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「おねーさま、おはよーございまーす。」


 やる気のない嫌味混じりの声と共に開いた会議室の扉から、いつも通りのブスッとした顔のコルステアくんとマニメイラさん、その後ろからシルヴェイン王子が入って来ます。


「レイカ殿、変わりはないか?」


 シルヴェイン王子の気遣い溢れる言葉は、室内のどんよりした空気から浮きまくったものでした。


 トイトニー隊長のうんざりし過ぎて死んだような顔と、カルシファー隊長の現実逃避したそうな遠い目と、クイズナー隊長の少し困ったような顔が、指人形から聞いた事情を話して聞かせた結果の表情です。


 取り敢えず、未分化な魔力を聖なる魔力と普通の魔力に振り分けられるかなり特殊な能力持ちだという事は誤魔化しつつ、コルちゃんが聖なる魔力を取り込んで聖獣化した事を報告しておきました。


 因みに、元の姿に戻ったのは、聖なる魔法の一つの還元によるものだそうです。


 これで、コルちゃんはどうやら少し大きくなった真っ白な大人のキツネさん姿と小狐の元のコルちゃんの姿を自由に変える事が出来るようになったみたいです。


 ただし、どちらの姿の時も、聖なる魔法しか使えないようです。


 それと、レイナードとして施した結界魔法は解かれてしまったので、無限もふふわ化魔法は発動しなくなってしまいました。


 仕方ないので、これからは小まめなブラッシングやお手入れと毛艶が良くなる食事とかでもふふわを保つ事にしようと思います。


 そして、目に見えない契約未満な魔人の指人形は、聖なる魔力を持つレイカと契約する為に生まれて来た特別な魔人だと説明しておきました。


 魔力量が異様に多い事、特にマユリさんより多い事は黙っておく方向で。


「何があった?」


 その空気に敏感に気付いてくれるシルヴェイン王子、流石です。


「あ、サークマイトが、ちょっとだけ巨大進化してる・・・。」


 ぼそっと言い出したコルステアくんの一言に、マニメイラさんとシルヴェイン王子がざっとこちらを向きました。


 因みに今のコルちゃんは、白い聖獣様モードです。


「えっ? ちょっとだけって、どういう事? てゆうか、早くない? その上、何で会議室ここにいる訳?」


 マニメイラさんが半眼でこちらに強い目を向けて来ます。


 そこからまた、仕方ないので説明を繰り返す事になりました。


「という訳で、もう聖女と聖獣を前面に押し立てて、第二騎士団ナイザリークにレイカとして再就職しようと思いますので、宜しくお願いします!」


 話しの終わりと共に、どさくさ紛れに宣言してみると、途端にばっと注目されました。


「は? 再就職?」


「聖女が第二騎士団ウチですか?」


 トイトニー隊長とクイズナー隊長から突っ込みが入ります。


「何言ってるんですか? 修復魔法持ちの聖女、滅茶苦茶役に立ちますよ? 現場で怪我しても治し放題。それに還元魔法のアレンジでかなり色々行けると思うんですよね。」


 普通の魔法もそれに付け加えれば無敵だと思うんですが、それはこれからはこっそりやろうと思います。


「何それ! 聖なる魔法の還元で色々? ちょっと面白そうじゃない!」


 食い付いて来たのはマニメイラさんですね。


 でも、そちらには寄って行く気はありませんからね?


「団長には、責任持って私の魔力開発やら開拓に付き合って貰えますよね?」


 強気でここは押して行きますよ?


「ちょっと待ってよ。魔力開発とか開拓って、どう考えても塔に来た方が良いじゃない!」


 またもや首を突っ込んで来るマニメイラさんからは、必死に逃げますよ!


「あ、塔は無理です。私、鬼イケ推しなので。モチベーション上がる環境大事ですから。」


 いけしゃあしゃあとあちらの言葉使って心にもない事を言い募ってみせますが、何となく伝わった様子で、場に何か残念そうな空気が流れます。


「・・・オニイケオシとは、何だ?」


 シルヴェイン王子ご本人からの訝しげな問いには、ちょっと困りますね。


「えーっと、ちょっと性格厳しめな美形さんに、きゃあ素敵って言いたい人、みたいな?」


 あれ? 説明難しいですね。


 そして、これはちょっと苦しかったかな?


 改めて言及すると、キャラに合ってないことモロバレですね。


 案の定、マニメイラさんが物凄く疑わしそうな顔になりましたよ。


「あー、とにかく。シルヴェイン王子に魔法訓練はお願いしたいなと。理由はともかく、その方がやる気が出るからって事で。」


 真面目に言い直すと、シルヴェイン王子が驚いた顔になって、マニメイラさんがますます疑わしい顔になりました。


「はい? 国を守る騎士団に、そんな邪な目的で加わろうとか、何考えてるのかしら? 第二騎士団ナイザリークの皆さんにも迷惑じゃないかしら?」


 マニメイラさんも真面目な方向からのお説教になってきました。


「あのですね? ランバスティス伯爵家のレイナードは第二騎士団ナイザリークに所属の騎士だったんです。訳あって女の子になっちゃいましたけど、普通の騎士団ならともかく、対魔獣魔物戦の魔法支援の為に魔法を使える騎士を育成している第二騎士団ナイザリークなら、女騎士として騎士団の皆さんのお役に立てるかもしれないなら、これまでの恩返しとか罪滅ぼしとかも、出来るんじゃないかと思うんですよ? それは、マニメイラさんが口出すことじゃなく、私と団長の気持ち次第だと思いませんか?」


 正論には正論で返しますよ?


 精一杯真面目な顔で言い返してみると、ようやくマニメイラさんが諦めたように首を振って目を逸らしました。


「罪滅ぼしや恩返しについては、考えなくて良いが。確かに、聖なる魔法の支援は、第二騎士団ナイザリークには有難い戦力になるかもしれない。しばらく様子を見て検討してみても良い。女騎士、か。」


 シルヴェイン王子が真面目な顔で考え始めましたが、隊長達は慌てたような焦ったような顔になっています。


「団長!」


「殿下、騎士団の風紀と規律の事を考えて、是非慎重なご判断を!」


 カルシファー隊長とトイトニー隊長が慌てて言葉を挟みますが、クイズナー隊長は思案するような顔で腕を組んでから、こちらの視線に気付いたのか、何処か面白そうな笑みを口元に浮かべて微笑み返してくれました。

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