(仮)仮定の並行世界
この作品のテーマは随分と重いものになっています。
苦手な方はお控えください。
テーマは、『命と価値観』です。
自殺したい、そう思う方は少なくありません。
そう思う人の大半は、自分を否定することから始まります。
自殺にはまだ至っていない主人公、瀬香 渡の、不思議な物語です。
※この作品は決して自殺を促すものではなく、むしろ自殺を止めてほしいという思いを込めて作られたものです。
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――自分に価値がない。
そう考え始めたのは、いつ頃からだろうか。
あんまり覚えていない。そもそも小さい時の記憶なんてない。
自分の持ち合わせている記憶では、この暗闇を照らすことはできない。
渡の気持ちはいつの間にか真っ暗な部屋の中に閉じ込められてしまった。
とにかく自分は価値がない人間だと思い続けているだけだ。
渡は窓に映る夜の空を背景に、一冊の本を読んでいた。
『並行世界の不思議』
このヘンテコな本が言うに、自分たちの住む世界とは異なる、並行世界というものがあるらしい。
この本は、『人生は選択肢で成り立っている』という文から始まり、選択によって進む世界が変わるのだと、そう書いてあった。
「自分に価値を見出せた世界線も、あったのかな…」
ふと渡は、自分の気持ちを声に出してしまった。
そんなに重要なことじゃないし、時間をかけて考えることでもない。
自分に価値があればより良い世界線を選びたいが、そんな欲を叶えるものも、価値もない。
そう考えていると、いきなり、誰かに肩を叩かれたような感覚がした。
渡はすぐに後ろを振り返ってから周りを見渡す。
しかし、周りには誰もいなかった。
疲れているのかもしれない、そう思って渡はベッドに飛び込んだ。
「明日は学校かぁ。めんどくせ。」
そう言って、渡は眠りについた。
渡はいつも通りの時間に起き、朝食を食べ、バッグを持って、登校していった。
学校への道のりの四分の一を過ぎたところで、後ろから声をかけられた。
「おはよう、渡。今日もご機嫌斜め?」
そう言ってきたのは、クラスメイトの海辺 加奈だった。
「別に。…てか毎回、何で俺に話しかけるんだよ。お前、女友達いっぱいいるだろ?そいつらと居たほうがお前にとっては良いだろ。」
「えー、そんなことないよ。渡と居ても楽しいけどなぁ…」
絶対に他の人たちと居たほうが楽しい筈なのに、加奈はいつも渡のところにいた。
こんな生きている価値すらない俺に何の用だ、と毎回思っている。
本当に、変わった人だ。
「あいたたた…今日はなんだか朝から頭痛が激しいな…」
ボソッとそう言って、渡はおでこに手を当てて、熱がないか確認した。
「大丈夫?熱でもあるの?」
「いや、大丈夫。というかお前、いつまで俺のところに居るんだ?」
「良いでしょ?私が渡と一緒に居たいんだから。」
渡は、大きくため息をついて諦めた。
「くっ…やっぱり頭が…」
渡はどんどんフラフラと歩くようになってしまった。
「ねぇ、本当に大丈夫?おかしいよ?」
「だ、大丈夫だって…」
そう言いながら結局、渡は倒れてしまった。
◇ ◇ ◇
目が覚めると、そこはどこかの病室だった。
体からホースが生えていたので、渡はホースを目で辿っていった。
「…点滴か。そんな大事になってたのか、俺。」
どうやら、部屋にやってくる人に聞くと、俺はもう少しで命を落とすところだったらしい。
救急車で運ばれてくるなり緊急手術が開始され、俺は命が救われたのだとか。
渡が点滴と共に病院内を散歩していると、とある噂が耳に入ってきた。
「あの有名な芸能人がさ、昨日の手術が間に合わなくて、死んじゃったらしいのよ。」
「ええ、嘘?!手術が間に合わないなんてことあるの?」
「さぁ?わからないけど、昨日緊急手術があったらしくてね、芸能人の人がどうしても後になっちゃったらしいのよ。」
