リアル
俺の学校からの帰り道は駅から山の方に真っ直ぐに伸びる一本道。
山の麓の集落に家があるんでこの道を通らざる得ない。
一本道の両側には野原が広がっている。
この野原、幽霊が出るんだよ。
この周辺は平安時代末期から、鎌倉室町戦国時代にかけて幾度も支配者が代わった。
当然の事だけど、何度も戦が起こり勝者が支配する地に代わっていく。
子供の頃からブオー! ブオー! って法螺貝の音や、鬨の声、刀と刀を打ち付けあう音、沢山の人のいがみ合い罵倒し合う声が野原のあちらこちらから聞こえて来る。
音だけじゃ無くて、デュラハンみたく小脇に自分の生首が入った兜を抱えた鎧武者の姿や、互いに組み合い転げ回っている足軽や雑兵、相手の首を掻き切って掻き切った首を頭上に掲げ勝ち名乗りを上げる武将などが、バッチリと見えるんだ。
だから俺はこの道を通るときはそれらを見なくて済むように、上を向いて歩いている。
等間隔で道の脇に電柱が立ち電線が伸びているんで、その電線を真上に見ていれば道から外れる事は無いからな。
今も上を向いて早足で歩く俺の足下から声が聞こえる。
「や、止めろ、助けてくれ」
「お前みたいな親は目障りだ、サッサと死ね! 死ね! 死ね!」
ドス! ドス! ドス!
「グ、ぐあぁぁーー!」
聞こえているのは骨肉の争いかな? ホントこの地での戦は何でも有りだな。
一本道を抜け顔を戻し集落の中に入り家のドアを開けたら、廊下にお袋がいたんで声をかける。
「ただいまー」
「おかえりなさい。
ヒィ! あんた! 何処か怪我しているの?」
え? って思いながら、お袋が指差すワイシャツに目を向けた。
赤い点じゃ無い、点点と血がついてワイシャツを汚している。
さっき野原で聞こえていた声って、もしかしてリアルな声だったの?
あれーぇ?