第4話 バツ2令嬢、初めてデートを楽しむ
第5話は、19時5分頃アップします。
1週間後、私はジョナルド卿に、もう一度会う事になった。
鏡の前で、ジェーンに髪を梳いてもらいながら、化粧をする。
「ああ、お化粧のノリがイマイチな気がするわ。なんとかならないのかしら!」
私は、いらいらしながら化粧を直す。
「お嬢様、昨夜からそわそわして夜更かしなさるからです。そんなに今日が楽しみでしたか?」
ジェーンは、表情を変えずに言った。
「馬鹿言いなさい!あんな熊髭男に会うのが楽しみなわけがないでしょう!むしろ、身の危険を感じて恐怖で眠れなかったのよ!」
私は、反論する。
「あらあら、それならば、お断りになれば良かったのに。素直じゃございませんね」
ジェーンは、呆れた顔をする。
「ふん!お父様の顔を立てているだけですわ!」
私は、拗ねた。
「先日は、まことに申し訳ありませんでした!今日は、新しい馬車を借りてきております。風の当たらぬ場所に、ご案内します。お知らせした通り、昼食にお付き合い下さい」
私の家に迎えにやってきたジョナルド卿は、深々と頭を下げた。
「立派な騎士様が、そんなに女性に頭を下げていては逆に権威が落ちますわ!あなたは、私の見合い相手なのよ!私の格まで低く見られます。頭を上げて、ちゃんと私をエスコートなさい!」
あまりにへりくだった態度に、私は軽く彼を叱る。
「はっ!こちらに!」
彼のエスコートで、前よりは新しい馬車に乗り込む。
するすると走り出した馬車の乗り心地は、前より随分とましだ。
「いかがでしょう、この馬車は?」
相対して馬車の中で座るジョナルド卿が、私の顔色を伺う。
「まあ、この馬車ならいいんじゃない」
横を向きながら言った。
私の家の高級な馬車と比べると、ずいぶんと狭くて乗り心地も悪い。
しかし、彼は安くない金を払って馬車を用意したはずだ。
さすがの私も、悪く言う事はなかった。
馬車は、私達の国、イーリーン王国の首都ロージアンに向かった。
有力な貴族であるアースキン伯爵家の領地は、首都から近い。
ジョナルド卿の領地も、まあまあ近いのだが、うちと比べるとささやかな広さしかないはずだ。
馬車は、首都の中心にある、有名なレストランの前に止まった。
四階ある建物で、さらに高い時計塔の側にある景色の良いと評判の店だ。
「ここは…」
馬車を降りて、そのレストランを見上げた私は、言葉を詰まらせた。
ここは私にとって思い出深い場所だ。
「馬鹿は高いところが好きで申し訳ないのですが、ここの最上階の席を予約しております。この辺りでは有名な高級店ですが、気にいっていただけると幸いです」
ジョナルド卿が言った。
「とにかく、参りましょう」
早くその思い出のレストランに入ってみたくなった私は、そうジョナルド卿に言った。
「さあ、こちらに」
ジョナルド卿が、私の横に立ち、エスコートする。
「ジョナルド卿と、お連れのレディ・シェイラ様。お待ちしておりました」
燕尾服を着た上品そうな50代くらいの店員が、私達を迎え入れる。
中は、落ち着いた赤茶色の内装。
あの頃と何も変わっていない。
ここは、私と最初の夫である第二王子イブラーク様の思い出のレストラン。
よくここに連れてきて下さったのを思い出す。
イブラーク様と私は、子供の頃からの許嫁。
いつまでも、その幸せが続くものだと思っていた。
私とジョナルド卿は、予約されていた最上階の窓際の席に座る。
「ここのレストランはローストビーフが絶品なの。クリームをたっぷり入れたマッシュポテトと一緒に食べると最高なのよ。山ワサビを添えれば完璧!それに、揚げた白身魚にビネガーをかけたものも美味しいわ」
私は、楽しかった王子との食事を思い出して言った。
「そうですか、それは是非試してみたいですね。同じものを注文しましょう」
ジョナルド卿は、笑顔で私が言ったメニューを注文してくれた。
ローストビーフとマッシュポテト、白身魚のフライがテーブルに並ぶ。
「確かに、これは最高だ」
ジョナルド卿は、それらを口に運んで美味しそうに食べて言った。
「そうでしょう。昔と変わらない味だわ」
私は、それに笑顔で答える。
初めて、二人の話が弾む。
彼の騎士としての任務や、私が花を育てたりドライフラワーや造花を作ったりする事が好きな事。
たわいもない話で盛り上がった。
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