その噂を聞いて、渡はとんでもない罪悪感に包まれた。
なぜ自分を助けたのか。なぜ、芸能人の方を優先しなかったのか。
なぜ、価値の低いほうを残して、価値の高いほうを助けなかったのか。
渡にその答えはわからなかった。
ただ、渡は自分の個室に戻るなり、ベッドに転がるしかなかった。
「…俺なんて、死ねばよかったのに。」
そう、思った。
価値のないものを捨てても、何も思わないように、価値のない自分が死んだところで、誰も何も思わない。
価値のないものを無くしても、また買えばいいや、まぁいっか、と思われるように、価値のない自分が命を失ったところで、誰も悲しむことはない。
逆に、価値のあるものを無くせば、私の大切なものだったのに、私のバカ!と思うように――いや、流石にこんな風にはならないか――価値のある人が命を失えば、たくさんの人が悲しむ。
今の状況はこの原理に当てはまる。
芸能人が命を失ったところで、たくさんの人が悲しんでいる。
だから、価値のない自分なんて誰も悲しむことはないと、そう思った。
次の日、渡は両親に呼ばれて、ともに診察室へと向かった。
「体調はだいぶ回復しましたか?」
「…はい。一応、回復しましたが…」
正直言って、この状況を喜べる自分はいない。
「そうですか。それでは、ここからは大事なお話がありますので、待合室で少し掛けてお待ちください。」
そう言われて、三人は診察室を追い出された。――追い出されたは不適切か…――
「瀬香さん、瀬香 渡さん。こちらへ。」
あれから十分くらいが経ち、渡は7番診察室へと呼ばれた。
「少し、お話があります。」
改めて、医者がそう言った。
「瀬香 菜由さん、瀬香 博さんの息子さん、瀬香 渡さんは…」
いつの間にか、医者の顔色が先ほどより悪くなっていた。
父も母も身を前に出して、なんだなんだと言わんばかりに圧をかけていた。
渡は、いつも通りの冷たい眼差しで、医者を見ていた。
「渡さんの寿命は、最大で30日かと。」
医者から出た言葉は、渡の余命宣告だった。
父と母はお互いを見合わせ、沈黙していた。
「…え、今、なんて言いましたか…」
幻聴出ないことを確認したいのか――というか俺が死んでもショックじゃないでしょ?――母は医者に繰り返し言うよう求めた。
「私も何回もこんなことを言うのは心が痛いのでよく聞いてください。お子さんの寿命は最大で30日かと思われます。」
それを聞いて、頭を抱え、畳みかけるように医者に質問をしていた。
あまりにも演技がオーバーすぎる。
そもそも自分の寿命が30日しかなくても悲しむ人なんていないのだから、演技なんていらないのに。
自分の子供への慈悲だろうか。
悲しむ人が居なければいけないと、両親が必死に演技をしてくれているのだろうか。
渡には、それがわからなかった。
渡は、個室に帰ってから、頭を抱え、もがき苦しんでいた。
別に自分の寿命が短くて騒いでいるわけでもないし、病気で苦しんでいるわけでもない。
とんでもない罪悪感が、この苦しみの種となっていたのだ。
渡は残り30日しか命が残っていない。
言い換えれば、寿命が手術によって30日しか伸びなかったということだ。
芸能人の人が、手術を受けていたら、自分より何日多く、生きていられたのだろうと思ったのだ。
例え、芸能人の寿命が1日しか伸びなかったとしても、それは価値のない人が30日生きるよりもはるかに価値がある。
そんなことを考えれば考えるほど、罪悪感に包まれる。
忘れよう、忘れようと考えても、忘れようとしても、忘れられなかった。
「やっぱり、俺なんて死ねばよかったのに。」
何で30日しか伸びない命が救われたのかと、なぜ希望のある芸能人を優先しなかったのかと。
――何で、何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で、俺を助けた?
