EP5断ち切れぬ式︰〈焦げ札の夢〉
語札がわずかに震える。
文様が揺れ、光が濁る。
アカネは札を見下ろす。
指先が冷え、式脈の流れが乱れていた。
床に札を滑らせる。
文様が広がり、結界が立ち上がる。
ミリが短剣を拭きながら、ちらりと視線を向ける。
「式脈、おぼつかない?」
アカネは答えず、壁際に腰を下ろす。
外套の裾を整え、札を一枚、手元に置く。
札の縁は黒く焦げていた。
光が揺れ、呼吸に合わせて脈打つ。
ミリは結界の外に座る。
「……少し寝なよ!見張ってるからさ」
アカネは目を閉じる。
語札の震えが止まり、式脈が静かに沈む。
外套が肩まで滑り落ちる。
指先がわずかに動き、札を握り直す。
教会の空気が、ようやく静けさを取り戻す。
──札の震えが止まり、式脈が沈む。
アカネは眠った。
結界の光が、呼吸に合わせて脈打つ。
だが、夢の中。
札が燃えていた。
焦げた縁が広がり、文様が崩れる。
男の札が、空を裂く。
「やっぱ裏切る瞬間が一番うめぇぇな」
「気に食わねえやつをぶちのめし、でけえ尻を
プリつかせてた雌を犯すのはたまらねぇぜ」
舌なめずりをしながら高らかに笑う
その声が、耳の奥で響く。
母の札が砕け、父の札が沈む。
姉の札だけが、男の手に握られていた。
アカネは叫ぼうとする。
だが、言葉が出ない。
無力な自身を呪う呪う呪う
涙が出て失意の中で心が壊れる
式脈が乱れ、札が暴走する。
空間が軋み、光が濁る。
──アカネは目を見開いた。
息が荒く、札が震えていた。
ミリが覗き込む。
「……うなされてたよ」
アカネは何も言わず、札を握り直す。
焦げた縁が、まだ熱を持っていた。
アカネは心配そうに
「……回復した?」
アカネは札を握り直し、短く答える。
「あぁ」
外套を整え、立ち上がる。
札を一枚、空間に滑らせる。
文様が広がり、探索の式が立ち上がる。
空気が軋み、式脈が空間に流れる。
札が震え、2つの光が導かれる。
一筋は北へ、もう一筋も北へ
アカネは札を見下ろす。
「残り二体、動いていないな。一定の場所に留まってるらしい。」
ミリが短剣を腰に戻し、立ち上がる。
「じゃあ、こっちから行こう。動かないなら、狩れる」
アカネは札を回収し、外套の内側に滑り込ませる。
アカネは札を見下ろす。
「……高台。屋敷の中か」
ミリが眉をひそめる。
アカネは札をもう一枚滑らせる。
文様が広がり、空気が軋む。
式脈が空間を這い、屋敷の輪郭を描き出す。
高台にそびえる、黒い屋根。
窓は閉ざされ、門は開いていた。
「アマツがいる。動いてない。……待ってる」
ミリは静かに息を吐く。
「じゃあ、行こう。動かないなら、こっちが動く」
アカネは札を回収し、外套の内側に滑り込ませる。
──高台の屋敷。門は開いていたが、空気は重い。
アカネが扉に手をかける。
札を滑らせ、式を流す。
だが、扉は軋むだけで開かない。
「……立て付けが悪い」
ガチャガチャとドアノブを回す
ミリもドアを開けようとするが
「ほんとだ!開く気配がないね……それなら」
ミリが少し笑みを浮かべて
深呼吸をして構えを取る。
足元に力が集まり、空気が震える。
チャクラが脈打ち、足先に集まる。
流麗な蹴りが走る。
扉が軋み、内側から裂けるように崩れた。
木片が散り、式が乱れる。
アカネはその揺れに、違和感を覚えた。
「……チャクラか」
ミリは肩をすくめる。
「扉が開かないなら、壊せばいいだけ」
アカネは札を握り直し、静かに言う。
「こんな所まで来るぐらいだから、それなりに腕に覚えがあると思ってたが……お前、何者だ?」
ミリは肩をすくめ、笑いながら言った。
「子供の頃から習ってた。サラマ=ヴァルナってやつ。……舞ってるように見える?蹴ってるだけだよ」
アカネは札を握り直し、目を細める。
「サラマ=ヴァルナ……サラマンド王族の技術か。お前、本当に何者だ?」
ミリはハッとしてバツが悪いように
「き、近所のおじいちゃんに習ったんだよ」
…明らかに嘘臭さが滲み出ていた
アカネはそれ以上は詮索しまいと
ヤレヤレと言ったため息をついては
屋敷の中へ歩いていった。
「……ごめんまだ言えない」
心の中で呟きアカネの後を追いかけた。




