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 食後のお茶とデザートとして焼き菓子をいただいているところで、笑顔のセイナーダさんがしみじみとこちらを見る視線を感じました。


「本当に、不思議ね。」


 ポツリと言い出したセイナーダさんは少しだけ寂しげな表情を覗かせました。


「あれ程、他をねじ伏せるような荒々しい魔力を纏ったレイナードが、中身がレイカちゃんに変わった途端に透き通るような透明で綺麗な魔力に変わるなんて。」


 セイナーダさん、かなり見える人なんでしょうか。


 魔力が変わった事を察知したのは、これまでコルステアくんとクイズナー隊長だけだったんですが、それもこんな色々はっきりと確信を持って言われた訳でもありませんでした。


「私ね、本当は生まれたばかりのレイナードの母代わりにもなって欲しいからって主人と再婚したのに、レイナードの魔力に当てられてどう頑張っても気分が悪くなって近寄れなかったのよ。」


 突然始まった告白に、何と答えて良いのか分からなくて目を瞬かせてしまいます。


「昔から魔力感知能力は高いほうだって分かってたけど、主人だって魔力の高い人だし、彼のことは何ともなかったのよ?」


 魔王の魔力、相当だって事ですね。


「ええと。私はレイナードさん本人じゃないのでお母様との関係については何とも言えないですけど。レイナードさんは今の生き場所を選んで出て行ったんですから、無事に独り立ちしたと思っていいんじゃないですか?」


 レイナードが追い詰められた原因の一端をセイナーダさんが担った可能性は否定出来ないですけど、何はともあれ後戻り出来ない状態で今があるので。


「まあ、今の私の境遇に同情していただけるなら、ここで生きて行くのに色々と手を貸して貰えると助かりますけど。」


 レイカとして言える事は、温度はないですがこれくらいじゃないでしょうか。


「そうね。可哀想に母親には恵まれなかったけれど、あの子は巣立って行ったのよね?」


 自分に言い聞かせるように言うセイナーダさんには、少しこちらも同情しないでもないんですが、無責任にレイナードは恨んでないですよとかはやっぱり言えないですから。


「それじゃ、やっぱりレイカちゃんとは仲良くしたいわ。勝手な罪滅ぼしだとしても、沢山関わって甘やかしてあげたり、構ってあげたりしたいの。許してくれるかしら?」


 少しウルウルお目めで言われると弱いですね。


「ええと、私見た目より年行ってるので、ちょっと可愛げ足りないかもしれないですけど、それでも良ければ。」


 セイナーダさんの見た目はあちらでの年齢と同じくらいに見えるので、これで親子気分はちょっと苦しいかもしれません。


「そうなのね? それなら、私とレイカちゃんなりの親子関係を少しずつ作って行きましょう? それはそれで、姉妹みたいで楽しいかもしれないわね。」


 確かに、並んだら美人姉妹で通りそうな外見ではありますね。


「はは、心強いです。宜しくお願いします。」


 少しだけひきつり気味に返したところで、メイドさん達が持って来た衣類をベッドに広げ終わったようでした。


「さあそれじゃ、貴方達は出て行ってくれるかしら?」


 コルステアくんやハイドナー、部屋にいた男のお付きの人達に向けてセイナーダさんが声を掛けて追い出してしまうと、室内にはやけに気合いの入った女性だけが残りました。


 これは、もしかして、世に言う着せ替え人形の時間ではないでしょうか。


「あの、お母様? ヒヨコちゃんの餌やりの時間になったら即行で中止になりますからね?」


 ヤル気満々のセイナーダさん達に水を挿すのは何ですが、そこは譲れないのできちんと主張しつつ、剥ぎ取られた動き易めのエスティルさんから借りたワンピースの行方はしっかり目に留めておきます。


 お母さん襲来の連絡があったら、ささっとあれに着替えて飛び出して行く必要がありますからね。


 そんな訳で、中断を挟みつつも始まった着せ替え人形状態は、それから陽が傾くまで続きました。


「ええと、つまり。あと足りないのは動ける男装服一式ね。飾り過多の乗馬服ではダメだと。」


「ガシガシ洗える汚れても良い服でお願いします!」


 これから訓練に参加する事を想定して、訓練着もおねだりする事にしてみました。


「えぇ? レイカお姉様が着るんですもの、デザインとか装飾とかやっぱり色々こだわらなきゃ!」


 熱量多めのロザリーナさんの発言が割り込みますが、彼女一体何を目指してるんでしょうか?


 こちらは普通に地味にそんなに目立たずに、後方から魔法支援の第二騎士団ナイザリーク女騎士を目指してるんですが。


「そうよねぇ。でも、あんまりお色気路線は、騎士団の中で血みどろ争奪合戦とかになっても困るし。素材を活かして、清貧な装いでも光る美貌と個性で行きましょうか。」


 もはやセイナーダさんですら何を求めてるのか分からなくなってきました。


「あのー、普通でお願いします、普通で。」


 何となく無駄を悟り始めましたが、主張は大事です。


 一応、言っておきましたからね。


 そんな訳で、普段着る服には困らない状態になりましたが、それよりも実はかなり有効な収穫がありました。


 午後の着せ替え途中で、魔法使いの塔からマニメイラさんを始め、お会いしたことのないような人も含め、ゾロゾロと魔法使いさん達が訪ねて来たのですが。


 コルちゃんの魔力の調査とヒヨコちゃんの観察から、レイナード改めレイカの精密検査を問答無用で始めようとしたところで、セイナーダさんのツルの一声、頂きました。


「あなた達、ランバスティス伯爵家を敵に回すおつもりかしら? レイカちゃんに協力して欲しいのなら、当然ランバスティス伯爵家に正式に許可を求めるのが先ではなくて? ランバスティス伯爵家ウチの可愛いレイカちゃんに、一体どういうつもりかしら?」


 室内の温度が確実に何度か下がった瞬間でした。


 そもそもセイナーダさん、元々かなりの魔法の使い手だそうで、ハイブリッドのコルステアくんを見ても明らかですが、魔法使いさん達も無碍に出来ない人だったみたいです。


 これからは、このお母さんが盾になってくれる構図が出来上がった訳で、これは大収穫ですね。


 すごすごと引き下がって行った魔法使い達を見て、かなり溜飲が下がりましたよ。


 この調子で保身しつつ、ここで問題なく生きて行く基盤を築いて行こうと思います。

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― 新着の感想 ―
セイナーダお母さま、カッコいい! レイカさんも数話前のお父さまと団長殿下に告白?する辺りからのトントントンッと流れる様な胸のすく説明が非常に気持ち良いです。 シゴデキ女性良いわぁ〜。
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