ゼロにどんな数をかけてもゼロのままなのに、なぜ俺を助けるのだろうか。
元の数字が大きいものに一をかけたほうが、絶対的に良いのに。
――何で俺が生きてるんだ、何で価値のある人が死ぬんだ、何で俺を優先したんだ、何で俺が助かるんだ
何で、何でと問ばかりが渡の脳内を通り過ぎていく。
やがて、渡は結論を出した。
『俺が芸能人を殺した』
◆ ◆ ◆
病院の屋上に一人の少年がいた。
夜の風が少年の髪を撫でおろすように吹いていた。
少年の瞳には綺麗な星が浮かぶ夜空が映りこんでいた。
しかし、その瞳はやがて夜空ではなく病院が映し出された。
少年は屋上から逆さまの状態で落下していた。
自分には価値が一ミリもないと思い、芸能人を殺したにも関わらず、自殺した。
――「あまりにも主観的すぎるな」
そんな声がどこからか、聞こえたような気がした。
◇ ◇ ◇
目が覚めると、目の前には見知った天井があった。
カレンダーを見ると、自分が自殺をした筈の次の日だった。
「…俺が自殺していない世界線…もしかして並行世界に来たのか…?」
倒れる一日前に読んだ、あの本を思い出す。
しかし、もしかしたら自殺を図っただけで、助かったという可能性も十分にある。
すると、いつも朝食を運んでくれるお姉さんが来たので、そのことを聞いてみた。
「昨日、君が屋上から飛び降りたって?そんなわけないじゃない。この屋上から飛び降りたら、どんな対策しても死んじゃうよ。」
そう言って笑いながら部屋を出ていった。
「あ、そういえば言い忘れてたけど、今日の午後二時に診察室に来てほしいってさ。」
そう言い残して、去っていった。
「夢だった…のかな…」
◇ ◇ ◇
「明日から退院になります。29日間、元気に過ごしてください。」
現代では緩和ケアというものがあるらしい。
充実した人生を送れるために、周りの人が協力してあげよう!みたいな感じの取り組みらしい。
自分には充実した人生なんて送る価値がないと、そう思っていた。
何がそこまで自分の首を絞めるような考え方をさせるのか、理解できないが。
ただ、一つだけわかることがある。
『自分はこの世で生き続けて良い存在ではない』ということだ。
だから、余命があと29日だというのは、神様からの罰だと思った。
そして、渡はまた学校に通い始めた。
「あ!おはよう!元気になった?渡?」
「ああ。もうなんともないよ。」
「はぁ、本当に空気読めないよね。これがあったよー!とか、そんな感じのエピソードないの?」
「人の入院を面白い何かと勘違いしてない?そんなエピソードないよ。」
一瞬、余命のことを話した方が良いかなと思ったが、自分が死んだところで加奈がどうなることもないから、話さなくても大丈夫だろうと、自己完結した。
親からは、あんた友達いないんだから、学校より楽しいところに行きましょうよ!だとか。
渡はその誘いを丁重にお断りしておいた。
どうも、自分を楽させたがる。
自分が死ぬから何だ。別にいつもと変わらない生活をすればいいじゃないか。
世の中に知れ渡りもしない、友達もいない無名の人間など、気にされない筈なのに。
渡は、自分が考えていることと、親の行動が矛盾しているために、理解に苦しんだ。
そして、命が尽きる日は突然やってきた。
朝、いつもの登校中、前のように渡は倒れ、救急で運ばれた。
「どうやら、今日が最後の日のようです。」
「ああ、なんてこと…」
母は顔を隠して大泣きし、父は泣くのを我慢していた。
個室にいる渡にこの状況を知られることは無かった。
ピッ、ピッ、ピッと部屋中に鳴り響く。
そんな部屋にいるのは寝込んだ渡、一人だった。
「ああ、ようやくこの悩みから解放されるのか。」
そう言いながら渡は携帯を開き、パスワードをなしに設定した。
そして、メモアプリを開き、遺書を書き始める。
そして時が過ぎ、渡はスマホを手に握った状態で死んだ。
◇ ◇ ◇
――ピーー----
高い機械音が部屋に鳴り響き、渡の死を知らせた。
「ああ!渡!渡!」
母は渡、渡と名前を呼び続け、父は静かに涙を流していた。
その涙がおさまるのは、約一時間たった後だった。
その時、渡は不思議な状態に置かれていた。
体は動かないし、声も出ない。しかし、目は見えるし、耳も聞こえるのだ。
最初、目を開けた時に見えたのは病室だった。
しかし、リズムよく鳴っていた電子音はリズムを無くし、絶え間なくなり続けていた。
そして、その視界には、自分の死を悲しむ親が映っていた。
何で泣いているの?何で自分の死で泣いているの?意味が分からない。
価値のないものが無くなっても誰も悲しまないんじゃないの?
