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 騎士さんと魔法使いさん達に囲まれたまま近付いた国王の前で、ご挨拶の時間ですね。


 なるべく綺麗に見えるようにカテーシーをしてから、名乗ることにします。


「国王陛下にご挨拶申し上げます。ランバスティス伯爵家のレイカルディナ・セリダインでございます。」


「うむ。シルヴェインからも聞いておる。制御出来ぬ程に強い魔力を持って生まれたレイナードを助ける為に、異世界から招かれた“神々の寵児”とのことであったな?」


 何処まで国王が把握しているのか知りませんが、公にはそういう事情で通すようですね。


「レイナードさんの身体とこうして同化致しましたので、ランバスティス伯爵にも娘として受け入れて頂ける事になりました。陛下よりもご配慮を賜り、ランバスティス伯爵家の長女としての届出を受理して頂けたと伺っております。」


 深く頭を下げて謝意を示すと、周りからほうと感心するような声が漏れ聞こえて来ました。


 チラリと盗み見た国王の反応も悪くなさそうに見えます。


「ふむ。そなたレイナードとしてこちらで一月過ごし、その姿となってから数ヶ月経つと聞くが、随分と落ち着いておるようだな。」


「はい。幸い第二王子殿下を始め、第二騎士団ナイザリークの皆様にも良くして頂いておりますし。ランバスティス伯爵家のお父様やお母様、兄弟達にも良く気遣って貰っていますので。」


 始めの一月はともかく、最近では偽りなくその通りなので心からの笑顔を乗せて答えましたよ。


 これには、周りから好意的な反応が返って来ました。


 但し、近付いて来た王太子とマユリさんの表情はイマイチですね。


「ならば、引き続きシルヴェインの元で気兼ねなく過ごすが良かろう。」


 さて、この辺りで一段落でしょうか。


 チラリとシルヴェイン王子に目を向けると頷き返されました。


「父上、レイカ嬢から先程起こりました由々しき事件についてご説明させて頂けますでしょうか?」


「うむ。話してみなさい。」


 そこからさっきシルヴェイン王子にしたザックリ説明をしてみることにしました。


「という訳で、魔人の契約者の呪術師の居場所の探索を今すぐに行うご許可を頂けますでしょうか。」


 話しの早いタイプの王様だと助かると思いつつ終えた説明に、周囲が大きく騒つきました。


 側で待機していた王太子とマユリさんは困惑と不信そうな表情で、渋い顔でこちらに来ていたファーバー公と国王の側にいた例の騎士も皆の視線を受けてムッとした表情になっています。


「うむ。シルヴェイン、話しが少々飛躍し過ぎているようだ。詳しく解説するように。」


 無理もないお話しですが、エセ賢者の探索に移るなら早くした方が絶対に良いと思うのですが。


「父上、レイカ嬢は呪詛を掛けた術者を今なら追えると急ぎで許可を必要としております。詳しい話しはそれが済んでからではいけないでしょうか?」


 柔らかく言葉を選んで答えたシルヴェイン王子に、国王は眉を寄せました。


「ここまで無許可で終えておいて、なぜ探索だけに許可を求める?」


 尤もなお言葉ですが、探索には聖なる魔法じゃない一般魔法が必要なんですよね。


 シルヴェイン王子にそんな意味を込めて視線を送ると、目を挟めたシルヴェイン王子が苦い顔付きになりました。


「レイカ嬢の使う魔法は、こちらで一般的に考えられている魔法とは考え方の違う理論に基づいて使っているものがあるようなのです。ですから、こちらでどんな反作用があるか分からないからと、無闇に使う事を留めておりまして。」


 シルヴェイン王子が苦し紛れに中々の言い訳を考え出してくれたようです。


「成る程な、そういう事もあるだろう。して? 今から使おうとしている魔法には問題はないのか?」


 一応の理解を示した上での国王の追求に、シルヴェイン王子はやはり苦いめの顔を向けて来ます。


「簡単に説明します。姿を消す直前にあの魔人には聖なる魔法の応用で一定の時間の経過と共に信号を発信する仕掛け魔法をくっ付けておきました。それを風魔法で王都内をスキャンして探します。」


「・・・探索魔法でその信号だけを拾うという事か?」


「そうです!」


 察しの良いシルヴェイン王子には本当に助かります。


 向こうで言うGPSみたいなものってことで。


「凄い・・・」


 マユリさんの呟きが聞こえました。


 そして、ザワザワと囁き交わす人々の声が大きくなって来ます。


「カリアン!」


 それを割って国王の声が響きます。


 と、魔法使いのローブを着た男性が一人走り寄って来ました。


「はい!」


 40歳前後くらいに見えるハキハキとした喋り方の人ですが、走り寄る間も国王に返事をしてこちらを向いた後も、何やらブツブツと呟きながら考えている様子です。


 そのブツブツに耳を傾けてみると。


「聖なる魔法で信号? 複合魔法か? いや、しかし今までそんな事例は・・・」


 瞬時にさあっと血の気が下がったのは内緒です。


 聖なる魔法の応用と思ってましたが、複合魔法になってたんでしょうか?


