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死を招くスクープ写真

作者: 白音 藍奈

スクープとは、いち早く情報を届けるメディア関係者たち向けの一種の競技である。

 「これだ。この情報があれば俺はいける!」俺は思わず唸った。それは五月一日の事だった。


 俺は32歳、フリーのカメラマンをやっている。狙うのは主に政治家のスクープだった。政治家の不祥事をカメラに収めるその瞬間がカメラマンの俺にとっての全てと言ってもよかった。俺は以前から狙っていた政治家Kと某宗教団体との繋がりを密かに狙っていた。そして、Kがある場所で密会するという情報を得た俺は、その場所を張っていた。そして、そのKと宗教団体の代表Sとの密会の現場をカメラに収めたのだった。


 五月三日。俺はその映像を週刊誌Rに持ち込もうとした。そして、タクシーで週刊誌Rのある会社へと向かう際中に異変が起きたのだった。タクシー運転手が言った。「この先は行けないですね。別の道を行きましょう。」俺は呆気にとられた。「どうして、駄目なんですか?」


 運転手は「道の途中で警察官が立ってて、通行止めの案内が出てるようです」と言った。俺は「事故か何かか?」と思ったが、運転手は俺が全く想像もしない事を口に出した。「どうやら、この先で暴動が起きているようですね。」俺が「暴動?」と言う言葉に続いて運転手が続けて言った。「ええ、市民が暴動を起こしているようです。警察はそれを止めようとしてるみたいで」


 なぜそんなことが街中で起きているのだろう?運転手がラジオを付けた。すると暴動の事が流れていたのだ。「政治家Kと某宗教団体の代表Sとの癒着が発覚し、それを知った市民たちが怒り街中で暴れている模様です。この事実が週刊誌に載る前に、テレビ局にリークされた模様で、癒着の現場をスクープ撮影したカメラマンの男性は既に殺害されており、警察は事態の収拾に動いています。事態を重く見た政府は後程、首相官邸で会見を開くと見られており、事態の収束の見通しは立っていません。」


 ラジオから流れてくる音声を聞きながら俺はどうしていいのか分からなかった。運転手が言った。「スクープで現実が良くなればいいんですがね。現実は逆になるということですよ。」俺は「そ、そうですね。」と言葉に詰まった。「あなたが撮影したスクープ写真、本当にこのまま週刊誌Rへ持ち込んでもいいんですか?」という運転手の言葉に俺の顔は真っ青になる。「どうして知ってるだ?あんたは一体?」


 「私ですか?私はあなたが狙っていた政治家Kの秘書ですよ。さっきラジオで言ってましたよね?スクープ写真を撮ったカメラマンは既に殺害されていると。」秘書が言い終わると同時に、右手に持っていた拳銃を俺に向けた。そして、彼は引き金を引いた。それは一瞬の事だった。

五月十三日、海上に遺体が浮いているのが発見された。死後10日程経っているとみられる。後に身元が判明し、五月二日から行方不明になっているフリーカメラマンの男性と断定された。所持品などが無く、警察では彼が何らかの事件に巻き込まれた可能性が高いとして捜査を行っている。

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