4 夢見人は悪人
コルは何時も少し離れて立っている。丁度、俺も緊張しないギリギリの距離だ。
俺が人が苦手なのと同じように、コルも俺を警戒しているのだろうか。
初めてここに来た時は、俺は妙にハイになっていた。
異世界なんて、ゲームのようで、現実とは思えなかったせいだ。何時ものゲームの感覚でいた。
今は、落ち着いている。ここはエルフはいるが、ゲームの世界ではない。チョット違う国と言うだけのようだ。アフリカや、アマゾンなんかの未開の土地。みたいな感じだろう。
彼等を遠くから眺めることがある。原始的な生活を送っていた。藁葺きの屋根の家。服は貫頭衣のようなものに細めのパンツを履いていた。サンダルを履いて弓矢で獲物を捕っていた。
自然と共に生きるエルフらしい。
でも、魔法は使わないのだろうか。使えないのか?
コルは何時も、一人でいるようだ。彼奴もエルフの中でハブられているのだろうか。
俺の世話をしてくれるのは寂しいからか?
「今日は公平を連れて行きたいところがある。」
コルは珍しくエルフの集落の近くに連れて行ってくれた。
今まで、エルフが集まっているところへは連れて行ってくれなかった。
遠くから眺めるだ事はあったが、警戒されているようで近づけなかった。俺も、人が集まっているところは苦手なので、別に構わなかったが、何となくいい気はしなかった。
「ここは、エルフの、精霊を祀っている。」
と、コルが言ったので、俺は興奮して、
「じゃあ、矢張、エルフは魔法が使えるんだな。誰も使っていないように見えた。」
「魔法?其れは何?」
「火を手から出したり水を出したりする、不思議な力の事さ。コルも出来るだろ?」
「そんなお伽噺、現実に在るわけ無いよ。在るとしたら、夢見人の災厄くらいだね。」
夢見人の災厄?なんだ其れ。聞いたこともない。
「昔、この里に、夢見人が現れて、森を焼いたり、変な道具を使ったりして、エルフを捕まえて、ひどいことをしたんだって。公平は夢見人だと言われているよ。」
俺が夢見人。俺のように此方に来た奴が他にもいたんだ。
若しかして、エルフを捕まえて、奴隷にしたりとか?ハーレムをつくったとか?俺が始め考えていたようなことかも知れない。
ゲームのような感覚で、魔王みたいに振る舞ったのかも知れない。俺も、考えていた事だ。
「だから、公平は捕まって、監禁されて、様子を見られていたの。今も警戒されている。なにをするか、皆ビクビクしている。僕は公平の監視役だよ。」
衝撃だ。俺はコルと、友達になったのだと思っていた。監視されていたとは。
確かに、初めの俺のテンションでいたなら、同じ事をしていたかも知れない。綺麗なエルフを自分のものにしたくなったかも知れない。牢に閉じ込められて、何時もの自分になって、考えるようになれたのは、良かった。
「でも、不思議だ。俺には魔法も、変な道具も出せない。前に来た奴が、特別なんじゃないのか。」
「ううん。夢見人は皆、特別名力を持ってくる。」
俺だけが、何も持ってこなかったのか。其れは良かったかも知れない。もし不思議な力があったら、絶対に使っていただろう。
「公平も、持ってきた。」
「えっ!」
何を持ってきた?スマホか?あの時は服しか着ていなかったと思ったが、どこかに入っていたのかも知れない。。全部取り上げられたのはその為か。
「返して欲しい?」
「いや、ソ、其れは・・」
スマホは返して欲しいけど、言えない雰囲気だった。