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 シルヴェイン王子と会議室で話した後、宿舎の部屋に戻ると、部屋の前でカルシファー隊長とケインズさん、オンサーさんが待ち構えていたようです。


「お帰りレイナード。」


 そう低い声音で声を掛けて来たカルシファー隊長の表情は、かなりお疲れ気味のようです。


 まあ、こちらも負けていないと思いますが。


「お疲れ様です。まだ、何かありましたか?」


 色々取り繕う気力がなくなってきていてですね。


「その何かを作ってるのは、お前だろう?」


 カルシファー隊長の声が更に低くく剣呑になってますよ?


 チラッとケインズさんとオンサーさんに目を向けると、それは苦い顔になってます。


 コルちゃんの事ですね、これは。


「お前の事は。ここしばらく見てきて、記憶を失った辺りから、話しの通じるまともな奴に変わったんだと思ってた。今日のハザインバースのことだって、お前の所為じゃないって分かってる。」


 お説教の前振りですね。


「でもな、サークマイトを放し飼いは許可してない。しかも、ハザインバースの雛とくっ付けた状態で部屋に置き去りはないだろう!」


 段々怒気の上がって来たカルシファー隊長は、声も高くなって来ました。


 他の人に聞かれるのも微妙ですし、夜も更けてきてるので、廊下で騒ぐのはやめておくべきですね。


「分かりましたから、ちょっと中で話しましょうか。」


「・・・そうだな。」


 少しクールダウンした声音でカルシファー隊長が返して来ました。


 という訳で、鍵を開けてそっと部屋の扉を開けてみますが、中は静かなものです。


 続けて入って来た3人と一緒にベッドを覗き込んでみますが、2匹の静かな寝息が聞こえて、身体が静かに上下しています。


 そのままそっとベッドから離れてから、皆んなで床に座り込む事にしました。


「静かに寝てたな。あれが凶悪な魔物と魔獣の雛とは思えないくらいだな。」


 オンサーさんが肩を竦めながらポツリと溢しました。


「まあ、子供とペットはそういうもんらしいが。」


 そう言うカルシファー隊長は家族がいらっしゃるんでしょうか。


「いや隊長、そこは子供とペットに例えちゃダメでしょう。」


 ケインズさんが苦い顔で突っ込んでいます。


 それに肩を竦めて溜息を吐いたカルシファー隊長がこちらに目を向けて来ます。


「レイナード。言っておくが、こんな事が塔の魔法使いに知られてみろ、お前は身勝手な問題行動を取ったとして処罰の対象になるかもしれないんだぞ?」


 厳しい口調ながら、カルシファー隊長は心配してくれているようです。


「はい。済みません。」


 ここで出来るのは素直に謝ることだけですね。


「お前も色々大変なんだとは思う。一杯一杯で投げ出したくなる気持ちも分からなくはない。でもな、お前が第二騎士団ナイザリークに置かれてる事情を思い出してみろ。団長だって、最近はお前に目を掛けて下さってるし、ウチの一員でいる内は何かと庇って下さるおつもりだと思う。だからな、塔の魔法使いに第二騎士団ナイザリークには置いておけないって台詞を言わせるなよ。」


 シルヴェイン王子に塔に行った時に言われた言葉そのままですね。


 塔の魔法使いは敵に回すな。


 そして、第二騎士団ナイザリークにいる内は、なんとかしてやる、と。


「分かりました。反省します。俺が部屋を離れる時は、コルちゃんは檻にいてもらいます。取り敢えず、無害性が証明されて許可が降りるまではそうします。」


 誠意をもって返した言葉には、深々と溜息を吐かれました。


「まあ、レイナードだからな。こんなもんなんだろうな。これでも聞くようになった方だよな。」


 カルシファー隊長が溜息混じりに呟いてから、チラッとオンサーさんに目を向けています。


「ええ、俺達も今のこいつなら、話して分からない奴じゃないと思ってますよ。」


 カルシファー隊長に答えたオンサーさんが今度はこちらに目を向けて来ます。


「だからこそ、周りから横槍を入れられるような隙を作って欲しくない。な、レイナード。」


 オンサーさんとケインズさんがカルシファー隊長にチクったのは、レイナードを思っての事だったんでしょう。


「よし、それじゃ解散するか。」


 カルシファー隊長が言い出して、皆んなで床から立ち上がります。


 扉に向かう3人を見送っていると、最後に出ようとしたケインズさんが振り返りました。


「何か困った事があって、俺で間に合うことなら、どんな小さい事でも相談しろよ。」


 ポツリと口にしてから、ケインズさんは扉を潜って出て行きました。


 人の優しさが身に染みるって、やっぱりあるものなんですね。


 ホッと温かい気持ちになったところでベッドに向かう事にしました。


 今日はもう遅いので、お風呂は明日にして寝てしまおうと思います。


 疲れて重くなった身体を頑張って動かして、そっとなるべく揺らさないようにベッドに乗り上げたところで、モフモフの毛玉が2つ寄り添い合うようにくっ付いているのが目に入ります。


 口元と目元を緩めて思う事は一つです。


 起きてもこのまま仲良しでいてくれると良いのですが。


 そのままゴロンと寝転がったところで、視界の端に何か小さな物体が映ったような・・・。


 気の所為ですね、お休みなさい。


 何か側でモソモソ動いてるかもしれない黒い小さい物体。


 殺虫剤かけられてひっくり返ったG様みたいな動き方ですね。


 の上にバサっと掛け布団を掛けて、目を瞑る事にしました。


 良い夢見ましょう!

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