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第3話 バツ2令嬢、熊髭騎士の前で初めて泣く

第4話は、15時5分頃アップいたします。

「…」


 屋敷に戻り用を足した私は、ジョナルド卿と向かい合って応接室のソファーに座り、ジェーンの淹れてくれた暖かい紅茶を飲んでいた。

 二人共、無言の時間が、しばらく続く。


「ジョナルド卿は、私と結婚した場合、子供についてどう考えておいでですか?」


 どう答えようと、私は不機嫌になる。

 そう分かっているのに、この質問をしてしまった。

 誰が相手でも、この事は、どうしても気になってしまうのだ。


「ははは、まだ想像も出来ませんが、自然に任せればよいと考えています。出来ればよし、出来なくとも何も気にしません。こればかりは神の授かり物です。その様な事は気にしていませんので。私が、シェイラ様をお慕いする気持ちに変わりはありません」


 ジョナルド卿は、恥ずかしそうに下を向いて言った。


「はい…」


 彼が、そう言った瞬間、私の目から涙がポロポロとこぼれた。

 とめどなく溢れてきて止めようがない。

 嬉しいような恥ずかしいような、なんともいえない感情が沸いてくる。


「あー!申し訳ない!会ってすぐに、お慕いしているなどと失礼な事を!お許しを!」


 彼が、席から立ち上がり、あたふたとする。

 まったく、的外れな事を言っている。


「すいません、みっともないところを見せて…気にしないで下さい」


 私は、ハンカチで涙を拭いて、作り笑顔を見せた。


「わたくし、もう一度、花を摘みに参ります」


 そこから逃げ出すように離席する。


 子供が出来ない私は、どの家に行っても役立たずと言われた。

 夫の両親にも言われたし、口に出さなくても子供が出来ないとなれば夫も雰囲気で失望しているのが分かった。

 そして二度の離縁。


 ジョナルド卿は、そんな事は関係ないと言う。

 しかし、それは彼だけの話。

 きっと、彼の両親は跡継ぎを欲しがっているはず。

 この縁談も、また不幸な終わりを迎えるに決まっているのだ。


「…」


 やっと涙の止まった私は、席に戻った。


「レディ・シェイラ!今日は、本当にすいませんでした!次は、もっと気をつけます。僕は、この縁談、本気で考えています。是非、もう一度チャンスを下さい!」


 席を立ったジョナルド卿は、私に深々と頭を下げる。


「さあ、どうしようかしらね」


 私は、横を向いて冷たく言った。


「お嬢様…」


 横にいたジェーンが、思わず私に何か言いそうになる。

 しかし、何とか堪えてくれた。


「とにかく、今日はここまで。お帰り下さい。お返事は、後日知らせます」


 私は、ぼそりと呟く。


「分かりました!良い返事を是非に!」


 ジョナルド卿は、そう告げると去っていった。




「で、お嬢様、今日のお見合いは、いかがでした?」


 ジェーンが私に聞いてくる。

 子供の頃から知っていて、私と親しいジェーンは、こんな話も出来る相手だ。


「何って最低よ!あいつ、女性の扱いに全然慣れてないわ!あれは、まともに社交界に出た事が無いわね!無神経極まりない!」


 私は、そう言い放つ。


「そうですか、私には優しくて誠実な方に見えましたが。社交界に疎いのは軍属の方なら仕方ないかと」


 ジェーンが、ジョナルド卿をフォローする。


「あー!全然駄目!ダメダメよ。馬車はボロボロで貧乏丸出し。何より女性のエスコートがなってないわ!オロオロするばかりで使えない!アースキン伯爵家の令嬢である私には、まるで釣り合わないわ!」


 私は、そう、まくし立てる。


「しかし、お嬢様。二度の離縁に年齢も考えると、贅沢が言える状況ではありませんよ」


 ジェーンが、現実を突きつけてくる。


「そうよ…私は役立たずの女なの。寄ってくる男は、伯爵家の権威が欲しいだけ。私に子供が産めなくても、どうせ妾に子供を産ませればいいって考えている男ばかりなのよ…ううう」


 私は、くやし涙を流し始める。


「今さっきまで、強気で我儘を仰っていたのに、急に弱気になられて…。お嬢様は、感情の起伏が激しくなるばかり。お可哀想に」


 ジェーンが、席に座って泣く私を抱きしめる。


「えっぐ、えっぐ」


 私は、ジェーンの胸で泣き続けた。




「ジョナルド卿との見合いは、どうだった?よい男であっただろう」


 後日、応接室に呼び出された私は、父に見合いの結果を聞かれた。


「はあ、まことに優しくて誠実な方でした」


 私は、虚空を見つめ、棒読みの様な口調で答える。


「で?見合いは続けるのか?よもや断るとは言うまいな!」


 父が私に念を押す。


「はい、もう一度お会いします…」


 私は、そう呟いた。

 嘘ではなく、もう一度彼に会ってもいいと思い始めていた。

 理由は、自分でも分からない。

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