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「さて、レイナード様にも今後出入りして貰う事になるし、塔の結界を通す登録を1人と1匹分追加しなきゃね。コルステアくん?」


 マニメイラさんに呼ばれて、まだかなりご不満顔のコルステアくんが前に出て来ます。


 そして、レイナードにまたギロリ睨みをくれてから、呪文をブツブツ唱え始めます。


 やっぱりあのギロリ、そっくりですね。


「レイナード様。そのサークマイト、ペットにするなら名前は? また新しいの捕まえに行かなきゃいけないから、区別付けといた方が良いでしょ?」


 マニメイラさんに言われて、思わずにやりと笑ってしまいました。


「コルちゃん。これから君の事はコルちゃんって呼びますからね〜。」


 相変わらず腕にスリスリしている魔物さんに声を掛けると、嬉しそうに粒らな瞳を上げて、キュウっと鳴きました。


 可愛いです。


「コルちゃん? サクちゃんとかマイトちゃんじゃなくて?」


 マニメイラさん、ネーミングセンス微妙ですよ?


「コルちゃん一択です。」


 にっこり笑顔で言い切ったところで、隣から密かに溜息が聞こえてきたところをみると、シルヴェイン王子は出所に気付いた様子です。


「お前、何でも良いからもう少し真面目に生きろ。」


 ボソッと疲れたような声が聞こえてきました。


 失礼ですね、これでも真面目に周りの環境を整えながら、順調に生存活動に励んでる筈ですが?


「まあいいわ。コルステアくん、今晩は念の為お兄さんの部屋に泊まって来なさい。何かあった時、記憶喪失のレイナード様だけだと危ないかもしれないからね。」


「はあ? 絶対嫌です!」


 マニメイラさんの一方的な提案に、コルステアくん即時却下です。


 てゆうかコルステアくん、従兄弟じゃなくてもっと近いレイナード弟でしたか。


「弟なんだなぁ。道理でちょっと似てると思った。」


 ポツリと感想を挟んでおくと、マニメイラさんとコルステアくんにばっと振り返られました。


「あれ? それも分からなかった?」


 マニメイラさんが何処か気まずそうに返して来ます。


 コルステアくんは凍るような目で睨んで来ますね。


「あー、これは駄目だわ。コルステアくん、夜間特別手当て出すから、今夜はレイナード様の部屋でコルちゃんの監視ね。」


 ちらっと目を合わせてみると、コルステアくんぷいっと目を逸らしました。


「はい。コイツが怪しい事しないかしっかり監視して来ます。」


「あのね。レイナード様じゃなくて、コルちゃんの監視だからね。」


 マニメイラさんが言い添えてくれますが、コルステアくん全然聞いてませんね。


 まあ、良いですけど。


 今晩は、どうやら1号くんと2号ちゃんと楽しく就寝になりそうです。


 思わずにやりと笑っちゃいそうになりましたが、これがバレたらコルステアくんに洒落にならなくキレられそうなので、トップシークレットですよ?


 しれっと2人から目を逸らしておきました。


「そういえば、マニメイラさんはどうして俺の事は様付けで、弟のコルステアくんの事は君付け?」


 時折、マニメイラさんに限らず、過剰に様を付けて呼ばれているような気がする事があるんですが、あれって何でしょうか。


 始めは、レイナードが貴族身分な上、お偉い財務次官のお父さんの威光があるからかと思ってましたが、マニメイラさんの扱いを見る限り、そうではない気がして来ました。


「ああ、それね。レイナード様はレイナード様って感じじゃない? 放つオーラとか、容姿とか、俺様な感じとか?」


 はあ、成る程。


「つまり、様付きでニックネームのようなものだと?」


「ああ、そうそう。」


 納得です。


 てゆうか、何処へ行っても俺様キャラだったってことですね。


 レイナード、怖いもの知らずというか、長生きする気とか絶対なかったですよね?


 そのとばっちりを全部受ける立場とか、本当にやめて欲しいんですけど。


「レイナード様、持ち運びは檻に入れて貰えますか?」


 と、コルちゃんを追い込み漁してた魔法使いさんに声を掛けられます。


「コルちゃん、一旦檻入ろうか。」


 腕にまとわり付いてるコルちゃんは怯えたように更にくっ付いて来ます。


「部屋に連れて行ったら、コルステアくんに部屋に結界張って貰ってから出してあげるから。」


「はあ? 何を勝手な事を! 何で僕が!」


 コルステアくんから即行で反論が返って来ますが、ここはにっこり笑顔になります。


「何でって、俺、本当は柱の結界付き訓練場以外で魔法を使うの禁止されてるからさ。宜しくね、コルステアくん。うん、優秀で信用のある弟くんが居るって幸せだなぁ。」


 途端に刺されそうな程の殺気を感じましたが、きっと気の所為でしょう。


「さあ、コルちゃん、そういう訳だから入ろうね。」


 にっこりイケボイスに寄せて促してあげると、コルちゃんも今度はゆっくりと檻の入り口に歩み寄って行って、スルッと中に入りました。


 檻を持っていた魔法使いさん達が、ホッとしたように息を吐いていました。


 この反応を見ると、本当に凶悪な魔物なんだなと実感しますが、折角手に入れたモフモフペットに癒される生活は、絶対に手放せません。


 絶対に死守してみせますからね。


 想像してにやり笑顔になっていると、側からシルヴェイン王子の溜息がまた聞こえて来ました。


 可笑しいですね、周りにこんな諦め気味の溜息吐く人が増えたんですけど、何ででしょうか。


 あんまり溜息吐くと、幸せ逃げるって言いますよ?


「今日は、この後の任務と訓練は免除する。宿舎へ戻ってそのサークマイトを飼う環境を整えるように。各所への届出はカルシファーに手伝って貰え、団長としての私からの許可証を後で届けさせる。宿舎での手続きの仕方もカルシファーに相談すれば良いだろう。」


 シルヴェイン王子が、気を取り直したように事務連絡を済ませると、塔を出る事になりました。

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