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 魔法の訓練ですが、説明に抽象的な表現が多くて、正直ピンと来ないというのが本音でした。


 ここの世界では、魔法に呪文は絶対に必要なものではないようで、ただ、規模の大きな魔法とか効果の強い魔法を使う時は、呪文を唱えた方が良いらしいです。


 何故かと言うと、魔法は基本術者のイメージで体内の魔力を使って作り上げていくものだが、大きかったり強かったりする魔法に対してイメージがブレてたりすると、必要以上の規模になったり、魔力を使い過ぎてしまったりで、非常に危険だからだそうです。


 定型の呪文には、その規模と消費する魔力が織り込まれて限定されているので、失敗がないということのようです。


 だから、基礎の魔法を覚えた者は、次段階として魔法書で呪文を覚えていく必要があるというお話しでした。


 因みに、その魔法書を使ったお勉強は、第二騎士団ナイザリークでは業務の一環として認めてられていますが、通常の業務に含まれる訳ではないので、申請をして特別手当を貰う要領でお給料に反映されるようです。


 それは、騎士団に所属の者全てが魔法適性がある訳ではないからで、この実践訓練も参加していれば申請なしで手当が貰えるものなのだそうです。


 ダメ男くんは、実はこの訓練には一度も参加した事がなく、それでトイトニー隊長は丁寧にその辺りを説明してくれました。


 ついでに言うと、第二騎士団ナイザリークで魔法適性がない騎士達は、魔法適性のある騎士達とお給料格差が大きくなり過ぎないように、通常業務を延長して行って超過手当を貰っているのだそうです。


 色々考えられていますね。


 それはさて置き、トイトニー隊長からまずやってみるように言われたのが、精神統一的な瞑想からの魔力を掌に集めての鬼火作りでした。


 が、どうにも魔力を掌に集めるという作業がピンと来なくて、不発の連続で、トイトニー隊長も唸りながら額に手を当てる始末です。


「うーん。やる気の問題じゃないのかぁ。マルクオール公園を更地にしやがった魔力は何処行ったんだか。」


 ボソボソと、何か聞き捨てならない発言をされた気がします。


 きっと気の所為ですよね?


 公園を更地とか、なんて公害級の迷惑ダメ男でしょう。


 それが原因で魔法の素養があるってことにされてるんでしょうね。


 いえ、実際どうかは知りませんけど。


 ダメ男くんに成り代わった所為で、魔力を失ったっていう可能性も、ありませんかねこれ。


「トイトニー、もう良い。連れて来い。」


 と、さっきの高貴な空気漂うイケメンさんが声を掛けて来ます。


「しかし。殿下、こいつ全く魔力を集めることすら出来てませんが。」


 トイトニー隊長がにがり切った声で返してます。


 は、良いとして、殿下って呼びましたねトイトニー隊長。


 つまり高貴なイケメンさんは、何と王子様。


 第二騎士団ナイザリークの団長様な第二王子様じゃないでしょうか。


 成る程、流石の王族オーラだったんですね。


「それがどうした。出来ないなら身体で覚えさせろ。」


 あれ、高貴なオーラとは裏腹に、何と鬼発言。


 何させる気でしょうか、この王子様。


 付いて来いと合図するトイトニー隊長の後ろにくっついて行くと、いつの間にか王子様の周りから人が引いて、広場の中央にぽっかりと空間が出来上がってます。


 他の人達がその外側を囲んで見てる感じに、凄く嫌な予感がしますね。


「レイナード、構えろ!」


 王子様が厳しい口調で言い放ちますが。


 待って下さい、何構えれば良いですか?


 慌てて側にいるトイトニー隊長を見ますが、苦い顔で肩を竦めてます。


「殿下、無茶だと思いますが。」


 と言いつつ、その場を去っていこうとしてるそこのトイトニー隊長! お願いですから、見捨てないで下さい!


 て言うか、ちゃんとダメ男くんが記憶喪失だって王子様に言ってくれてます?


 それでこの対応だったら、マジで鬼ですよ! あの方。


 軽く涙目でトイトニー隊長を未練がましく見てみましたが、そっと視線を逸らされました。


 ホント酷いですよね?


 ちょっとレイナードくんがグレちゃった気持ちが分かるかもしれません。


 このダメ男製造機め!


 という訳で仕方なく向き直った先で、王子様の視線は絶対零度です。


 王子様、絶対レイナード嫌いですよね?


 合法的に扱きとか、ダメですよ?


 現代社会は体罰禁止なんですよ?


 パワハラも訴えられるんですからね?


「弾くなり止めるなりしないと、死ぬからな。」


 脳内で悪口垂れ流してる内に、王子様は左手上げて構えてたみたいです。


 非情な言葉と共に、左手の掌の中心が光って、何か噴き出して来ます。


 次の瞬間には、咄嗟に身体の前を庇った両腕に衝撃が来て、身体が後ろに吹き飛んでました。


 距離としてはちょびっとだったようですが、気が付くと尻もちをつく形で座り込んでました。


 そこへ容赦なく次弾飛来です。


 何と氷の小ちゃい粒がバラバラ飛んできて、全身に降り注ぐと、雹に当たったみたいに痛かったです。


「良い加減に何とかしないと、手加減出来ないぞ。」


 淡々と言って下さいますが、何とも出来ないって言ってるじゃないですか!


 あ、言ってませんね。


 声に出てませんでした。


 お次は掌から飛んできた火の玉を、これは見切りやすかったので、頑張って横に転がって避けました。


 が、そこへ小石の礫が飛来です。


 どれも威力は物凄く抑えられてるんじゃないかと思いますが、それでも痛いんですよ!


「はいはいはい! どうやって弾いたり止めたりするんですか!」


 もう黙ってられなくて声を大にして訴えてみました。


 が、王子様手を下ろしてくれません。


「魔力を集めて展開するなり撃ち出すなりすれば良い。」


 淡々とほら、無茶を言ってきましたよ?


 その上その構え、次を出すつもりですね!


 ほら、掌光った!


 しかも今までより光りが強いですけど?


 死ぬ! 死ぬからね!


 さっと立ち上がって、逃亡に入ります!

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― 新着の感想 ―
いやいや、いくら嫌いでも記憶喪失の部下に酷すぎるし。 ただのリンチじゃん。
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