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 王子様の問いを受けて、クイズナー隊長の元にフォーラスさんとバンフィードさんが寄って行きます。


 チラッと振り返った先で、壁際に物凄く嫌そうな顔で身を寄せた護衛の皆さんの姿が見えました。


 あれは巻き込まれたくなかったなっていう空気ですね。


 ケインズさんとオンサーさんは少しだけ戸惑うような困ったような微妙な顔付きで2人並んでいます。


 ナッキンズさんはこれまた壁際で空気になろうと努めているうっすい存在感を装っていますが、無駄な努力ですね、しっかり見えてますから。


 そして、隣についてそっと肩に手を乗せたコルステアくんは、最近偶に見るようになった気遣うような視線を向けてくれています。


 ここでの話し合いで少しでも展望が開けることを祈るばかりです。


 舞台の裏側を覗いて、何が出来るのか、何をすべきなのか、それを確かめる為にここまで来る必要があったのだと思おうと思います。


 そうでもしないと、身代わりにしてしまったのに直ぐに駆け付けることも探し出すことも助けに行くこともしなかったシルヴェイン王子に申し訳ないじゃないですか。


 助け出しさえ出来れば、聖なる魔法フル装填で元通りに戻してみせると言い切れますが、肉体的ダメージはともかく、精神的なダメージは無かったことには出来ないでしょう。


 今実は一番気に掛かっていることは、レイカとして割と自由に動いて来た結果、シルヴェイン王子の本来辿る筈だった人生を歪めてしまったのではないかということです。


 言えば、シルヴェイン王子本人も周りの人達も今なら、気にするなお前の所為じゃないと言ってくれるでしょうが、それに甘えるのは違うだろうと思うのです。


 だからせめて、シルヴェイン王子が今健在だったらしようとする筈のこと、カダルシウスの危機を何とか回避する術を探すこと、これに全力を傾けようと思います。


「では、まずこちらの面々の紹介から。」


 フォーラスさんやバンフィードさんと話しがついたのか、クイズナー隊長が話し始めました。


 シルヴェイン第二王子の直轄魔法騎士団のクイズナー隊長、カダルシウスの神殿から着いてきた神官のフォーラスさん、ランバスティス伯爵家のレイカの解呪が当初の目的だったこと。


 その旅のお供の弟のコルステアくん、護衛目的の同僚のケインズさんとオンサーさん、そして一般から追加護衛として雇ったリックさん達、道中で加わった追加護衛のバンフィードさんとナッキンズさんのことは深く語らず紹介を終えました。


「つまり君達は、当初シルヴェイン王子の指示で動いていたという訳だな? だが、今現在色々なことが発覚してきたというのに、頼りのシルヴェイン王子は行方不明。敵の手に囚われている可能性が高い、と。」


 クイズナー隊長の話しを纏めた王子はこれまた苦い顔になりました。


「それは、八方塞がりに近いのではないか? これからどうするつもりだったんだ?」


「伯爵を通して、一応王弟殿下に繋ぎは取れていますね。」


 ここも渋々明かすことにしたクイズナー隊長はかなり不本意そうです。


「ふうん。それでは、その王弟殿下が動いて国内の事件の収束とエダンミールの動向を探り始めたということだな?」


「・・・いえ、お話しした通り、レイカくんが断片的に語った予想を信じるに値するものだと裏付けを感じたのは本当に先程です。ですから、王弟殿下にはまだ詳しくは何も話していませんね。」


 正直に明かしたクイズナー隊長ですが、王子様は溜息を吐いて何か諦めたようでした。


「では、こちらから話しをしよう。私はスーラビダン王国第三王子のテンフラムだ。知っての通り、スーラビダン王家はその唯一の血筋で古代魔法を継承してきた特別な一族だ。だから、王家の血筋をはっきりさせる為に、伴侶となる女性に貞操を求めてきた。それが、その服装で他の男との接触を避ける風習に発展していった。つまり王家の血筋の者達をしっかり把握、管理してきたということだ。その中でも、実際に古代魔法を扱う資質のある者については名簿とその資質の等級管理もされている。」


 途中からテンフラム王子の視線はこちらに固定されています。


「レイカルディナ・セリダイン嬢についても、後程しっかりと測定や検査をさせて貰いたい。」


 そこは外せない主張だったようで、まず始めにしっかりと念押しされたようです。


「さて、ここで古代魔法について少しだけ説明しておくことにしよう。そもそも古代魔法はスーラビダン王家の血筋の者にしか使えない血筋固有の特殊な魔法だが、それ以外にも発動の為に普通の魔法とは大きな違いがある。一番の問題は、発動の為に必要な魔力が桁違いに多いということだ。正直に言って、血筋の条件を満たしていても普通の魔力量の者が下準備なしに古代魔法を使おうとしても発動できないものなのだ。」


 テンフラム王子はここでもしっかりこちらに意味ありげな視線を向けてくるのを忘れません。


「だから、予め下準備として魔法陣を描いておく必要がある。その魔法陣も、血筋条件を満たした者が粉砕した魔石に魔力を乗せながら時間を掛けて描く必要があり、しかも魔法陣の中でしか古代魔法は発動しない。発動後の魔法が魔法陣の外でも継続するかどうかは術者の技量や魔力次第といったところだ。」


 またバチっと強い視線を向けてくる王子様に、そっと視線を外しておきました。


「そしてもう一つ、古代魔法は呪文詠唱が必須だが、その言語は門外不出だ。」


 逸らしているのにこちらに向けられる視線が突き刺さりそうです。


「が、まあ。長命種の受け継ぐ書物の中に古代魔法言語について記されたものがあるらしいという噂は聞いている。レイカルディナ嬢の使ったものは、そこから学んだものだと考えていいな?」


 どうしましょうかこれは?


 曖昧によそ見しながら笑っておくと、溜息が聞こえて来ました。


「では、大魔法使いタイナーの元に人をやって、その書物の閲覧と場合によっては回収を要求することにしよう。」


 その強い口調は最早脅しですね。


 そおっとクイズナー隊長に目を向けてみると、じっとりした視線を返されました。


「諦めなさい。大体色々隠しておきたいなら大人しくしておきなさいと言ったはずだよね?」


 その冷たいクイズナー隊長の言葉にはぐうの音も出ませんが、世の中人として放っておいてはいけないことが色々あると思うんです。


「多分、異世界転移者特典だと思うんです。人の話す言語は、全部翻訳出来るみたいなんです。だから、あの魔法犯罪者さんが使ったのと同じ言語で話してみたら魔法発動しちゃったみたいな。」


 気まずく少し小さい声で明かしてみせると、沈黙が来ました。


「・・・・・・」


 途中からクイズナー隊長とテンフラム王子が頭を抱え出しました。


 その他妙な顔をして首を傾げていたりキョトンとしていたり、皆様それぞれな反応でしたが、それもテンフラム王子の深々とした溜息に遮られました。


「あのな、クイズナー殿? 何でこんな奴を野放しにしてる? 要らないならウチが貰うぞ?」


「・・・野放してるように見えますか?」


 そこで顔を見合わせてまた深い溜息合戦に入る2人に、むすっとした顔を向けておきました。

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