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エダンミール編スタートです。
辺境の街の下町にも設置された夜中まで煌々と灯る魔法灯火。
井戸に当たり前のように設置されているのは汲み上げ濾過装置の付いた魔道具。
宿の個室の施錠は、宿泊者の魔力を登録して開閉する魔道具仕込みだ。
「やはり驚く程の魔法技術力だな。」
「ええ。魔法大国と呼ばれるだけのことはあります。ですが、国が徹底的に国民を魔力で管理しようとしている節のある、ある意味息苦しい国家ではないでしょうか。」
クイズナーの辛口な評価には口元に苦味が広がる。
「魔力も魔法も、いずれは衰退していく時代が来る。お前の持論は未だ変わらずか?」
「ええ。前の旅でのことで、更にそう思うようになりましたよ。スーラビダンの王族とその血筋にだけ許された古代魔法の衰退。」
またいつものように熱く語りに入りそうなクイズナーを、手で制す。
「まあ、ここではそのくらいにしておけ。来たぞ。」
そう言って向けた視線の先に、目深にフードを被った体格の良い人影が近付いてくるのが見えた。
何とも怪しげな風体だが、それについてはこちらも負けていない。
「シルとクディだったか? ついて来い。お頭が会うそうだ。感謝しろよ? “魔王を願う会”の支部長と繋がりのある人なんだからな。」
こうして当たり前のように市井に魔王信者達が蔓延るに任せているこの国は、魔法大国エダンミールだ。




