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「さて、まずは指人形。色々聞きたい事があるからしばらく姿出して側に居なさい。」


 言い渡したこちらにむうっと唇を尖らせた指人形がチラッとフォーラスさんの方を向きました。


「レイナード様、お側に何か居ますね? シーラックくんの前にもぼんやりと、男の子?がいますか?」


『ほら、だから聖なる魔法持ちは嫌いなんだよね。見られたくなくて姿隠してるのに気付いたりするから。』


 指人形の発言で、何故このところ側に出て来なかったのか分かりました。


 シルヴェイン王子の離宮には聖なる魔法持ちのクリステル王女がよく出入りしてましたからね。


「嫌な感じではないのですが、不思議な存在ですね?」


 フォーラスさんが目を瞬かせながらそう続けています。


「そっか。聖なる魔法持ちの人は、姿を消してる魔人の存在を感じ取れるんだろうね。でも話してる言葉は聞こえない?」


 フォーラスさんにそう問い返すと頷き返されました。


 それにはちょっとだけホッとしますね。


「レイナード様の前に立っている存在ははっきり分かるんですが、側にいる存在は本当に微かにいるような気がするというくらいにしか感じ取れませんから、レイナード様が話し掛けていなければ、気付けませんでしたね。」


「そうなんだ。この子が私の契約待ち魔人なんだけど、他の人間には見えないって聞いてたんだよね。その例外は聖なる魔法持ちの人で、ただし人間以外には見えてるんだよね?」


 後半は指人形に問いかけると、不本意そうな様子で頷き返されました。


『それでも、聖なる魔法持ちの人間にもよっぽどじゃなきゃ気付かれないんだけど。やっぱり我が君が僕に話し掛ける時に無意識に微量の魔力をこっちに流してるんじゃないかな? 人間以外だと、その出来損ないにもサークマイトやハザインバースにも見えてますよ? まあ、見えないようにすることは勿論出来ますけどね。』


 また胸を逸らして言う指人形に、はいはいと適当に答えてから次の質問に取り掛かります。


「で? 私の魔力って美味しいの? 何にとって?」


 大事なことなのでこれはきっちり聞いておこうと思います。


『あれ? 気付いてなかったんですか? 何にとってもですよ? だから、意図してその魔力を取り込める魔人や魔物は勿論のこと、人間にもやたら好かれるのはその魔力に惹かれているからということもあります。』


「え? それはちょっと気持ち悪いかも。」


 引き気味に返すと、指人形は小首を傾げました。


『元の身体の主殿も中々でしたが、我が君は元から輝かしい魔力を持っておられたようですよ? あちらでは魔素が非常に薄く、身体に蓄積される魔力は極微量になる為、活用もされず重要視もされないようでしたが。』


 成る程、こちらでレイナードの魔力量に合わせた所為で大幅に量増された魔力がたまたま特殊だったってことですね。


「ちょっと待って。今すっごく怖い可能性に気付いた。私、魔物ホイホイになれるんじゃ・・・。」


 食べに来るか懐きに来るかはともかく、そんな可能性があるんではないでしょうか?


 これには指人形、可愛らしく微笑んで目を逸らしましたよ?


 ちょっと待て、神様的存在。


 何適当に魔力量増やしてくれちゃってるんでしょうか?


「はあ、やってられんわ。取り敢えず、ヒーリックさんのお弁当食べよー。」


 溜息混じりに言ってその場に座り込むと、目の前のカランジュが小首を傾げてから、そっと手を伸ばして来て、ヨシヨシと頭を撫でられました。


「可愛いけど! すっごく複雑。」


 と、隣にスリっとコルちゃんが寄って来てスリスリして来ます。


 そのコルちゃんをギュッと抱き寄せてモフ毛に癒されたいと思います。


 と、そこでクイズナー隊長から非常に冷静なお言葉が降って来ました。


「・・・ところでレイナードくん? お弁当は良いとして、何が起こってるの? 説明してくれるかな?」


 ですよね? 周りの方々には、レイカ意味不明独り言劇場が展開されてた筈ですからね。


 よくまあ、ここまで邪魔せず静かに放っておいてくれたものだと思います。


「なあ、そもそもお姉さんって誰のこと?」


 リックさんから、そこ来る?発言が来ました。


 是非そこだけは忘れておいて欲しかったところです。


 チラッとクイズナー隊長に目を向けると、目を逸らして深々と溜息を吐かれました。


「黙秘だ。今回の旅の根幹に関わるから。」


 そんな無理やりな流し方をしたクイズナー隊長ですが、リックさん達にはその言葉で確信出来ましたって顔されてますね。


 ここは、こちらも目を逸らしておこうと思います。


「えっとですね。話し戻して説明すると、シーラックくんは魔人と契約してるんですけど、魔人は普段は他の人には見えないように姿を隠してるみたいです。でも、聖なる魔法持ちの人には見えたりするみたいですね。」


 何事もなかったように説明に入ると、色々と胡乱な目を向けられている気がしますが、気にしたら負けです。


「で、その魔人さんはカランジュっていうんですが、ドラゴンに擬態してるみたいで、いつもは肩に乗るサイズの大きな羽付きトカゲみたいな姿なんですが、今はシーラックくんに似た10歳未満の男の子に見える姿になってます。シーラックくん、カランジュは何でドラゴンに擬態してるの?」


 カランジュのことは一先ずシーラックくんに聞いてみるのが一番でしょう。


「カランジュは、契約した時からこの小さなドラゴンの姿だったよ?」


『出来損ないだからですよ。』


 そこで不服そうに口を挟んだ指人形に目を向けます。


『そいつは、魔物を下地に人工的に作られた魔人擬きです。だから、契約者が高魔力保持者じゃなくても契約者の魔力を喰らってしばらくは生きられる。その代わり、契約者の能力は使えず、下地になった魔物の能力の一部を使う事が出来る。その代わり、契約者の魔力を無理やり喰らわないと魔人擬きは生きられないので、契約者は長く生きられない。契約者が死ねば、当然魔人擬きも生きられないので、互いに短命ということですね。』


 淡々と明かしてくれましたが、聞いたこちらは冷や汗が出るかと思いました。


 これは、ちょっと放っておけない話しですが、どうするのが良いか迷いますね。


 シーラックくんとカランジュは知ってるんでしょうか?


 そもそも、どうして契約することになったんでしょうか。


 色々と陰謀臭い匂いがして来ますね。


「まあ、それはちょっと後で話そうか?」


 この場は一先ず流すことにしてと思っていると、周りの皆様から刺すような視線が来て痛いです。


「そうだね。レイナードくんとは後でゆっくり話す時間が必要そうだね。」


 クイズナー隊長、にっこり和やかを装ってますけど、目が笑ってませんよ?


 シーラックくんとカランジュからもお揃いの怯えたような目を向けられていて、追い詰められた気持ちになりました。


「あーもう。分かりましたって。ちょっと色々問題ありみたいですから。今晩、改めて個別に話しましょう!」


 自棄っぱちで言い切ると、一先ず皆様のキツイ視線が緩みました。

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