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「なあ、ところで気の所為か? 呪詛で髪色も変わってたのか?」


 そう言えば、タイナーさんとはそこからでしたね。


「ああ、レイナードさんと会って不可抗力で解呪されたんですけど、その時に髪色を交換して身長持ってかれたんです。」


「・・・それでお前、ランバスティス伯爵の娘って名乗り続けられるのか?」


 確かに、女性化したレイナードから離れていっているかもしれません。


「・・・どうなんでしょ。これでダメってことになったら、タイナー師匠せんせいの養女にしてくれます?」


「はあ? 父上がおねー様を手放す訳ないでしょ? 髪色くらい何? おねー様はランバスティス伯爵家の子だからね! 仮に嫡出子として認められないって話しになったとしても、即行で養女にするのはウチの父上だからね!」


 そう険しい顔で言い出したコルステアくんには目を瞬かせてしまいます。


「ははっ。エイミアに浮気を疑われたくないから、俺の養女は無理。」


 瞬時にこちらを切り捨ててきたタイナーさんの所業はよーく覚えておこうと思います。


「それくらいなら、スーラビダンに来れば良い。嫁が嫌なら娘になるか? 婿はスーラビダン人で良さそうなの見繕ってやるぞ? 第一夫人に収まって、他を娶らせなきゃ良い。圧力掛けてやるぞ?」


 このテンフラム王子の横暴さもどうでしょう。


「それも謹んでご遠慮で。」


「だから! おねー様はウチから離すつもりないから! 出るとしたら、おねー様がどうしても結婚したいって相手が出来た時だけ。しかも、相手は厳しく審査するからね。」


 腰に手を当てて言い切ったコルステアくんに、また更に目を瞬かせてしまいました。


 ツンデレだった筈のコルステアくんが何故か完全なシスコンにキャラチェンジしてるんですが、何故でしょうかね。


「えー、思いっきり脱線した話しを戻すとして、古代魔法での装置の修繕は可能?不可能?」


 気を取り直してそう強引に終わらせると、タイナーさんがポンと手を叩きました。


「あーそれな。結論から言うと、不可だ。古代魔法の衰退の歴史を辿れば分かることだが、古代魔法ってのは血筋固有魔法だ。スーラビダンの王家の血筋でなければいくら魔法陣が各地にあろうとも作動出来ない。その上、スーラビダン王家はその血筋の流出を徹底的に管理して、都合の悪いところに流れた傍流を消して来た歴史がある。」


 そう言ってタイナーさんはテンフラム王子に意味ありげな目を向けました。


「その結果、血筋と能力の先細りが起こったという訳だ。つまりな、古代魔法で修繕したところで、古代魔法を使える者が何かあるたび修繕し続けなきゃならないなら、それは維持出来ないってことだろ?」


 成る程、ですね。


 だから、古代魔法の装置はそのままに稼働に必要な魔力だけ、今の魔法で注ぎ込む機構を作り出した。


 つまり、スーラビダン王家のメンテに頼らず維持する為に、稼働魔力の供給機構(システム)を構築したという訳ですね。


「例え出来たとしても、古代魔法の装置に元から付いてた供給システムの復旧は意味がないんですよね? あ、でも。一時凌ぎとしてはもしかして有効? 一般魔法で構築してたシステムの修復は聖なる魔法で時間を掛けてやるとして、その間の仮稼働を古代魔法のシステムでやってみるのは? 古代魔法の方が魔力消費は抑えられるし、壊れた箇所だけ聖なる魔法で修復しながら。うん、何となく展望が開けて来た気がします。」


 そう顔を上げて言ってみると、テンフラム王子とタイナーさんが目の色を変えています。


「そう来たか弟子。面白い!やってみて良いぞ? 知恵は貸してやる。」


「私も乗ろう。大昔の装置の機構修繕作業。非常に興味深いな。詳細を報告すると言えば、管理部の方からも正式許可が降りるだろう。」


 良く分かりませんが、これで2人の全面協力を得られたのは大きいんじゃないでしょうか。


「さて、それじゃ。後はエダンミールが首を突っ込んで来る前に、その許可を国王陛下に取り付けられるか、ですね。」


 次の問題に取り掛かる前に、一息つきましょうか。


「という訳でタイナーさん、ポケットからドアツードアがゼロ距離になる例の扉出して下さい。」


「・・・は?」


 間の抜けた反問が来て、ふっと緩んだ空気を吸ってから、本題に入ることにしました。


「冗談です。転移魔法が不可能なら、高速移動出来る手段を。それから、リアルタイム通信が出来る装置があるって言ってましたよね? それ、使わせて下さい。」


 タイナーさんのところへ寄った一番の目的はそれですからね。


「高速移動手段と通信手段か。・・・おい弟子、ちょっと付いてこい。」


 言ってから徐に席を立ったタイナーさんは応接室を出るようです。


 また以前お邪魔した上階のコックピットなお部屋でしょうか?


 続こうとしたところで、バンフィードさんが当たり前のように付いてこようとします。


「あ、バンフィードさん大丈夫なので、ここで皆さんと待ってて貰えますか?」


「いえ。護衛というのはいついかなる時もお側にあるものです。どうしてもと仰るなら、入られた部屋の外で待ちます。」


 これまた硬い言葉を貰って、断るに断れなくなってしまいました。


「また変なの手懐けたなぁ。それと、前ポケの狐様はともかく、後ろにこそっと隠れてついて来てる獣は何だ?」


 そういえば、存在を忘れがちですが、ジャックは人見知りの気があるのか、移動中は背中に抱き付いたまま上着の中に隠れているか、そっと物陰から物陰を渡りながらこちらを追ってくるスタンスのようです。


 これでも旅仲間の皆さんには慣れてきて、見知らぬ人がいない場所ならコルちゃんと戯れあったりするのですが、今日はエールに騎獣している間は背中に張り付きっ放しで、そのまま塔に入るまで離れませんでしたが、応接室に入った辺りから離れて何処にいるのか分からなくなっていました。


「ペット猿のジャックです。」


「・・・クワランカーって魔物がいるんだか、血走った目で体毛がもうちょっと茶色いんだが、そっっくりだなおい。」


 半眼のタイナーさんにはお見通しのようです。


 ジャックも側にいる内にいつの間にか毛が白っぽくなってきて、フォーラスさんに引きつった顔で聖獣化してきましたね〜、とか言われたんでした。


「こう見えて、コルちゃんと戯れる姿は癒されますよ〜。ただ、たま〜にヒートアップして物壊すんですけどねぇ。」


 少しだけ目を逸らしつつ言ってみると、溜息と共に肩を竦められました。

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