、ある大手商事の重役だ。この仕事では割と多い仕事の一つだ。

つまりライバルの会社の機密が知りたいといったところだろう。

恐らくだが。

どこの奴もそうだが、相手のことを知っておかないと不安でしょうがない性質(たち)の者や、

自分の出世のために情報が欲しい者はたくさんいる。

もちろん、会社の為という者も。

さて、この木村さんはどんなタイプだろうか?


考えるのをやめ、仕事の方に戻った。

「さっそくですがこれが今回の資料です」

俺は封筒を差し出した。

この中に木村さんが欲しい情報の全てが入っているのだろう。

「ありがとうございます。ではこちらも」

木村さんも同じような封筒を渡した。

これの中身は資料なんかじゃない。

俺らは報酬の3分の1を直接受け取るようにしている。

残りは振込みという仕組みだ。

「ありがとうございます」

俺は封筒をバッグに入れた。

ふと見上げると木村さんが何か言いたげな顔で見ていた。

「何か?」

「いえ、あ、あの、一応確認とかはしないのですか?」

「確認はしません。これは信用です。それに万が一にでも

提示額と違うというようなことを私たちするような輩は少ないですからね。

最低限のルールを破ればそれなりの対処をさせてもらいますし」

俺はサラッと言った。


そう、これは信用なのだ。私たちの仕事は信用で成り立っている。

信頼できる情報を求めるのにはそれなりの労力が必要だし、

それに対する報酬も大きい。

この世では情報が何より重要なのだ。

中にはフェイクやダミーもある。

俺たちの情報はそういったものを排除し、より信頼性の高い情報に仕上げているのだ。

それを無下にするような奴にはそれなりの罰を与える。

つまりは、その情報をもって制裁を加えるというわけだ。

中を確認しないということは、相手に対する威嚇なのだ。

「では、残りの額はちゃんと振り込んでおいてください」

「わ、わかりました。それはもう・・・」

「ではこれで」

俺は立ち上がり店を後にした。


駅の方へ向かう途中にアキラへ電話をする。

仕事の終了報告だ。

「もしもし・・・」

「お!ジャック!終わった?」

「あぁ。無事に受け渡しは成功だ」

「オッケー♪さすが!それじゃあ気をつけて帰ってきてね」

「わかってる」

電話を切りながら、駅に向かった。


アキラのマンションには直接向かわない。少し遠回りをするのだ。

これは尾行を警戒するためだ。

この仕事では情報を終わった後に俺らを消そうとする奴がいるからだ。

周囲を警戒しながらある小道向かった。

小道といっても人通りは少なくなく、いたって普通の道だ。しかし

この道には監視カメラが設置してある。アキラが仕掛けたのだ。

この道を通ることによりアキラが尾行されてないか監視をするわけだ。

何も異常が無勝ったらマンションに戻れる仕組みだ。


今回は大丈夫のようだ。

木村さんはちゃんとわかっているユーザーのようだな。

俺はマンションに入りアキラのいる4階に向かった。

ブラックキャッツの扉を開けた。

「ただいま」

「おっかえりぃ~♪」

アキラがピョンと跳ねながら近づいてきた。

俺は溜息を漏らした。

「てめぇは普通に迎えられないのか?」

「いやいや~、無事に仕事を終えたキリトを心から迎えてるんじゃにゃいか!」

「毎回毎回鬱陶しいだよ」

「照れちゃってもぅ~」

完全にマイペースだ。

「相変わらず仕事が終わったら俺の名前で呼ぶんだな」

「あったりまえじゃーん!仕事は仕事なのですよ♪終わったら普段に戻りなさいな♪」

「はいはい・・・」

俺は諦めてソファに向かった。


ソファに座り、テーブルの上に封筒を放り投げた。

「ほら、今回の前報酬だ」

「ご苦労様。ちゃんとはいってるかな?」

「入ってるだろ。後で確認しとけ」

「わかった♪とりあえずご苦労様だね!なんか飲む?」

「悪いな。じゃあコーヒーくれるか?」

「おっけー♪」

アキラはキッチンに向かった。

その背中を目で追いながら懐に手を入れ、タバコを一本取って吸った。

深呼吸のように深く吸い込んでから、ゆっくり吐き出した。

楽な仕事といっても神経が疲れる。

仕事が一段落した後のケムリは強張った身体を解きほぐしてくれる。

それから3、4口ゆっくり吸っているとアキラが戻ってきた。

手にはマグカップを2つ持ちながら。


「お待たせー」

「悪いな、ありがとう」

カップを1つ受け取った。

一口啜ると、熱い液体がゆっくりと体の中に進入し、俺をようやくリラックスさせてくれる。

「はぁ・・・相変わらず上手いな。コーヒー淹れるの」

「えへへ、ありがとう」

アキラは照れたように頭をかいた。

「それにしても毎度不思議だ。情報なんてかなりハイテクに集めてるのに、

渡す時は手渡しだなんてアナログだよな」

「そだね、でもそうしないとダメなんだ。

いくらハイテクなことが進んでも、アナログなことを混ぜないと完璧じゃないんだ。

そもそもこの世に完璧なことなんてない。

コンピューターとかを過信しすぎちゃいけないだ。

それが分からない奴は二流、三流だね」

「そうだな・・・」

「だから僕1人じゃダメなんだ。俺は情報を集めるだけ。

それじゃ不完全。

キリトがいればより完璧になるんだよ!ありがとね♪」

アキラはにこやかに笑いながら頭を傾けた。

「どういたしまして」

俺はコーヒーを啜った。

コーヒーの苦さがどこか心地よかった。

そういえば喫茶店のコーヒー、一口も飲んでなかったな・・・・。


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