7 ポケットの力
俺はポケットに石を入れた。
俺が着てきた服には丁度良いポケットが付いていた。手をいれると何故かビスケットが出てきた。丁度、小腹が空いていたので、食べながらてくてくと、当てもなく歩いている。エルフの里はもう遠くに見えるていどになっていた。
エルフ達は俺がいなくなってホッとしているだろう。長いこと居座って迷惑を掛けた。
このまま歩けばどこかの人の村にでも着くだろう。
「この道は人の村か町に続いているだろうか。」
「山の方に行けば良い。」
石は随分流ちょうにしゃべるようになった。
「山か。こっちの方に曲がっている道を行けば山に行けそうだ。」
「山に行けば、君を歓迎してくれる。」
本当か?もし歓迎されるなら行って見ても良いかもしれない。だめなら、また別の所に行けば良いさ。
俺はもう人と会ったとしても、大丈夫だと思う。
エルフの里で、以前のようにハブられたけど、自分のせいではなかった事が分った。そして俺は自分で生活できる自信が付いた。そう言う意味では、エルフに感謝だ。
中学に行けなくなったことは、悔しく感じる。日本では、学歴がないと、生活がし辛い。もしここから帰れたとしたら、俺はどうしようもない。勉強をしなければ生らないだろう。
今更やりたいとは思わない。だから未だ、日本には帰りたくない。此処に居れば、なんとかなるような気がするのだ。
もう直ぐ石の言っていた山の裾野だ。ここには何があるのだろう。
俺を、歓迎してくれるのは誰だろう。
遠くから、背の低い男が走ってきた。あれは、若しかして、ドワーフか!
「おおー。もしや夢見人か!」
俺は警戒した。ドワーフまで夢見人のことを知っていたとは。また、同じ事が繰り返されるのだろうか。