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07閑話 The Neighbor's Son will be on TV①

前回のあらすじ

 フジワラに繁殖成績を褒められたサンデーはルンルン気分で帰宅。マックイーンと会話をする中で、マックイーンの息子が今度のダービートライアルに出ることを知らされる。

07

◇2月・小倉あすなろ賞(三歳一勝クラス)


────さぁ六番ポンポコポン先頭で最後の直線に入ってきた!


『怖い……』


 後ろからたくさんの蹄音が迫ってくる。ドドドッとその大きな音はまるで怪物の叫び声のようだ。




────内から四番スマッシュヒットが伸びてきている!


『怖い、怖いってば……来ないで!』


 大きな怪物がどんどん近づいてきている。必死で芝を蹴り、脚を回転させて迫り来る怪物から逃れようともがく。『止まったら食べられる』その思いで必死になって駆ける。




────外からはファジーネイブルも猛烈に追い上げてきているぞ!馬場の外から先頭のポンポコポンに襲いかかる!


『嫌だ……怖い……苦しい……来ないで……』



 『もう少しでゴールだ!』そんな希望を引き裂くように怪物が直ぐそこまでやって来た。全身に血を送る心臓は張り裂けそうだ。すべてを投げ捨てて立ち止まりたい。もう脚が鉛のように重たいよ。

 


 でも、ここで……ここで諦める訳には、いかないんだ!!!!



 恐怖心を押し殺すように歯を食いしばり、後ろ脚で地面を強く蹴りあげる。もう一歩、もう一歩だけ……。刹那、みんなの笑顔が頭に浮かんだ。




────混戦のゴール前!どうだ!!六番ポンポコポン、四番スマッシュヒットの争いか?ファジーネイブルはわずかに届かないか!




 レースを終え、騎手を乗せた馬たちが駆け足で戻ってくる。その中で最後に戻ってきたのは芦毛の馬。ポンポコポンと柏木騎手だった。二人は一着馬のための待機場所に向かう。


「ポンポコ、お疲れ様。今日もすごく頑張ったな!後でお祝いに行くよ」


「あ、ありがと。柏木くんもお疲れ様。お、お祝いにリンゴ買ってきてくれると嬉しいなぁ」


 柏木はハニカミながら『了解!』と返事をし、検量室の方に消えていった。ポンポコポンは笑顔の厩務員に迎えられ、頭を優しく撫でられる。この後の勝ち馬と関係者が臨む記念撮影に備えて、ポンポコポンは息を整えながら疲労の滲む身体を何とか動かしてのそのそと移動を始めた。



 ポンポコポンはレース後の記念撮影が好きだった。レース中はものすごく怖い思いをするけど、勝った時のみんなの喜ぶ顔を見ると、『あー頑張って良かった』と疲労感も恐怖心も吹き飛んでいく。次も皆の喜ぶ顔が見たいから、怖くてもまた頑張ろうと思えるのだった。





 レースから一夜明け、厩舎内で静養していたポンポコポン。そこに柏木が約束のリンゴを持ってやってきた。


「ポンポコ、体調はどうだー?ほら、ご所望のリンゴを持ってきたぞ!」


「うわぁー、ありがとう柏木くん!……ん、甘くておいしい!昨日は少し疲れたけど寝て起きたら大丈夫だったよ!」


 差し出されたリンゴスティックを齧りながら、ポンポコポンは尻尾を振って喜びを露にする。それを見た柏木は柔らかく微笑みながら、ポンポコポンの鼻を優しく撫でた。


「思ったより元気そうだね?昨日のレースは凄かったから少し心配しちゃったよ。バテバテだと思ったのに、まさかゴール前でもう一伸びするなんて思わないもんな」


 鼻を撫でたまま、柏木は昨日のレースを振り返る。ゴールまで残り百メートルを過ぎたくらいで、ポンポコポンは明らかに余力が無かった。それなのにもう一伸びしたため、限界以上に走ってしまった気がしたのだ。だが、そんな心配を他所にポンポコポンは疲れた素振りもなく元気そうに見えた。


「お、柏木くん、いらっしゃい。昨日はありがとうね。これでポンポコもオープン馬だよ!」


「あ、木山さん。お邪魔しています。いやー、昨日のレースはポンポコの頑張りが大きいですよ。もっと疲れているかと思っていたんですが、ポンポコは案外タフですね」


 ポンポコポンの様子を見に、厩務員の木山がやってきた。リンゴスティックをパクつくポンポコポンを眺めながら、木山と柏木はレース後から今日に至るまでのポンポコポンの様子について話し合った。


「じゃあ、ポンポコは放牧を挟んで次は青葉賞ですか」


「うん、昨日の調教師(せんせい)の話だとその可能性が高そうだな」



────青葉賞。東京競馬場の二千四百メートル。三歳の頂点を決めるダービーのトライアルレースであり、このレースの二着馬までに本番の優先出走権が与えられる。



父メグロマックイーンの熱視線が注がれる中、果たしてポンポコポンはダービーに出れるのか?

 運命の一戦、青葉賞まであと約2ヶ月。


少し短いですがマックイーンの息子のお話を前後編の閑話として書きました。

レースシーンが難しくて何度も書き直しましたが、いかがでしたか?

良かったと思う方はぜひ☆をつけてお知らせください。笑


次は後編、青葉賞の前後のお話です。果たしてマックイーンの息子はダービー出走権を獲得できるのか?

お楽しみに~(ФωФ)ニャオン


次回は火曜日か水曜日の更新を目指します!

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