 これ、どう誤魔化しましょう。


 やっぱり魔法研究されてるような人の前でオリジナル魔法の開拓は控えるべきでしたね。


「えっと。王都の地理が把握出来てないし探索魔法にはちょっと自信がないので、手伝って貰えますか?」


 ここは素直に巻き込んでしまう事にしようと思います。


「は? え、私ですか?」


「はい。魔法使いさんですよね? 探索魔法の効率の良い展開の仕方とか、教えて貰えたらと。」


 自分の世界から漸く帰ってきた様子のカリアンさんがキョトンとした目で見返して来ます。


「理論的には出来そうだって分かってるんですけど、魔力消費が非効率だったりして、探索出来ずに終わったり、地理が分からない所為で場所の特定が出来なかったら意味がないでしょう?」


 言い募ってみると、瞬きを繰り返されました。


「レイカの上げる信号は、他の者にも探知可能なものなのか?」


 と、隣からシルヴェイン王子の声が掛かって、どうやら助けてくれるようです。


 が、他人が感知出来るのかどうかは、ちょっと分からないですね。


「どう、でしょうか?」


 どうにも、人様には見えないものを見える体質になったようですからね。


 異世界転移者特典なのか、レイナードの元から持つ体質なのか、とにかくその堺が分からないので困りものです。


「では、まずレイカはその信号を余人が見える信号に置き換える事にしよう。それを、カリアンが探索魔法で探すという事でどうだろうか?」


「そう、ですよね。手伝って貰うとなると、そういうことになりますよね?」


 対象が側にいる訳ではないので、とにかく自力で居場所を特定してから、そこで皆さんに見える信号を上げるってことですね。


「花火か閃光弾みたいなものでも上空に打ち上げれば良いですか?」


「あー、そうなりますと。始めの場所さえ大まかに特定出来れば、兵士の目でも追えますね。」


 カリアンさんが続けて、漸く笑みを浮かべてくれました。


「じゃ、やってみますね?」


 と、仕方なく口にしたところで、視界の端でファーバー公がこちらに肩を怒らせてズンズン近付いて来るのが見えました。


「待て待て待て! その小娘の言う事を、疑いもなく鵜呑みにするつもりか? 何が見えただと? 誰にも見えない呪詛だの魔人だのを持ち出して! 昼間も私を巻き込んで同じような話しを始めたが、結局神官にも呪詛の気配は感じられなかったそうではないか! だから私が自作自演ではないかと言ったのだ!」


 声高にそんな事を言い出すファーバー公に、周りのギャラリーからザワザワと声が上がります。


 そして、向けられる疑いを持った目も。


 ですが、ここは微笑んで差し上げる事にしますよ?


「仰る通り昼間の事件の時は、完璧に解呪し過ぎた所為で呪詛の形跡が消えてしまった訳ですけれど、先程のものはその辺りも気を付けましたので、神官様にも痕跡を見付けて頂ける筈です。どうぞ、神殿から早急に神官様をお呼び下さいませ。」


 因みに、貴方と偉そうな騎士さんの指輪に最も濃厚な呪詛の痕跡が残ってると思いますが、とは口にしない事にします。


 自信満々な笑みを浮かべるこちらに、ファーバー公はギリっと奥歯を噛み締めたようです。


 さてどうするかと様子を窺っていると、王弟殿下が国王とコソコソと会話を交わしてからこちらを見ました。


「レイカルディナ嬢、神官を呼んで構わないのだな?」


 そう問い掛けて来る王弟殿下に、こくりと頷き返します。


 こちらには後ろ暗いところはありませんからね。


 但し、買収されていてきちんと証言出来ない人は要りませんが。


「では、フォーラス殿!」


 と、覚えのある名前が聞こえて来ましたね。


 この場に神官さんがいらっしゃるとは。


 そして、コルステアくんのお知り合いの多分信用出来そうな方で、研究熱心な方となると、この場の検証者として打って付けですね。


 期待しておきたいと思います。

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