しかし、その原理は当てはまっていない。
確かに芸能人が死んだことについて原理は成り立っている。
しかし、今の状況は原理に当てはまっていない。
連立方程式の一方の解が存在しないかのように。
そして数分後、病室の扉が勢いよく開いた。
そこには、渡のクラスメイトがぞろぞろとやってきたのだ。
その中でも大号泣していたのは、加奈だった。
「なんで…なんで私に余命のこと、教えてくれなかったの!」
加奈は声を上げて泣いた。
友達じゃないのに、そこまで関わってない筈なのに、みんな涙を流して泣いた。
悲しむ人は誰もいないと、そう思っていたのに。
その次の日にお通夜が行われ、両親と加奈と加奈の友達は葬儀会館で泊まることになった。
そして、皆が寝たころ、加奈は一人で渡のところへ訪れた。
「あのね、私、ずっと君に思ってたことがあったんだ。もしかしてだけど、自分のこと嫌いなんじゃないかなって。え、えーとね、つまり自分に価値がないって思いこんでるんじゃないかなって思ってたの。だから余命宣告されたことも伝えてくれなかったのかなって。」
そう言ってから少し恥ずかしくなったのか、少し沈黙が続いた。
「あ、あのね…その…もし、渡が生まれ変わったら、自分に自信を持ってほしい。君が自分に価値を見出せなくても、私達は君の価値を見出せてる。大事なのは、主観的な価値観なんかじゃない、客観的な価値観なの。私にとって渡はそこら辺の芸能人より、いやアイドルよりも価値のある、大切な存在だと思ってるよ。だから、この思いが渡に届いたらうれしいな。」
そう言って、加奈は寝室へと戻っていった。
その言葉を渡はしっかり聞いていた。
渡は、泣いた。
涙が流れることはないし、声が出ることもないが。
だけど、一つ、強く思ったことがあった。
『まだ生きたかった』
今までの渡は、そんなこと思うことは無かった。
死んでも良かったし、生きても良かった。
しかし、現在もう既に死んでいるこの体が生き返ることはないだろう。
だから、死にたくない、じゃない。まだ、生きたい。そう思った。
渡は考えはすべて理論、理論だった。
それは周りが聞けばただの屁理屈に過ぎない。
渡は、自分の、自分の本当の気持ちを、理論という言葉を使って奥底に埋めていたのだ。
しかしそんな埋もれていた感情が漏れ出した。
ようやく、自分の本当の素直な気持ちを、掘り出せたのだ。
――「俺は今までずっと自分から見る自分の価値を低く下げ、否定し続けていたんだ。」
小さいころから何か特別なことができるわけでもなく、不器用だった。
両親はそれについて何も怒ることはなかったが、その他の大人からは言いたい放題言われた。
そして、中学校の時に言われた言葉で、自分の価値観はどん底に落とされた。
『お前が死ねば、皆は幸せになれるのに』
そこから自分の存在意義が何なのか、わからなくなっていた。
ずっと、迷子だった。自分の進むべき道を照らす明かりは何もなかった。
しかし、加奈は迷子になった自分を助けてくれたのだ。
そして自分の価値を知ることができたのだ。
ああ、こんなことが早く知れたのなら、もっと生きていたかった。
そんな欲望があふれ出した。
しかし、自殺した時のように並列世界に飛ぶことはなかった。
もしも俺がまだ生き続けられたら、僕は一体何をするだろうか。
価値だけで自分をすべて否定していた。
その分、苦しい思いをしてきた。
しかし、それは自分の中で殺されていたのだ。
最後に残ったのは冷たい、無の感情だけ。
でも、今は違う。
死を体験して、新たなことを知ることができた。
もし、もう一度だけやり直せるなら、次は加奈ともっと仲良くできたら――
◇ ◇ ◇
遮光カーテンの隙間から光が漏れ出し、暗い部屋を照らしていた。
小鳥のさえずりが鳴り、目覚ましを促す。
気づくと渡は、『並列世界の不思議』という本を持ちながら眠っていた。
「…あれ、俺は死んだんじゃ――」
「渡!学校遅刻するわよ!早く準備しなさい!」
そう言って母は渡の部屋の扉を開ける。
「…母さん――」
「寝ぼけてないでさっさと支度しなさい。」
「ねぇ、母さん。母さんは俺のこと大切だと思ってる?」
「何を急に。勿論大切だよ。私のたった一人の貴重な子供だからね。」
そう言って階段を下りて行った。
渡はいつもは見せない笑顔で学校に登校した。
「あら、今日はご機嫌がよろしいねぇ?渡?」
「まぁな…ってか、時間ヤバい!加奈、急ぐぞ!」
「!!」
渡は初めて加奈の名前を呼んだ。
「はいはい。急ぐ急ぐ!」
そう言って加奈は渡の後を追いかけた。
あれから数日が経ったが、病気になることはなかった。
「もしかして俺が体験したのは余命宣告される並列世界だったのか…?」
「何?並列世界って。」
そう言われたので、『並列世界の不思議』という本を手渡した。
「…へぇ。本当にあるものなのかなぁ。」
