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 空の地下牢に運び入れて貰った簡易な椅子にテンフラム王子と向かい合って座って、話しが進む毎にお互いの顔付きが苦々しくなっていきました。


「奴ら正気じゃないな。古代魔法をベースに呪詛で縛って特大破壊魔法を展開? カダルシウスの王都で、そこまでして一体何を壊すつもりだ。というかまさかそこまで馬鹿だとは思いたくないが、魔法で壊すと限定したらアレしかないだろうな!」


 犯罪者達から尋問で聞き出した話しを繋げて自己完結すると、そういう話しになったようです。


 そこで同意を求められても困るんですが、こちらがマユリさんから聞いた前情報から割り出したアレはテンフラム王子のアレと一緒なんでしょうか。


「しかも、決行は三日後だ。間に合わないぞ? どうするつもりだ?」


 これも尋問で得た情報のようですが、思ったよりも決行の日が迫っていたようです。


「テンフラム王子は、カダルシウスにもう1人異世界人がいるのは知ってますか?」


 マユリさんのことは機密情報ではないはずなので、話して問題ない筈です。


「ああ、王太子と婚約したんだったな? だが、神々の寵児の特殊能力は一代限りだ。王家に迎える意味合いは薄いと思うのだがな。まあ、本人の能力が絶対に捕まえておきたいほど魅力的だったということなんだろうが。」


 この冷めた感想は、古代魔法を持つスーラビダン王家ならではの感覚なのかもしれませんね。


「アレの完全破壊を防ぐのがその子の役目なんですよ。つまり、アレの完全破壊は世界が許してないってことで、大丈夫だと思うんですよ。」


「・・・なるほど、だからお前はここでまだ余裕の顔をしていられる訳だ。」


 全くもってそんなことはないんですけどね。


「その後、アレの弱体化に足元をみた例の大国の手出しが始まる前に戻りたいので、本当はもの凄く焦ってるんですよ。何か良い手はないですか?」


 素直に助けを求めてみたこちらに、テンフラム王子がマジマジとこちらを見つめ返して来ました。


「あのなぁ。現存する古代魔法にはそこまで便利なものはないぞ。禁呪は意味があって禁呪とされている訳で、反作用があったり世界を変質させるものだったり、使うべきではないものなのだ。」


「でも、禁書を用いて今回裏で糸を引いている人達は、そんなのお構いなしで色々しているわけじゃないですか? どうして神様はそれを許してるんでしょうか。」


 レイナードにもレイカにも監視員を付ける徹底ぶりなのに、何故例の大国のやる事には寛大なんでしょうか。


「それは、我々には分からない何かの理由があるのだろうな。」


 そう苦笑混じりに返してきたテンフラム王子ですが、それは慎重に言及を避けたんじゃないかと思わせるようなあっさりとした引きでした。


「神様が人間の尺度で世界を見てる訳じゃないのは分かりますけど。割り切れないですよね。それに、あっちのサヴィスティン王子様はカダルシウスだけ異世界人が2人もずるいって言ったんですよ。・・・何でだろ。」


 ふと、それが気になってしまいました。


 そもそも属国化が決まっているカダルシウスからエダンミールが何かを奪うのは簡単になるはずで、あの段階でサヴィスティン王子が羨ましく思うことなどなかったのではないでしょうか。


「・・・そういう意味じゃなかったのかな?」


 ぽつりと呟いてしまいましたが、これは今テンフラム王子と話すことではなかったですね。


 という訳で気を取り直して話しを戻そうと思います。


「古代魔法は予め描かれた魔法陣上で、スーラビダン王家の血筋の者が古代魔法の言語で呪文を唱えることで発動される。発動者の魔力によって、効果の程と持続時間が決まって来る。そういうことですよね?」


「そうだ。まずは魔法陣がある事が前提だな。」


 そう返してくれたテンフラム王子にじっと目を向けて切り出してみます。


「その魔法陣って、実は密かに色んなところにあったりするんじゃないですか?」


 使われていないだけで、過去の遺産としてとか国際法に則って使用が制限されているとか忘れ去られているだけで、古代魔法がベースになっている過去の魔法装置が各地にあったりしても可笑しくないんじゃないでしょうか。


 案の定テンフラム王子が黙ってこちらを見つめ返して来ますね。


 言えないだけでこれは図星ってことじゃないでしょうか。


 と、不意に目を逸らしたテンフラム王子が深々と溜息を吐いて頭を掻き上げました。


「あのな。お前は本当に危ない奴だな。目を離したら何をするか分からない危険人物だと良く分かった。」


 どうしてそういう話しをあちこちでされるんでしょうか。


「分かった。お前には下手に隠し事をするよりきちんと理由を説明した上で、禁じてを打った方が良さそうだな。」


 そう溢したテンフラム王子が、ずいっと身を乗り出して来ました。


「お前は私の弟子になれ。古代魔法を一からきっちり教え込んでやる。一般魔法は大魔法使いタイナーに習えば良いが、古代魔法は私を師匠にしておけ。」


 この展開には目を瞬かせてしまいます。


 こちらとしては、今回の無茶を通す間だけの秘密兵器的な扱いのつもりだったのですが。


「それから、ついでに形だけでいいから私の妻になっておけば何処からも横槍は入らないだろう。恋人も愛人も好きに持てば良い。どちらにしろ出来た子供はスーラビダン王家の血筋だから問題ない。万が一の継承権の問題も私のところまで降りて来る可能性はないから子供もお前も煩わされる事はないだろう。」


 続いた言葉の方には思いっきり眉を顰めてしまいました。


「はい? だからそれはお断りですけど? テンフラム王子の妻じゃないと何処が何を言ってくるんですか?」


 ここは、はっきりしておいた方が良さそうですね。


「ん? そんなものは決まっている。スーラビダン王家の血筋を盲信して崇め奉ってる連中だ。もっと面倒な事を言われるぞ?」


「うわ〜、魔王信者に古代魔法崇拝者、何でそういう面倒臭いものばっかりに大人気になるのかな。全部、レイナードさんの体質の所為だと思うんですけど。」


 嫌な気分になって零すと、テンフラム王子には肩を竦められました。

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