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第15話 隣国に潜む悪意

 コーデニスとジャスリンは、隣国の都市に逃れていた。

 現在、高級アパートの1室に、彼等はいる。


「まったく、忌々しい!まさか、死んだ人間が生き返るなんて!」


 ジャスリンは、ソファーで歯ぎしりしながら悔しがった。

 実家の屋敷の門の前にジョナルド卿の遺体を転がし、遠い場所の物陰から望遠鏡でシェイラの悲しむところを楽しもうと見ていたのだ。

 しかし、見せられたのは、ジョナルド卿を生き返らせるというシェイラの奇跡。


 まずいと思った彼等は、すぐに国を出た。


「親父も隠れて金を送ってくれるし、この国でも贅沢な暮らしが出来る。そんなに悔しがる必要はあるまい」


 向かい合ってソファーに座るコーデニスが、ワイングラスを片手にジャスリンをなだめる。


「私は王族の妻だったのよ!王子はカスだったけど、あの充足感を、こんなところで感じられるものですか!」


 ジャスリンは、手に持っていたワイングラスを、絨毯の上に叩きつけた。


「チャリーン」


 ワイングラスが割れて飛び散る。


「おぎゃー!おぎゃー!」


 近くで、ゆりかごに入れられていた赤ん坊が泣きだす。

 しかし、二人は、放ったままだ。


「ようするに、今度は二人纏めて始末すればよいのだろう?時を待てよ。俺に考えがある」


 コーデニスが、不気味な笑顔を浮かべる。


「時間をかけて、あの女を苦しめたかったけど、仕方ないわ」


 ジャスリンは、そう言うと、テーブルの上のワインボトルを掴んで、ラッパ飲みする。


「おいおい、腹に子供がいるのに、無茶をする奴だ」


 コーデニスが、呆れた顔をする。


「ふん!こんな、お荷物。もう、どうでもいいわ!あの女に出来ない事をやって、見せつけてやりたかっただけなのよ」


 ジャスリンは、そう悪態をついた。


「今度は、城ごと潰してやる。これで、あの夫婦もライオット家も終わり。ただ、この計画には時期が大事だ」


 コーデニスは、計画についてジャスリンに説明を始めた…。




「あー、やっぱりジェーンの作ったアップルパイは最高よ!」


 一仕事終わった私は、ジェーンの作ったアップルパイを食べながらアフターヌーンティーを楽しんでいた。


「お嬢様、そんなに食べたら太りますよ」


 ジェーンが、私をたしなめる。


「もう、そんなやわな生活してないから。これくらい平気よ」


 私は、そう言って大笑いする。


「本当に、たくましくなられました。お嬢様が元気になって嬉しいです。二回も離縁されて、精神的に弱った、お嬢様は見ていられませんでした」


 ジェーンが、目頭を押さえる。


「いやーね!そんなに弱ってたかしら。確かに変な精神状態だった気もするな。でも、考えてみれば甘えてたのよ。女は、男に頼ってばかりじゃ駄目。自立しないと」


 私は、ついついマウントプレイに走る。


「お嬢様、外で働いた事も無いのに大きな事を言いすぎです。少しは、旦那様に感謝して下さいね。それに、お子様もまだ可能性がありますからね」


 ジェーンが、困った顔で言った。


「あははは、無理無理。最近昼の仕事で疲れちゃって。ジョナルド様も遠征が多いし、そっちの方は全然」


 私は、大笑いしながら、アップルパイをパクつく。


「そんなつもりでは、出来るものも出来ません。今夜から精のつくものを、特別に用意しますから!」


 ジェーンが、目をつり上げて言った。


「うう、私だって、欲しくなくて作らなかったわけじゃないのよ。出来なかったんだから仕方ないわ」


 私は、急に悲しくなって泣き出した。


「すいません。お嬢様の気にしている事を。私が無神経でした!」


 ジェーンが、はっとなって私を抱きしめる。


「でも、お嬢様には問題が無いと思います。本当に愛し合う旦那様との間になら、きっと出来ます。信じましょう」


 ジェーンが、そう耳元で囁いた。


「私だって、あきらめたわけじゃないの。でも、プレッシャーはかけないで。そっと見守っていてほしいの」


 私は、そう言った。


「分かりました。もう二度と、この話はいたしません」


 ジェーンは、そう約束してくれた。

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