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朝食、無理です無理です。
またあの脂っこそうなスープ、飲んだら吐きますね。
せめて酸味足してさっぱりと飲みたいものです。
柑橘の搾り汁でもとキョロキョロ見渡すと、食後のデザート的なコーナーに、オレンジとかグレープフルーツっぽいカットフルーツがありました。
それを皿に盛って席に戻ると、不本意そうに隣に座ってくれていたケインズさんがそれに目を留めて苦い顔になってます。
「吐いた後だから食欲はないかもしれないけどな、しっかり食べないとこの後また保たずにダレるぞ。」
食事中に吐いたとか口にして欲しくなったですが、わざわざそんな忠告をしてくれるとは、本当に面倒見が良いですね。
感動したところで、にこりと笑顔を返してから、持ってきた柑橘を数カット脂っこいスープにギュッと搾り込んでやりました。
「な・・・。」
絶句しているケインズさんの隣で、早速味見です。
うーん、まあ美味とは言いませんが、飲めるレベルにはあっさりになってくれました。
ついでにパンの隣に盛られていたお肉にも搾り掛けておきます。
これも、酸味のお陰でパサパサ肉が食べ易くなりました。
これなら完食出来そうです。
相変わらずのパサパサパンは酸味付加のスープに浸しながら、これも完食。
中々美味しく頂けたんではないでしょうか。
「なあ。それ、美味しいのか?」
物凄く嫌そうな顔で訊いて来るケインズさんには、にっこり笑顔を向けておきます。
「俺はこの味好きですよ。酸っぱくなってさっぱりで、果実の微かな甘味も旨味の一つに加わるんですよ。」
つい嬉しくなって語ってしまいました。
「そ、そうか。」
何か見てはならないものを見てしまったような顔になったケインズさんですが、突っ込むのはやめてくれたようです。
その後は訓練場に戻って筋トレと剣術の訓練みたいです。
腕立て、腹筋、背筋、これは万国共通みたいですね。
ダンベルにスクワットとかは無さそうですが、水入りのバケツでも持ってスクワットしてみますか。
逃げ足を鍛えるには、足の筋肉も大事です。
剣術は体幹が大事なんじゃないでしょうか。
道具を使うスポーツにはご縁なく過ごして来たので、物を持って重心移動を意識してみることにしました。
素振り、100回とか言われましたが、見習いさんや若そうな子達は、回数数えるのに夢中です。
でも、ちょっと出来そうな人達見てると、あれ重心を移動させる訓練なんですよね。
良い感じの肉付きの為にも、重心移動を意識して振ってみることにします。
が、これ思った以上に意識して振ると辛いです。
直ぐに腕が怠くなってきました。
という訳で、5回に1回くらい真面目なのを挟んで、数をこなすことに集中することにしました。