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「レイナード! おい、大丈夫か?」


 耳元でけたたましい声がする。


「いやだわぁ。レイナードちゃん、昨日倒れたばっかりなのよ。誰? 無茶させたのは?」


 これまた今聞きたくない面倒臭い声音だ。


「済まない。私だ。」


 あ、これも無性にムカつく声だ。


「もう、殿下〜。レイナードちゃんは記憶喪失なんだから、ショック療法でも、ここまでやっちゃ駄目ですよぉ?」


「ああ。聞いてはいたが、どうせサボる為の口実だろうと。」


「ほらほら、そういう苛め方してると、せっかく可愛い性格になったのに、また歪み直しちゃうじゃないですかぁ。」


 頭痛が酷くなりそうな会話に、頑張って目を開ける。


 と、柱に囲まれた円形広場の隅で、どうやら寝てたようです。


「あ、レイナードちゃん気付いた?」


 覗き込んできた軍医のリムニィさんに、顰めっ面で一言。


「滅茶苦茶頭痛いんで、ちょっと黙ってて貰えますか?」


 ぴたりと周りの会話が止まりました。


 どうやら、どSパワハラ王子様に苛められて倒れてから、そんなに時間は経ってないようです。


 目をパチパチさせて、頭を両手で抱えてからゴロンゴロン左右に寝返りを打って、それでも楽にならないので、仕方なくリムニィさんに目を向けました。


「リムニィさん、頭痛薬ってありますか?」


「鎮痛剤ね。強いのから弱いのまで各種あるわよ? どうしとく?」


 成る程そこは、患者の意見も聞いてもらえるんですね。


「ええと、素早く効いて副作用の少ないやつお願いします。これから部屋戻って寝ようと思うので、眠くなるやつでもいいです。ただし、食欲ないので空腹時服用不可のやつは避けて下さい。」


 ここぞとばかり注文を付けてみると、リムニィさんが何とも言えない顔になりました。


「あんた、医者みたいな事言うのね。そういうキャラだっけ?」


 何やら疑いの目を向けて下さいますが、知った事ではありません。


「あーえっと、済まなかったなレイナード。」


 ちょっと気まずそうに王子様が謝って来ますが、知りません。


「いいから黙っててくれますか? 色々振り切れてて、さっさと眠って忘れたいんです。明日目が覚めたら気を取り直して頑張りますから、今日はもう勘弁して下さい。」


 はっきりキツめに遮ってみますが、王子様相手に不敬罪で首が飛ぶとか、今は考えたくないです。


 明日反省文とかで許して下さい。


「そ、そうか。では、また明日な。」


 王子様はそう言って去って行ってくれました。


 お願いですから、後であいつ失礼じゃない? とか気付かないで下さいね。


「レイナード、起きれるか?」


 訊いてくるのは、トイトニー隊長です。


 仕方ないのでゆっくりと上体を起こそうとすると、リムニィさんとトイトニー隊長に両側から支えられました。


 基本優しい人達ですが、トイトニー隊長が王子様にレイナードを売り渡した事は忘れませんから。


「トイトニー隊長。」


 と、声を掛けてきたのはケインズさんです。


 あー、レイナードのこと覚えててくれたんですねー。


 棒読みになるのは、こんな苛め的訓練に強制参加させてくれた上、知らん顔だったケインズさんを恨んでる訳じゃないですよ。


 ええ、多分。


「レイナードを部屋に連れて行くの、代わります。」


「おう、悪いな。」


 という訳で、ケインズさんに肩を貸してもらって凭れながら、隣をリムニィさんが付いてきてくれます。


「なあ、レイナード。」


 ケインズさんが唐突に話し掛けてきます。


「何か、悪かった。俺、お前のこと誤解してたかも。」


 萎れた声で言い辛そうにしているケインズさんですが、まあ誤解があるのは事実でしょう。


「お前って、凄い魔力の持ち主で、魔法の素養も凄いって言われてたから、魔法訓練もただサボってるだけなんだと思ってたんだ。」


 それは、誤解じゃないと思います。


「殿下の魔法を弾いたあれ。未分化な魔力の塊なんだってな。」


 また意味不明な単語が出てきますが、取り敢えず聞いとくことにします。


「それで魔法を弾けるって、物凄い事だって聞いたんだけどな。多分お前、未だ魔力を魔法に変換出来ないんだろうって先輩達が言ってた。」


 うーん、魔力に魔法??


 何がどう違うんだかさっぱりです。


「強過ぎる魔力の制御は難しいから、無意識下で魔力を抑え込んでて、だから魔法変換出来ない。つまり魔法として使う事が出来ないんだろうって。」


 つまり? 魔法訓練をサボってたのは、訓練してもどうせ魔法が使える訳じゃないから? ってことでしょうか?


 その辺はどうなんでしょう? レイナードに聞いてみて下さいってところですね。


 まあ、どうでも良いですが、今は小難しいこと考えたくないので。


「あのー。頭使うのは明日からってことにして貰えますか?」


 支えて貰ってない方の手で頭を抱えてみせると、ケインズさんはハッとしてから済まなさそうな顔になりました。


「ああそうだな。頭痛いんだったな。ごめん。」


 素直なケインズさん、悪くないですね。


 明日からはも少し良好な関係が築けるでしょうか。


 隣で黙ってにやにやしてるリムニィさんが気持ち悪いですが、漸く宿舎に到着です。


 皆様お休みなさい。


 衝撃的事実を前に、現実逃避と睡眠を要求します。

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