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 指人形との話は長引いていますが、トイトニー隊長を待たせてでも、これは掘り下げておく必要があると思うんですよ。


「ねぇ、私の魔力が強い?大きい?のって、レイナードと入れ替わった所為?」


「ああ、そうでございますね。入れ替わりは等価でなければなりませんから、身体の主殿と同等の量質の魔力を我が君が持つのは当たり前の事でございます。」


 ちょっとまた冷や汗が滲んできましたよ?


「マユリさんは?」


「ああ、この国にいる聖女殿ですね? あの方は異世界から身体ごとお越しになったので、渡る際の取り決めに従って魔力を与えられています。」


 取り決めって何でしょうか?


「はい? マユリさんは誰かと取り決めをしたって事? 神様とか?」


 異世界転移系の話って、神様から希望を聞かれたりするパターンの話しも確かにあったような気がしますね。


「そんなようなものですね。世界の法則や成り立ちを壊さないように慎重に調整が行われるようですね。」


 成る程、チート過ぎて世界の成り立ちを壊すようじゃ、異世界から人なんて呼べないですよね?


 えっと、それならレイナードの存在はどうなんでしょうか?


「ですから聖女殿も中々の魔力をお持ちですが、我が君程ではありません。しかも、我が君のように未分化な魔力を他の系統の魔法に転用は出来ません。聖なる修復の力としてしか使えないんです。」


「え? 何で? 私だけ転用出来る理由って、これがレイナードの身体だから?」


 指人形が良い笑顔になりました。


「左様でございます。我が君は、この世界で今一番特殊で貴重な上、希少な魔力の持ち主です。」


「・・・それって、エセ賢者にとっては凄く美味しい素材になってるんじゃ。」


 遠ざかった筈の危険がまた戻って来たのは何故でしょうか。


 やっぱりありましたね、落とし穴。


「ご安心下さい! もうその身体は元の持ち主殿との繋がりは切れ、正式に我が君のものとなってございます! 」


「・・・安心、出来るか!!」


 思わず吠えてしまいました。


 そこから息を整えて、トイトニー隊長に目を向けます。


「トイトニー隊長。何だか雲行きが怪しくなって来ました。」


「ああそうだな。魔獣共を連れて会議室に来い。その目に見えないのもな。」


 それはもうロートーンのトイトニー隊長に、今日も平和は訪れそうにないと確信を持ちました。


「オンサーさん、エスティルさんに一緒に行けなくなりましたって伝えて貰えますか?」


「お、おう。まあ、気い落とすな。良く分からんけど、俺はお前の味方だからな。」


 そんなオンサーさんの根拠のない慰めが、それでも身に沁みて目元がジンとしました。


 手を広げるとピョンと飛び乗って来たコルちゃんとヒヨコちゃんを抱えて指人形に目を向けました。


「着いて来て。他の人に見えるようにする事って出来るの?」


「我が君が契約して下されば。」


 ずっと繰り返しているこの言葉が来ました。


「? 私以外と契約する事も出来るなら、他の人にも姿見せられるんじゃないの?」


「我が君が特別なように、私めも我が君としか契約出来ない特別仕様になっております。」


 またうるっとした目を向けられて、及び腰になってしまいました。


「え? そんな話聞いてないよ?」


「はい。魔人が主人と決めた方に契約を強要する事は出来ません。私め以外の魔人ならば、それで契約が成らずとも他の主人を探し求めれば良いので。」


 何処かしょんぼりと答える指人形に、ちょっと同情する気持ちになってしまいました。


「ええと、そもそも指人形は何で私としか契約出来ない事になってるの?」


 その問いに、指人形はチラッとこちらを覗って言いにくそうに切り出しました。


「我が君は、元身体の主殿が禁呪を用いてお呼びした方です。そもそも禁呪というのは、世界の根幹を揺るがすかもしれないから禁止されている魔法でございます。特にこの度使われた禁呪は、元身体の主殿程の魔力がある者にしか使えない。つまり、実質使える者がいないとされる程の魔法です。・・・我が君が好き勝手すると、世界が壊れるかもしれません。そこで、私めがお導きする為、生まれたのです。」


 いや〜、ホント聞きたくなかったですね。


 やっぱり、滅茶苦茶厄介な存在なんじゃないですか。


 事によると、レイナード以上に?


 指人形、監視員って事ですね。


 これは、ちょっと人様には内緒の方向にしといた方が良い話ですね。


 指人形との契約は、これはもう避けられないって事でしょう。


 避けると他の手を打たれるか、淘汰の対象に認定されたりとか、嬉しくない未来が待っていそうです。


「分かった。時期は未定だけど、その内契約することも検討するとして、詳しい事情は誰にも話さないこと。これを守るなら、契約しても良い。」


 パッと指人形がこちらを見上げました。


「我が君!」


 ウルウルお目めで両手を握り締めたいつものスタイルですね。


「どうぞ、末永く宜しくお願い致します!」


 気が早いです。


 その上、末永くって結婚するみたいじゃないですか。


 あ、一生契約なら結婚するより長くって事になるかもしれませんね。


 性格の不一致とか、付き合い切れないってなったら、どうすれば良いんでしょうか。


「うーん。契約するにあたってもう一つ。外見、そのままで。」


「はい? 小さいままでは我が君のお世話が。」


「しなくて良いです。監視員は口以外出さなくて良し。」


「はあ?」


 指人形、途端に口を尖らせてスネ顔になりました。


「さて、それじゃ会議室行きますか。」


 漸く立ち上がると、その辺にいた第二騎士団ナイザリークの皆さんがさっと散っていきました。


 何ですかね。


 せっかくレイナードとしては仲良くなれたと思ったのに、また遠巻き対象に逆戻りなんでしょうか。


 残念なようなホッとするような、またレイカとしてここでの人間関係の構築は一から始まりなんでしょう。


 2匹分の運搬は、しばらく歩くと重くなってきたので、コルちゃんには隣を歩いて貰う事にして、会議室へ向かいました。

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