3 ひとりぼっちの生活
ここの周りには誰も居ない俺だけだ。
偶に、小屋の前に鳥とかネズミのでかい奴とか置いてある。いつ誰が来たのか分らない。
初めは嫌がらせかと思ったが、どうも違うようだ。俺が獲物を捕ることが出来ないので、親切で置いてくれているようだった。
俺は料理が出来ない。木に登って果物を採ったり、そこいらに生えていた食えそうな草を取って食べる。
一ヶ月もすると、ぶくぶくだった俺の身体は痩せ細っていた。
力も出ない。火を熾そうにもやり方が分らない。以前なら、火の熾し方を検索していただろうが、ここにはスマホも何も持ってこられなかった。
火が熾せないので、折角、置いてくれていた獲物も食べられなくて、腐らせてしまった。
暫くすると、今度はちゃんと、火の通った肉が置いてあった。誰かが、俺の事を見て居るようだ。
肉を食べて、人心地が付いた俺は、風呂に入りたくなった。ここには川が在る。少し離れた所だが、何時もそこで水を汲んでいたのだ。
エルフから着せられた、貫頭衣もくさくなってきた。洗濯ぐらいは出来る。
俺は川に行って、周りを見まわした。「あった」泡の出る木の実だ。
ここに連れてこられたとき教えて貰った、シャボンの実だ。
其れを潰して、服にこすりつけ服を洗った。近くの木に掛けて乾かして、水の中に入っていく。
手にはシャボンの実を持って。
久し振りに、すっきりした。裸の儘、ぼーっと川を眺めて、服が乾くのを待つ。
久し振りに身体を洗った。小屋の中も、自分の匂いがこもっている。後で、掃除でもしてみるか。
と独り言を言う。外は気持ちの良い場所だった。
ここには誰も来ない。俺の専用の水場のようになっている。皆、俺を避けているようだ。
俺が一体なにをした。せめて、理由を知りたかった。
小屋に着くと其処にエルフの男の子が立っていた。
「こんにちは。僕、コル。この間、生の肉を置いておいたの。御免ね、火を熾せないとは知らなくて。火の熾し方を教えてあげる。あと、獲物の捕り方も。」
可愛い顔のエルフだ。でも俺は警戒した。また、何も知らないことで傷つけられるのではないかと。
コルは警戒している俺には、お構いなしに色々教え始めた。
少し距離を取って俺は其れを聞く。
明日は獲物の捕り方を教えてくれるそうだ。其の儘、コルは帰っていった。
次の日、約束通りコルは来た。
コルは67歳だと言った。別に驚かない。エルフが長命種なのは常識だ。
ネズミの巣の見つけ方や、巣穴の前に置く罠の作り方を教えてくれて帰って行った。
自分でもやってみた。5つの巣穴を見付け其処に罠を仕掛けておく。明日が楽しみだ。
それから、コルは、度々僕の小屋に来るようになった。離れた処から、声を掛けてくる。
まるで、警戒心の強い野生動物のようだ。俺は、猛獣か?
「公平は、罠の作り方が上手だね。もう一人で狩りが出来ている。大したもんだ。」
偶に、褒めてくれる。今度は弓の使い方を教わることにした。
褒められると少し嬉しかった。やる気に繋がる。