21 朝日杯二歳ステークス③
少し短いですが区切りと言うことで(ФωФ)
前回のあらすじ
マウントフォースに乗る松木と尾藤の関係性。ホクトジュリアナのルーツが判明。
そして朝日杯のゲート開かれた。
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ガシャン!!
ゲートの音が静寂を破る。その直後、ドドドッと大地を揺らすような蹄音が響き渡った。
それと同時に歓声とどよめきが交差する。
────スタートしました!外枠、マウントフォース好スタート!鞍上の松木がグイグイと押してハナを狙います!
ピンクの帽子、トキダミュージックは出遅れ、後方からになりそうです!
抜群のスタートを決めたのはマウントフォース。逃げや先行を得意とする松木がスタートタイミングを上手く合わせた。
(よし!うまくスタートが決まったぞ!)
大一番で見事な反応を見せた相棒を心の中で讃えつつ、松木はそのまま手綱をしごいて、加速を促した。
そして戦前の宣言通り、逃げの体制に入っていった。
────さぁ注目の先行争い。先頭はマウントフォース。差を徐々に広げながら逃げて行きます。離れた二番手にニッカンソブリンとホクトジュリアナが並走。
その後ろ少し離れた四番手にトウキョウフェノマがいます。
一番人気のフジヒカリは縦長になってきた隊列の中段、六番手あたりにつけました。そして、二番人気のスノーキャプテンは何とシンガリ!最後方からの競馬になった、これは作戦か椿?
さぁ人気どころはどんな競馬を見せてくれるのか?
◇
スタート後に手綱を抑えてスーッと後方に下げていったスノーキャプテン。
対して軽快な足取りで飛ばして逃げるマウントフォースとの差は早くも十五馬身くらいの差に見えた。
これにはスタンドから見守る観客から、早くもどよめきが起こる。
『あそこから前に届くのか?』、『椿は大丈夫なのか?』。
そんな声がそこらかしこから挙がり始め、とあるファンは競馬新聞を丸めて、祈るようにターフビジョンを睨み付けていた。
────ニコーナーを回りバックストレッチに入ります。先頭はマウントフォース。七馬身ほど離れて、ホクトジュリアナ。少し遅れてニッカンソブリンです。
二馬身ひらいてトウキョウフェノマが四番手。内から黒い帽子ブイブイマシーンが続きます。
一番人気のフジヒカリはここ!六番手で変わらず。先頭まで十馬身ほどあるが大丈夫なのか?!
(ふーん、結構早いペースで逃げるやん。十馬身くらい差があるか?)
角山はしっかりと折り合っているフジヒカリの背で、コーナーを回る先行集団をチラリと見やる。
経験則から逃げている馬までの距離を推測し、仕掛けどころを思案する。
(んー、スノーキャプテンは後ろから末脚勝負か?あんまり早めに動きすぎるのもリスキーやし、楽に前の馬を走らせすぎると脚を余すかもしれんし……仕掛けどころが難しいわ)
一番人気ゆえの悩みどころを抱え、角山は周りの動向に注意を払いつつ、レースの際を探るのであった。
◇
その頃、最後方に位置取ったスノーキャプテンの背で椿は、縦長になった隊列を後方から観察していた。特に一番人気の馬がどんな乗り方をしてくるのか、強い興味を抱いていた。
(圧倒的人気やし、こういう展開になると角山騎手はすごーく凄く嫌やろな?)
普段、一番人気の馬に乗ることが多い椿は、レース中に悩まされる場面も当然ながら多い。時には失敗したり、自分以上に上手く乗られたりして敗れることもあった。
(確かに、その馬は強いと思うよ。でも、競馬ってやつは、強い馬が必ずしも勝てるとは限らんからねぇ)
『何番人気だろうと勝ち筋があるなら、それを求めて騎乗するのが一流騎手である』
椿は幼い頃から、ターフの魔術師と呼ばれた父・宗一郎の背を見て、騎手のなん足るかを理解していった。決して多くは語らなかった父だったが、騎手になってみて、その凄さがより実感できた。
椿の目標の一つに、──自信と父親の関係を『椿宗一郎の息子』ではなく、『椿航の父親』と世間から認識されるように活躍し続ける──というものがある。
若き天才と呼ばれる現在でさえ、椿に取ってはまだまだ精進が足りていないと思っていた。そのための分かりやすい結果として、未だ誰も成し遂げていない国内GⅠ完全制覇を初めて達成した男になろうと決めていた。
今日、スノーキャプテンと走る朝日杯もまだ勝った事がないGⅠの一つであった。
そのため椿は、『せっかくだから、今日初勝利をもらっておこう。圧倒的一番人気を負かしての栄冠は、さぞ甘美な味やろなぁ』と密かに狙っていた。
────マウントフォースが先頭で残り八百のハロン棒を通過!タイムは四十五秒九!速いペースで逃げます。
八馬身ほど離れてホクトジュリアナが単独二番手。この辺りから差を詰めていくか?三番手のニッカンソブリンやや後退。差がなく黄色い帽子、トウキョウフェノマ上がっていった。今日は天までかけあがれるのか?
二馬身空いてブイブイマシーン。その外にフジヒカリと鞍上の角山。ようやくここでフジヒカリがじわりじわりと差を詰め始めたか?
先頭はまもなく三コーナーに向かいます!このまま前を逃がして大丈夫なのか?!
◇
「少しずつ差を詰めていくで!」
残り八百メートルを切り、最後方に控えていたスノーキャプテンに椿が声をかけると、白い芦毛の馬体が躍動を始める。
それはまるで限界まで引き絞った弓の弦を放した時のように、一本の矢が解き放たれた。
何とか書けました。
物語はいよいよクライマックスへと向かいます。
次週の更新は体調不良のため猫休みさせていただきます。
私、元気がでません。。。




