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プロローグ
俺は、異世界に来た。
ここは綺麗なところだ。季節は秋だ。色とりどりの木々がこんもりと生い茂っている。
木に果物がたわわに生っている。木に登って桃に似た果物を採って食べてみる。
「旨い。旨すぎる。」
甘い果汁が指にまでこぼれて手がベタベタになってしまった。舌で受け止めて、吸い舐める。
森の中に転移だなんてラノベで読んでいたとおりの展開だ。ベタな始まりだが、これから、どこかの街に行って、冒険者になって、ハーレムを作って金をいっぱい稼いでやる。
王に成れるかも。それとも、勇者か、若しくは、魔王になるか。楽しい。想像するだけでわくわくする。
知らない人に貰った招待状が、こんな処につれて来てくれるなんて、幸運にもほどがある。
思い切って、外に出てみて本当に良かった。引きこもりは、もうやめだ。あんなつまらない生活をよく何年もしていたものだ。過去の俺とは、もうおさらばさ。