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04 ダービー馬の勤勉なる働き①

前回のあらすじ

ジャポンのヤシロファームに到着したサンデーは歓迎を受ける。環境の変化で疲れを見せるサンデー。厩舎の隣人は一癖ある芦毛の馬だった。彼のマイペース振りに振り回されて戸惑うサンデーであったが……。

04

 年を越し、記録的な寒波に見回れたジャポンでは、各地で雪の被害が連日のニュースを賑わしていた。


 物語の主人公、サンデーサイエンスがいるヤシロファームでもあちらこちらに除雪された雪が山積みにされていた。

 寒波のピークは過ぎたらしいが、今日もチラチラと雪が降っているため、日中の放牧は早々と切り上げられていた。




「はぁー、飽きもせず毎日よく降るもんだ。ジャポンでは毎年こんな感じなのか?」


「んー、そうだね。だいたいこんな感じかなー。前にキミがいた牧場はどうだったんだい?」


 厩舎の中で隣り合う二頭は今日もまた、世間話に花を咲かせていた。


「ケンタッキーでは雪がこんなに積もった記憶は無ぇーな。」


「ふーん。ボクってさ、芦毛でも白い方でしょ?だから見た目が寒いって言われるんだよね。キミみたいな黒い毛って暖かそうだなー。ねぇ、少しでいいから譲ってくれない?」


「おう、いいぞ……って譲ったら、オレ、裸で震える羽目になるじゃねーか!!オレの毛は防寒着じゃねーからな?」


 またしても突拍子もないことをマックイーンが言い出し、それに対してツッコミを入れるサンデー。もはや二頭の間では、定番となるやりとりであった。


 ワイワイやっている二頭のもとに牧場スタッフがやってきて、サンデーに声をかけた。


「サンデー、午後から仕事が入ったようだよ。ジャポンに来て初仕事だから、頑張ってね。」


 スタッフはそう言ってサンデーの頭を撫でてから、忙しそうにその場を立ち去った。


「おー、いよいよ午後が初仕事なんだね。そっかー、キミが前に言っていた目標のためにも頑張らないとねー。」


「……そうだな。」


「ん?どうしたの?何か雰囲気が固くない?」


 サンデーの声が固いことにマックイーンは敏感に反応し、急にどうしたのかと、不思議そうに問いかけた。


「……実は、初仕事で緊張しているんだ。ここで失敗したら今後に響くだろ?絶対に成功させなきゃって思うけど、オレ初めてだから……。」


「そっかー、初めてって緊張するよね。ボクも初めての時は緊張したなぁ。キミも事前の講習は受けてるんだし、仕事中はスタッフの人達も応援してくれるよ。キミならきっと大丈夫だよ。頑張ってね!」


「あぁ、ありが……」


「あ!そう言えば、たまに機嫌の悪いレディがいるから気を付けてね。ボクは大丈夫だったけど、蹴られそうになった馬が前にいたらしいから。」


「……蹴られ、る?え、なんで!?」


「うん。今は蹴られないようにする設備もあるし、昔よりはかなり減ってきてるみたいだよ。でも一応、気を付けてねー」


「え、一気に不安になったんだけど……」


 マックイーンからの衝撃的な話にサンデーは目が点になった。遅れて言葉の意味を考えたが、『蹴られるって、脚でだよね?何で蹴られるの?オレも蹴られる?』と頭の中は未知への不安でいっぱいになってしまっていた。そして無情にも時間は来てしまう。


「サンデーさん、そろそろ場所を移動しましょうか。ん、どうしました?なんか複雑そうな顔をしていますが?」


「……いや、大丈夫だ。行こうか。」


 言葉少なに返事してサンデーはとぼとぼと、スタッフに案内されるまま施設に向けて移動を始めた。




────くるくるくるくる。


 サンデーはスタッフから控え室で待つように言われたが、どうにも気持ちが落ち着かない。ついには我慢できずに部屋の中をぐるぐると歩き回っていた。


「……あー、落ち着かない。マックイーンが変なことを言うからだ!不安だー!もう一度講習会の資料でも復習しておくかなぁ……」


 サンデーは持ち込んでいた事前講習会の資料を取り出し、ペラペラとページをめくる。そして、『種牡馬の仕事~初めてでも失敗しない進め方~』と書かれたページを読み返すことにした。


 きっちりと3回読み返した頃に、ドアをノックする音が響いた。『……いよいよ、か。』サンデーは資料を片付けて、深呼吸を1度行ってから扉のノブをゆっくりと回した。






 部屋を出たサンデーは、スタッフの後ろをついて歩くと、スタッフの若者はある扉の前で立ち止まった。


「サンデーさん、こちらの部屋です。今日の相手はうちの牧場にいる牝馬の中でも、得におっとりしている馬だから気楽に頑張ってくださいね!」


 ドアに手を掛け、今にも扉を開こうとしていたサンデーは慌ててスタッフの方を振り返った。


「……おっとりしているレディなのか?」


「え、えぇ。とても大人しい性格の牝馬ですが……何かまずかったですか?」


「いや!全然!まったく何もまずいことはない!大人しい、多いに結構!そうか、大人しいタイプのレディか!うん、よし!仕事してくるか!」


 先程までと打ってかわって明るい表情になったサンデーサイエンス。

 牧場スタッフの若者は、『こいつ、いきなり鼻歌を歌い始めたけど、そんなに大人しい牝馬が好きだったのか?』と、訝しげな表情でサンデーの後に続いて部屋に入って行った。

サンデーの緊張の初仕事シーンです。この辺りどう書くかすごく悩みました。センシティブな感じにはしたくないし……ということで前後半に分けさせていただきます。もう少し時間をください笑


最後のシーンは、蹴られるかも…と少しびびってたサンデーくんがルンルンで向かうところです。

そういう行為の時に突然蹴られると考えたら、この時のサンデーくんの心理に皆さん共感してもらえますよね?笑


次回はお仕事の後編です。悩んだ末にどうセンシティブを回避するのか、お楽しみに~(ФωФ)ニャオン


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☆☆☆☆☆→★★★★★にしてもいいよ 

という優しい方、★お願いしますー

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