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 目の前で繰り広げられるヒヨコちゃんとお母さんの給餌行為、癒されますね〜。


 お母さんとヒヨコちゃんの嘴からはみ出してる何かからは、賢明にも目を逸らしますけどね。


 餌やりが終わると、お母さんが首を伸ばしてこちらの腕に後ろ頭を擦り付けるような行動をしてからお空に羽ばたいて行くようになったんですが。


 親愛行動だと信じてます。


 ところで、このハザインバース餌やりタイムの間の第二騎士団ナイザリークでの警戒行動としては、兵舎玄関前広場をお母さん上空旋回が確認されたところで閉鎖。


 レイナードとヒヨコちゃんに知らせた後は、隊長が交代で玄関先に立って見守る中、玄関前広場にはレイナードとヒヨコちゃんだけが入ることになってます。


 その間、広場を閉鎖してくれている隊員の騎士さん方は、威圧を与えないようにしゃがんで等間隔でロープ張ってくれてる状態になっています。


 本当、お手数お掛けしてますね。


 このハザインバースの親子さん、いつか何かの形で第二騎士団ナイザリークに恩返ししてくれたりするんでしょうか。


 いえ、やっぱりいいです。


 ハザインバースの恩返しとか、トラブルの匂いしかしませんね。


 ヒヨコちゃんが健やかに育って、さっさと巣立って、2度とここには近付かないって方向でお願いします!


 そんな訳で、餌やりに一段落したお母さんが長い首を伸ばして頭を寄せて来たところで、カチッと何処かから不穏な音が聞こえて来て。


「死ね!」


 という叫び声が!


 てゆうか、これどっちに対してでしょうか。


 お母さんかヒヨコちゃんか、レイナードか。


 なんて事をチラッと考えつつ、ここは非常事態って事でやってしまおうと思います。


 この場で何が一番危険かって、それはもう! お母さんですよ!


 お母さんの周りと、ヒヨコちゃんとレイナードの周りに、二層コートの防弾ガラス改め結界を張りますよ!


 魔法と物理物とを遮る完全結界って、魔法使いの塔並みの結界張らないといけないんじゃないでしょうか。


 流石に魔力消費が怖いので、省エネ型無効化結界、要はコルちゃんに掛けた結界の簡易改変版を展開してみる事にします。


 お母さんを囲むように薄く張った感知膜に魔力が感知されたら無効化結界がその膜の外側に展開される構造で、ヒヨコちゃんとレイナードの外側の膜の場合は膜の直ぐ内側に展開です。


 物理力への対処は、同じく感知膜に衝撃があったら、伸ばした岩石を地面の土を固めて立ち上げるって事で。


 構想が出来たところで素早く展開すると、やはりと言うべきか、内外両方に感知が引っ掛かって、物凄くごっそりと魔力持っていかれました。


 全然省エネじゃなかったですね。


 外周は岩石、内側は無効化結界でした。


「はいお母さん!落ち着いて〜!」


 ちょっと凶悪な鳴き声を立てたお母さんですが、無効化結界が展開されていると気付いて、飛び立とうとします。


「上空からの攻撃は禁止だよ! 仲間呼ぶのもなし! お空で少し頭冷やしてから、次の餌の時間に降りて来てね!」


 ここはもうダメ元でも何でも、声を張り上げますよ!


 外側の岩石は矢を一本弾いたようですね。


 全く、一体誰が!


 という訳で、お母さんの飛び立つ風圧に耐えながら、立入り禁止ロープの外側で第二騎士団ナイザリークの皆さんに取り押さえられてる人物に目を向けます。


「上空に注意!! ハザインバースが攻撃体勢に入った!!」


 カルシファー隊長の叫び声にギョッとして見上げると、お母さんが上空でカッと口を開いて。


 ヤバいですよ! 火炎放射ですか? 毒液ですか?


 やっぱりこちらのお話聞いちゃいませんね!


 これ以上は無理!


 レイナード先生お願いします!! ですよ〜!


 自主的に遠ざかってみようとした意識の中に、少し苦笑いの美女バージョンのレイナードさんが映り込みました。


『これが、最後ですよ?』


 ふと意識に浮上した声は明らかにこちらに向けられたもので。


 反論しようとした視界の中で、振り上げたレイナードさんの手の先から黒い影が上空へ向かって行きます。


 ふわりと舞う姿は黒いアゲハ蝶そのものです。


 見上げる先で、急上昇した黒いアゲハ蝶はハザインバースのお母さんの目の前に飛び出すと、身を震わせてパッと弾けるように光ると、跡形も無く消え失せてしまいました。


 と、お母さんは急に攻撃の意思を無くしたように、飛び去って行きました。


 ホッとして身体の力を抜いたところで、映り込んでいたレイナードさんが少し寂しそうな表情を覗かせながらこちらに両手を伸ばして来ます。


 触れたと思った途端に身体にずんと何かが落ちて来たような重みと衝撃が来て、指一本動かせないまま意識が闇に沈みました。

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