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アキラはいつものようにダルダルのロンTを着て俺らを出迎えてくれた。飄々と軽やかにキッチンに向かったかと思うと、両手にコーヒーカップを二つ持って戻って来た。
俺とサキはソファに座り、サキは横に先ほど買った服屋の紙袋を置いた。今日はこいつのせいで色々ひどい目にあった。そう思うとこの紙袋がいやに憎たらしく思えてくる。
「あー疲れたぁ!でも有意義な時間でしたよ!」
「あぁまったくだ。ここまで疲れるとは思わなかったわ」
「二人とも買い物してきたの?キリトにしちゃあ珍しいね」
「そうなの?確かにキリトって買い物してるイメージないわね」
「うっさい」
余計な御世話だ。
「へぇー。どんな服買ってきたのか見せてもらってもいい?」
「うん!ほらこれとかすっごい可愛くて・・・・」
二人が買い物袋の中をあさり始めたので、俺はゆっくりとタバコに火を付けてアキラのコーヒーを静かに楽しむとしよう。
「この服はなに?」
アキラが1着の服を手にする。
「あ、これってキリトが買った奴だ」
二人して俺の方を見た。
二人の視線に気付いたキリトはタバコを灰皿に押し付けてさもどうでもいいように答える。
「あぁ・・・・それはアキラの分だ。お土産だよ」
何でそんなことをしたのか、キリト自身も気まぐれだと思うがそんな気まぐれが起きること自体がきりとには不思議に思った。
まぁ・・・・気まぐれなんだろうけど。
その言葉を受けたアキラは一瞬表情がフリーズした。キリトの言った言葉の意味を頭の中で吟味しているのだろう。頭の回転が速いアキラにしては珍しい。やはり珍しいことをすると相手も困惑するのか。
そして破顔する。
「え!えぇ!?き、キリトが僕におおおお土産を!?」
「あれ?これってアキラ君のお土産だったんだ?」
二人して驚いたように喋り出す。
「うわぁ!キリトがこれを僕に!?嬉しいなぁ!今までこんなこと滅多にないよ!うわぁ!うわぁ!」
「へーキリト優しいじゃん♪アキラ君めっちゃ喜んでるよ!」
何となくこの場にいたくなくなるキリト。
「まぁ・・・たまにはな。服はネットでしか買ってないみたいだし。気まぐれだ」
それも同じロンTばかり。白の。
「うわぁ!見てよこれ!こんな素敵なデザインの服今まで着たことないよ!ありがとうキリト!」
こんなデザインって・・・・無地じゃん。
「いやーこれもきっとサキちゃんと買い物いったからだね!サキちゃんありがとう!」
「え?いやぁ私にお礼なんて言わないでよー。それに私もキリトに服買ってもらったしね!ありがとうキリト!」
「ありがとうキリト!」
二人の感謝が降り注ぐ。こういうことには慣れてない。どうしたらいいのか分からないぞ。
やっぱり慣れないことはするもんじゃないな・・・・。
二人の興奮が冷めるのには少しだけ時間を要した。その間のキリトは仏頂面でタバコを吹かしていた。
アキラがお代わりの飲み物を持ってきた辺りでサキが思い出したように口を開いた。
「そういえばアキラ君、何か用事があったんだっけ?」
そうだ!それが本来の目的だ!こんな茶番なんか本当はどうでもいい!俺は珍しく仕事に行きたくなった。仕事したい。
「ん。あぁそうそう、そういえばそうだったね。キリトのお土産ですっかり忘れてた」
おいおい頼むぜ。俺にとっちゃその仕事は何よりのプレゼントなんだ。ちょっとだけ仕事が好きになりそう。
キリトがアキラの方へ向いて話を聞く態勢を取る。あれ?でもサキもいるけど大丈夫なのかな?
そんな俺の視線に目敏く気付いたのか、一瞬アキラが思惑めいた顔をした。そしてその直後に笑顔でキリトとサキに口を開く。
「二人とも、パーティーは好き?」