09閑話 The Neighbor's Son will be on TV③
お待たせしました。レースシーンは今回で完結です。最後はゆ~っくりスクロールしてくださいw
09
────東京・青葉賞 芝二千四百メートル(Grade Ⅲ)
陽気な気候のもとレースのスタート地点であるスタンド前は詰めかけた観客の熱い視線が注がれていた。十四頭の馬達がゲートインの指示を待ちわびるように、ゲート前を思い思いに往来する。発汗の目立つ馬、頭を上下に振る馬……スタンド前で興奮気味の馬が多い中、ポンポコポンは落ち着いて周回を続けていた。
すると、そこに近づく栗毛の馬と騎手がいた。
「柏木よぉ、今日もハナを切るのか?お前の所は人気がないんだから、俺らの邪魔はすんなよぉ?」
このレースの一番人気、ファイアーワークスと岡倉だった。
ファイアーワークスの前走は弥生賞。三歳クラシックの一つ目・皐月賞のトライアルレースで三着馬までに優先出走権が与えられるが、ゴール前で交わされて惜しくも四着だった。『ダービーこそは。』それがファイアーワークス陣営の合言葉になっていた。
「岡倉さんこそ、今日は離して逃げるんですか?もしそうなら、うちは離れた二番手くらいから行きますよ」
柏木は先輩の岡倉の牽制に対して探りを入れるように返答した。
「おい、芦毛の。お前、雑誌の取材を受けたんだってな?父親が有名だと一勝クラスを勝つだけで取材してもらえるから良かったな。もう十分だろ?頼むから今日は俺の邪魔をするなよ」
ファイアーワークスが小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、ポンポコポンを挑発してくるが、ポンポコポンは無言のまま歩みを止めない。その反応が面白くなかったファイアーワークスは横に並んで歩きながら睨みつけてくる。
「ファイアー、そろそろ離れよう。あんまり一緒にいると連れてスタートをミスるかもしれないぞ」
「そうだな。路傍の石に構う必要もないか、クハハハ」
言いたいことだけ言って、このレースの一番人気の馬と騎手はススススと離れて隊列の後方に向かって行った。
「ポンポコ、気にするなよ。岡倉さん達、このレース大外枠で勝負がけのレースだから、ナーバスになってるんだ。だから、ああやって心理戦を仕掛けてるんだと思う。俺達はマイペースで行こう?」
「……分かってるよ。ぼくは大丈夫だよ。ちょっとムカって来たけど、挑発の返事はレース結果で返すよ!」
ポンポコポンは静かに闘志を燃やす。『うん、そうだな。頑張ろう』と柏木がポンポコポンの首を優しく撫でる。
初の東京コースや初の重賞レースに戸惑うことも考えられたが、一番人気の馬達のお陰で却って集中できたかもしれない、柏木はそう思うのであった。
◇
─────さぁ、順調にゲートに収まっていきます。最後の一頭、一番人気のファイアーワークスもすんなり収まりました!ダービーに繋がる十四頭の闘いが……スタートしました!
「よし、良いスタートだ!このまま前の方に出ていこう!」
柏木は好スタートを決めた相棒に声をかける。
────ややバラけたスタートになりました。好スタートは八番ポンポコポン!そのままハナに立つのか、先行していきます。一番人気の十四番ファイアーワークスはまずまずなスタート、鞍上の岡倉が押して加速していきます。
初夏を思わせる日差しのなかターフの緑が映える映える。多くの観客が詰めかけたスタンド前を十四頭の馬達が駆けていく。栄光のダービーに向けてそれぞれの思惑を内に秘めて。
────さぁ、先頭に立ったのはファイアーワークス。スタンド前を過ぎて第一コーナーに入ります。二馬身ほど空いて白い帽子一番のナツオカチョーが続きます。その後ろに芦毛の馬体、ポンポコポンと四番インタラクティヴが並走しています。
ポンポコポンは好スタートから先行し、好位置につけていた。他馬を怖がる所があるため包まれると厳しくなるが、ファイアーワークスが離して逃げているため、かなり縦長の隊列になっていた。
───向こう正面、依然として先頭はファイアーワークス!五、六馬身ほど離して逃げています。離れた二番手にナツオカチョー、差がなくインタラクティヴとポンポコポンが続きます。そこから三馬身ほどあいてオレンジの帽子はフライングディスク───最後方から十三番ミナミノダイオウ。先頭から十八馬身くらい、縦長の展開になりました!
「ポンポコ、ペースが落ち着いてきちゃってるから、少しずつ前との差を詰めていこう!」
柏木からの呼びかけに応えるように、少し追走のペースを上げる。すぐ隣にいる二頭を横目に、ポンポコポンと柏木は単独二番手に躍り出る。それは第三コーナーの手前、東京競馬場の名物大欅に差し掛かる所であった。
────おっと!第三コーナーの手前で早くもポンポコポンが差を詰め始めた!単独二番手に浮上!その後ろ一馬身遅れてナツオカチョーとインタラクティヴが続きます。
前にいるのは後一頭。幸い後ろとも差があり、懸念していたポンポコポンが包まれて力が出せない展開は回避できた。柏木が密かに安堵する。
────三コーナーを回って、徐々に後続も差を詰めて来るところ!まだ先頭からは十馬身ほどあるか?先頭はファイアーワークス!ひとり旅!二番手、ポンポコポンも差を詰めてくる!
