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 あの後、数発上がった後に思いの外早く花火のクライマックスが来て。


 つまり、相手に気付かれて魔力を強制的に切り離されたので、残りの魔力分の花火が同時多発的にブチ上がったようで、中々の見応えでした。


 そこで発信は終わりましたが、その間に場所の特定も済み、現場に第三騎士団の騎士さん達が踏み入りました。


 その現場には、呪術師らしき者が倒れていたようです。


 意識のないその人物は王城の牢に入れられつつ意識の回復を待っている状態だそうです。


 夜会の方は当然あれから直ぐにお開きになり、花火のクライマックスに感激し過ぎたマユリさんが懐かしがって泣き出したことで王太子とまた一悶着になり掛けましたが、そこはシルヴェイン王子が間に入って収めてくれました。


 少し落ち着いたマユリさんからも、謝罪と共にまた見せて欲しいと頼まれました。


 という訳で、極小サイズの花火魔法の開発が課題になりそうです。


 国王陛下と王弟殿下とは、また日を改めて話す機会を持つ事になり、ファーバー公とリンド騎士団長は騎士さん達から取り調べを受ける事になって、連行されて行きました。


 フォーラスさんとカリアンさんからも後日面会の約束を取り付けられましたが、その他無数に来そうになっていたお誘いは、シルヴェイン王子とランバスティス伯爵おとうさんが遮ってくれて、伯爵家に話しを通すようにと断ってくれました。


 そんな慌ただしい夜会会場から第二騎士団ナイザリークの宿舎に帰り着いたのは、シンデレラタイムを数時間過ぎた辺りだったと思います。


 出迎えてくれたケインズさんとハイドナーには、簡単な説明をして遅くまで留守番をしてくれた御礼を言って一先ず帰って貰いました。


 後日二人には改めてしっかりお礼をしなければと思いますが、その前に休息ですね。


 化粧やらドレスやら、色々オフして倒れ込んだベッドで、小さな小さな手が頭を撫で撫でしてくれているのに気付きました。


「レイカ様、お疲れ様でした。」


 目を上げた先で微笑む指人形に、少し歪んだ笑みを返してしまいました。


 こういう時はちょっと絆されそうになる可愛い指人形ですね。


 ですが、指人形にはどうしても確認しておくべきことがありましたね。


「ホント疲れた〜。てゆうか、今日の最後のあれはアウトだった?セーフ?」


「限りなくアウトに近いセーフでしょうか? 神官と元祖聖女に手伝わせたのでギリギリ許される領域になりましたね。」


 それには、乾いた笑いが浮かびました。


「あ、やっぱり? やっちゃってから、マズイかもって思った。」


「まあ、レイカ様が楽しそうに使っていらっしゃったので、いざとなったら僕と逃避行の旅に出れば済むだけのことと割り切ることにしました。」


 にっこり笑顔で返されて、更に顔が引きつります。


「いや、そこは割り切らずに止めてよ。」


「え?そうですか? 楽しいと思いますよ? レイカ様と2人きりで命懸けの逃避行。相手が世界ですから、スリル満点ですし。」


「・・・そんなスリルは要りません。」


 この指人形、頼りになるかと思いきや、やっぱり油断ならない存在ですね。


「捕まったのはエセ賢者? 魔人の主人は捕まった人だと思う?」


 と、改めて訊いてみると、指人形は考え込むような顔になりました。


「何とも言えませんが、レイカ様の探している身体の主殿を陥れようとした人物は、恐らくその呪術師である可能性が高いと思います。身体の主殿は、その人物から呪術を学んだのでしょう。ただし、その人物が意図しない形で使用されたので、ただの呪術の筈が禁呪になってしまったと、そういったことかと。」


「そっか、エセ賢者はレイナードの師匠だったのね。てゆうか、呪術師って合法? 呪術自体が非合法だった場合、レイナードってそもそもが犯罪者なんじゃ?」


 薄ら寒い気分で口にすると、指人形はにこりと微笑みました。


「呪術も魔法も、使い方一つで合法とも非合法とも言われるものになります。人の社会で上手く溶け込んで生きて行きたければ、使い方にはお気を付け下さいね。」


 にこやかに語り切った指人形ですが、まあ僕はどちらでも良いんですけどね、っていう副音声が後から流れている気がします。


 何はともあれ、魔法を使う時にはもう少し慎重になった方が良さそうですね。


 明日はシルヴェイン王子としっかり口裏合わせと今後の対策について話し合いたいと思います。


 そういえば、そのシルヴェイン王子ですが、夜会の会場から戻るのに、自分が送ると随分と粘っていました。


 それどころではない状況だということで、最後には諦めてコルステアくんに託していましたが、どうしてそこまでと思う程不本意そうな顔でした。


 送ってくれたコルステアくんはコルステアくんで、もう王子に捕まっておきなよ、とか、一騎士じゃおねー様を守れないよ? とか、よく分からない事を言っていましたね。


 こちら確かに一騎士になったばかりの身の上ですが、自分の付加価値を周りに認めさせるのと、身を守る立場を手に入れるのは、そもそもがここで生きて行く絶対条件だとわかっています。


 だから、今少しずつこちらも活動中なんですから、外野は少し黙ってて貰えないでしょうか。


 社会的暴力に泣き寝入りは、もうしないって決めてるんです。


 必要なら、権力の頂点だろうがなんだろうが、臆せずに向かって行くつもりで覚悟決めてますから、なんて言ったらコルステアくんには大反対されそうですね。


 でもですね、こちらの社会常識が身に染み付く前に、自分の付加価値を認めさせて立場を確立しておくのは、今貰っている最大のアドバンテージだと思うんですよ。


 今この時が頑張りどころだってことです。


 その為にも、今はゆっくり休んで明日に備えたいと思います。


 お休みなさい!


「お休みなさい、レイカ様。」


 指人形の声が間近に聞こえて、小さな小さな湿った感触が瞑った瞼に落ちて来た気がしましたが。


 ここは、もう気付かなかったフリです!


 起きて抗議したところで指人形を喜ばせるだけだって最近学習しましたからね!

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