6 ここを出よう
もう、ここに来てから1年経った頃だ。初めは浮かれて、次には落ち込みそして冷静に考える事ができるようになった。今では、普通のエルフが生活しているように、火をおこし獲物を捌き、薬草を見分けられるようになった。
風呂にも毎日入っている。以前のような、自堕落で、不衛生な生活は考えられない。
毎日朝早く目覚め、遠くまで獲物を追いかけ、弓矢を使い、罠を張り、木に登り大型の獣を追い込んだりもする。
偶に他のエルフに出会うこともあるが、コル以外は此方に近づくことはない。皆遠巻きに見て居るだけだ。
余程、以前来た夢見人は皆に酷い印象を与えたのだろう。
俺はこの生活をこなせている自分を気に入っている。自分の事を自分で面倒見る。
当たり前だけど、以前の俺は出来なかったことだ。
まるで、これが本来の俺では無いかと思うほどだ。
そういえば、小学の頃の俺はこうだった。
活動的で、皆と良く笑い、悪ふざけもした。友達だって、いたのだ。
何時ものように石に話しかけていると、石が初めて長文で答えた。
「ここから出て行こう。」
「コル。俺はここから出て行った方が良いだろうか?」
「何故。そう思うの。」
「皆、俺の事を警戒している。俺がいない方が良いだろう。」
「そうだね。」
何となく、冷たい言い方だ。矢張俺は警戒されていた。1年しても、未だ皆と親しくなれないのか。俺が何かしたわけでもないのに、過去の夢見人のせいで、俺が責められている。むなしさが胸を締め付けた。
俺がここを出て行くというと、初めに会った老エルフが俺の着てきた服を返してくれた。
俺はエルフのよこした服に着替えここを出て行った。