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「魔法至上主義者、魔王信者どものアジトか。」


 テンフラム王子の苦々しい相槌が話しの合間に挟まりました。


「はい。多分そうなんだと思います。殿下は呪詛で縛られて魔力を限界ギリギリまで搾り取られ続けていたみたいです。」


 その状況を改めて思い起こすと、これに関わった全ての人達に関して、かなりの憤りを感じます。


「今頃証拠隠滅を図られているだろうが、正確な場所は分かるかい?」


 クイズナー隊長のかなり真剣な瞳に見つめ返されて、躊躇いがちに頷き返します。


「はい、多分。それで、取り敢えず続けますね?」


 逃げ出したあの場所の位置が曖昧な理由も説明してしまった方が良いでしょう。


「それで、ノワと協力して守護の要破壊装置から殿下の魔力を取り戻した後なんですが、敵に悟られて逃げ出す必要があったので、やむ無く殿下の身体に入らせて貰って、無理矢理動かして逃げ出したんです。」


 あの時のことは、無我夢中だったので、どうやってとか詳しいことを聞かれても答えられそうにありません。


「成る程ね。それで? 何処に逃げた? 殿下は今無事でいらっしゃるのか?」


 クイズナー隊長にとっては一番な関心ごとでしょう。


「ご無事な筈です。誰にも殿下だとは気付かれないようにこっそり逃走したので。」


「そうか、良くやってくれたね。大したものだ。レイカくん、本当にありがとう。殿下を救ってくれて心から感謝する。」


 心無し震える声で返してくれたクイズナー隊長は、少しだけ目元が潤んでいるように見えました。


「はい。取り敢えず、身柄だけはご無事だと思います。ただ、これが4日前となると、殿下の回復具合とその後本当に大人しくしていてくれているかは分かりません。」


「待ってくれるかい? そもそも殿下を何処へ連れて行ったのかな?」


 そこは大事な確認事項ですよね?


「それは、王都に近付くまで待って貰って良いですか? 今まだ直ぐに駆け付けられない状態で誰かに漏れて、殿下の敵に知られるようなことになったら、悔やんでも悔やみ切れません。」


「・・・確かに。だが、第二騎士団ナイザリークの信用出来る者にだけはご無事とレイカくんだけが殿下の所在を知っていることを伝えておくべきかもしれないが。」


 その辺りは難しいですよね?


「それより、この先どう黒幕を出し抜いて殿下の無実を証明するか考えていった方が良いと思います。」


 守護の要が弱体化したことで起こったこともあるかもしれませんし、その修復に時間がかかることも踏まえた対策が必要です。


 この対策にエダンミールが入り込む隙を与えないようにすることも重要ですが、何よりも上にそれを納得させられるだけのプランニングと説得力が必要ですよね。


「他力本願ですけど、アルティミアさんなら、殿下の取り出された魔力が本人の意思のないまま悪用されたことが見て分かったりしませんかね?」


 そもそも、その可能性が捨てきれないからアルティミアさんは狙われたんじゃないでしょうか。


「可能性はあるね。やはり、ラフィツリタに寄ってタイナーに協力を仰いでみようか。」


「うんうん、是非そうしましょう。師匠担ぎ出す口先トークは任せて下さい。テンフラム王子が乗ってくれたら効果的かと思いますし。」


 チラッと目を向けた先でテンフラム王子がにやりと笑い返してくれました。


 これは、面白がって乗っかってくれそうですね。


「それで? 実際のところ守護の要の修復は本当に出来そうなのかい?」


「そこは、見てみないと方向性は決まりませんけど、ノワがいれば何とかなる気がします。」


 元大神官のノワは、あの性格さえなければ、長く生きて来た人生を無駄にせず知識と知恵を蓄えて、本当なら誰よりも頼りになる賢者とさえ呼ばれるような人物なのかもしれません。


「うーん。先程の君たちのやり取りを見る限り、全くそんな風には見えないんだが、彼には相当な曲者感があったね。」


 こちらもそれにうんうんと頷き返しておきます。


「魔人と言えば、エダンミールの王子の話しはどうなったんだ?」


 テンフラム王子の疑問には何処まで答えたものでしょうか。


「はっきりしてるのは、エダンミールの双子の第二第三王子のどちらかが、魔人だってことです。どうやってそうなってるのか分かりませんが。」


「第三王子のサヴィスティン王子だと限定しない理由は?」


 やはりここは適当には流されてくれませんね。


「分からないんですけど、レイナードが3つの頃出会った王子様達の話しを聞くと、違和感があって。」


 こちらもはっきりと答えが出ている訳ではない話しなので、言い淀んでしまいます。


「魔力を送ってる王子様のほうが魔人の王子様を操って暗躍してるように感じたんですけど。今のサヴィスティン王子って、彼自身が世の中を恨んでて画策してるように見えるんですよ。」


「だが、入れ替わってる意味は? そんな必要があるか?」


 この辺りがエダンミールの王家事情が分からないだけにどうだとは言えなくて困ります。


「うーん。それは、今回の件には直接関わりがないってことで、一旦目を瞑りましょう。」


 サヴィスティン王子のことは気になりますが、今はそれよりもシルヴェイン王子とこの国のことです。


「第五騎士団に顔出して、ブライン団長様とお話ししましょう。それから、アルティミアさんに王都に向かって貰う為にも、キースカルク侯爵とも連絡をとるべきですよね?」


 そう言いながらクイズナー隊長に目を向けると、頷き返されました。


「そうだね。一先ず今日は君が休んでいる間にその辺りを済ませて来る予定だったからね。後はこちらに任せて、一休みしなさい。」


 そう当たり前のように言い渡されてキョトンとしてしまいます。


「え? 起きたのに、また寝るんですか?」


 スッキリ目覚めた後の絶好調な体調のように感じるんですが。


「おねー様。倒れて丸3日も意識のなかった人が、大人しく今日くらいは寝てなよ。」


「そうだよレイカさん。コルちゃんとジャック?はみておくから、休んでて。」


 コルステアくんとケインズさんからもこちらを気遣う優しい言葉がかかりました。


「それじゃ、私が意識がない間はケインズさんがコルちゃんとジャックをみててくれたんですか?」


 あれ程誰にも懐かなかったコルちゃんを手懐けてお猿のジャックも面倒を見てくれたとは、ケインズさん流石ですね。


「まあ、餌を食べてくれた辺りから何とか必要最低限は言うことを聞いてくれてる気がするな。それに、ハザインバースのほうはライアットさんが毎朝宥めてくれてるし。」


「そっかぁ。ケインズさんありがとうございます。それに、ライアットさんにも感謝ですね。」


 不可抗力の時間調整の間は、どうやら身体も省エネモードに入るのか、戻った後に不調はないのですが、せっかく気遣って貰っているので、遠慮なくゆっくりと身体を休めつつ考えを纏める時間に当てようと思います。


「ありがとうございます。それから、皆様ご心配お掛けしました。少しこちらで休ませてもらいますね。」


 そうしっかり頭を下げつつお礼を言うと、何処かホッとした空気が流れた後、皆がゾロゾロと部屋を出て行きました。

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