「……よし、ファイアー。そろそろ行こうか!
勝利への直線だ!」
────第四コーナーを周り、最後の直線に向かう!先頭はファイアーワークス!二番手ポンポコポン!差がなかなか詰まらないぞ!その後ろ、インタラクティヴ三番手!ナツオカチョーは後退!
「はぁはぁはぁ……差が、詰まらない!?」
乱れる呼吸。徐々に重たくなる四肢。ポンポコポンは懸命に脚を動かすが、ファイアーワークスとの差は詰まるどころか広がり始めていた。
『まずいまずいまずいまずいまずいまずい』
焦る気持ちと裏腹に一番人気の背中は徐々に遠ざかって行った。
────ゴールまで残り四百メートル!先頭はファイアーワークス!完全に抜け出した!これは強い!離れた二番手にポンポコポン!インタラクティヴ差を詰める。大外からは一頭オレンジの帽子が勢いよく伸びてきている!
「頑張れポンポコ、残り二百だ!」
鞍上の柏木からの檄が飛ぶ!柏木も必死に手綱をしごいてポンポコポンの首の動きをサポートする。しかし、斜め後ろから赤い帽子が迫ってきていた。そして……
────し烈な二着争い!内にポンポコポン!併せる形でインタラクティヴ!あーっ!大外から十一番フライングディスクが飛んできた!二番手争いに加わりそうだ!残り百メートル!先頭はファイアーワークスが抜け出している!
『苦しい……負けちゃう……』
懸命に走るポンポコポン。だが先頭のピンク帽子は遥か先。影さえ踏むことが出来ない。敗北の二文字がポンポコポンの頭を埋めつくす。追い付かない。脚も重くて力が入らなくなってきた。もう、駄目……
「あきらめるなーーーー!!!」
────残り五十メートル!先頭はファイアーワークス!外からのびたフライングディスクが二番手に上がった!やや遅れてインタラクティヴとポンポコポン!ポンポコポンは遅れたか?!
怒声と共に柏木の右鞭が入る!鞭で叩かれた場所がビリビリと痛み、その衝撃が全身を駆け巡った。敗北を受け入れ、冷えかけていたポンポコポンの全身に再び熱が戻る。柏木の右鞭はポンポコポンの瞳に再び闘志を呼び戻した。
「届けぇぇーーー!!!!」
────勝ったのは一番人気、ファイアーワークス!二着は外から伸びたフライングディスク!おっと!内からポンポコポンが差し返してきた!並ぶか?並ぶか?ゴール直前、二頭並んでゴールイン!!三着争いは接戦!
────ファイアーワークス強かった!逃げて三馬身差の完勝です!これで堂々とダービーに向かえます!鞍上の岡倉ガッツポーズ!
ゴール前、脱落しかけたポンポコポンは柏木の檄に応えて差し返す勝負根性を見せ、ゴール直前でインタラクティヴに並んびかけることに成功した。
電光掲示板を見つめる柏木とポンポコポン。離れたところからインタラクティヴ達も掲示板を見つめている。
「お疲れ様。少し時間がかかるのかも。ゆっくり待機場所に戻ろうか」
柏木から労いの言葉がかけられるが、ポンポコポンは返事をすることができなかった。レースの途中で負けを受け入れようとした自分が、ひどく惨めで情けなかった。
『もし、諦めずに頑張っていたら……』、そう思わずにはいられないレースだった。後悔の念に駆られ、頭を下げたままポンポコポンは無言で柏木と共に待機場所の方に消えて行った。
観客席ではファイアーワークスの強い勝ち方、フライングディスクの末脚、そしてポンポコポンとインタラクティヴのし烈な三着争い。それぞれを称える声が飛び交っていた。
盛り上がる観客席を埋めるファンの最後の関心。ファンは、いまだ電光掲示板に点らない三着と四着の結果を固唾を飲んで見守っていた。そして……
長く感じた数十秒の間を置いて、掲示板に到着順を知らせる番号が点り始めた。
一着 十四番ファイアーワークス
二着 十一番フライングディスク
三着 四番インタラクティヴ
四着 八番ポンポコポン
五着 ……
ポンポコポンと柏木はわずかにハナ差、及ばなかった。
激戦の中、一歩及ばずという結果になりました。この悔しさを糧に頑張ってほしいです。
さて、青葉賞のレースシーンはいかがだったでしょう?なかなか書き方に悩みましたが、レースの雰囲気は出てました?
出てるといいなぁー。笑
次回は(月)更新を予定しています。
おたのしみにー(ФωФ)
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という優しい方、★お願いしますー




