死にかけているというのは本当か
「死にかけているというのは本当か」
ラピスは、部屋に入ってくるなりそう言った。
「いや、まったく」
浅緋は立ち上がりながら、苦笑して答える。人を呼んでくるとは言っていたが、まさか魔王本人が来るとは思わなかった。
「リル・リルハは、自分のせいで浅緋が死んでしまうと泣いていたらしいが」
ラピスは浅緋の目の前まで来て、首を傾げた。相変わらず顔にヴェールをかけているため、本気か冗談か、よく分からない。
「死にかけてないし、リルさんのせいでもないよ。ただの痣だから、ほら」
浅緋は服を捲って痣を見せた。
と、ラピスの動きがビタリと止まった。
「……死ぬのか?」
「は?」
ラピスの言葉の意味がわからず、思わず頓狂な声が出る。
「この程度の怪我、すぐ治るだろう。治せないほど容態が悪いのか?」
「んん?」
今、何かすごいことを言わなかったか。
「ちょっと待って、前提がおかしい気がする」
浅緋は慌ててストップをかけた。ラピスは大人しく浅緋を待っている。
「えーと……痣って、数日とか、数週間とかは残らない?」
浅緋の質問に、ラピスは「残らないな」と首を振った。
「じゃあ、よっぽどひどい怪我でなければ、すぐ治るってこと?」
「ああ、数分か、長くても数時間といったところか」
ラピスの返答に、浅緋は頭を抱えた。
ダメだ、オレの常識なんて通用しないんだ、マーシュ人は。
「ラピス、落ち着いて聞いてね。こっちの世界の人とか、マーシュ人の皆さんがどうかは分からないけど、オレがいた世界では傷が治るまで時間がかかるんだよ」
「なんと」
「痣でも切り傷でも、小さくても数日はかかるものなの」
「そう、なのか」
「そうなんです」
浅緋が神妙に頷くと、ラピスは顎に手を当てて何事か考え始めた。
「……そういえば、我々の中でも魔力量が多い者ほど治りがはやい。そうか、魔力の影響を受けない異世界人は、もっと時間がかかる、ということなのか」
何やら一人で納得すると、ラピスは浅緋に向き直った。
「やはり我々は、異世界人について何も知らない。だからこそ浅緋、お前の力が必要だ」
「オレの?」
「丁度良い機会だ。……魔王と勇者の話をしよう」