「…いや、あるよ。俺の考えを変えてくれた世界だから。」
「…ふ、ふーん…?」
あれから自分を大切にできるようになり、加奈とは楽しく毎日を過ごしている。
もしも誰かが自分に価値を見出せなくなったら、寄り添ってあげたい。
ちなみにだが、並行世界で死んだ芸能人は、無事に手術が終わったらしく、今も活動を続けている。
◇ ◇ ◇
「あの子、ようやく生きる希望を持ってくれてうれしいですね。」
「それはそうなのですが…並行世界に飛ばしてもよろしかったのですか?」
「ええ。何も私達神は、人間の願いを叶えることだけが仕事ではありません。こうして希望を持たせてあげることも、私達の役割なんですよ。」
白い服をまとった女性二人は、空中に映る渡の姿を見ながらそう言った。
その画面を撮影しているものに気が付いたようにカメラの方を見る。
「え、ちょっと?もしかして私のカメラがバレてるの?」
「いや、そんなことないと思いますよ…多分…」
そのころ渡は、空をじっと見つめていた。
もしかしたら、自分の心の底に埋まっていた願いをかなえてくれたのかもしれないと。
『並行世界の不思議』を読んだとき、ふと声に出してしまった言葉。
――「自分に価値を見出せた世界線も、あったのかな…」
もしかしたらそれを聞いて神様は、その願いを叶えてくれたのかもしれない。
その時は死んでも生きても別にどっちでもよかった。
しかし、今は違う。
自分が死ぬと、たくさんの人が悲しんでくれると分かった今、必死に生きようと思っている。
人生はまだまだこれからだ。
人は、生きているだけで価値を持ち、人それぞれで価値観は変わる。
並行世界は自分の価値を教えてくれただけではなかった。
自分は、いつも『自分に価値観はない』と主観的な意見しか出てこなかった。
しかし、その主観的な意見は客観的な意見とイコールになるとは限らない。
だから、客観的に考えたりすることも、大切だと思った。
神様は、自分の考え方も、変えてくれたのだ。
少し強引で混乱したけど、神様の行いに、渡は感謝していた。
◇ ◇ ◇
あれから何年が経っただろうか。
渡は加奈と同じ大学に進学し、二人は結婚した。
そして渡は現在、講演を行って、自分の価値を見出すという大切さを教えているのだとか。
あとがき
この物語を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
この物語は主に『命』と『価値観』をテーマにした内容となっております。
現代の社会、自分に価値を見出せなかったり、自分が嫌になったり、自分の存在を否定したりして、自殺という苦しい道へと進んでしまう人がたくさんいます。
自分に価値がない、結局はそのような結論に至ってしまいます。
周りからのいじめなどを受け、死にたい、そう思う人もよくいます。
しかし、それは主観的な意見すぎる、とそう伝えたいです。
価値観は人それぞれなのですが、命は誰も同じ価値を持っています。
例えアイドルの命でも、一般人の命と同じ価値を持っています。
だから例え自分に価値がないと思っても自分なりに考えてみてください。
いじめられている人は、自分の大切さを両親に聞いてみてください。
価値のないものを人は作りません。
人間は価値のあるものを作り出します。
だから、あなたが生きていること自体に意味があり、価値があります。
例え、他の人に自分の価値を下げられるような発言をされても、落ち込まないでください。
自分の価値に他人が口出ししたり、変えたりすることはできません。
あなただけの価値であり、それは誰にも侵害されてはいけないものです。
誰もかもが、あなたの価値はゼロ、と思っているわけではありません。
世の中には必ず、自分の価値を高めてくれる人がいるわけで、あなたの価値は他人が落とそうとしても、それはできることのないことです。
しかし、価値観は自分で変えることができます。
今回の主人公、渡が言ったように、『自分に価値がない』と自分を否定し続ければ、それはやがて真実になってしまいます。逆に『自分は生きているだけで価値があるのだ』と自分を肯定し続ければ、それも真実になります。
つまり「自己肯定感」を大切にしてほしいということです。
どんなに小さいことでも自分を褒め、肯定しましょう。
勿論、ダメなことはダメですが。
だからと言って、価値が下がるわけではありません。
しっかり仕事をこなしたり、やるべきことをやった人は褒められ称えられるべきです。
だから、しっかり自分のことを褒めて、自分を認めてあげてください。
そうすればきっと、自分の価値を見出すことができると思います。
最後に一つだけ。
死んでしまったら、周りが悲しむのか、悲しまないのか、その答えは永遠にわかりません。
しかし、これだけは絶対に覚えていてほしいと思います。
『あなたが死んで悲しむ人は必ずいる。』




