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 飛行訓練が始まってからのヒヨコちゃんの食欲が凄いです。


 あっという間に低空を数メートル飛んでみたかと思うと、降りて来てお母さんから餌を貰います。


 そのガッつき方が凄いんですが、それに合わせて身体がぐんと大きくなったように見えます。


 もう持ち上げて運ぶのは無理なんじゃないでしょうか。


 しかもそれが2日間でなので、魔獣はやはり普通の動物とは生態が違ったようです。


 これは塔の魔法使いさん達にも予想外だったようで、慌ててマニメイラさん達が観察に来ていました。


 この分だと思ったよりも巣立ちが間近に迫っているかもしれないとのことでした。


「環境適応の一種かもしれないわね。それか、弱さを装って庇護欲を唆る期間を長くすることで生き残りをかけてるとか。何にせよ、サイズが親鶏に急速に近付いてるから、早ければ数日か5日以内には巣立っちゃうんじゃないかしら。」


 マニメイラさんのこの解説には、第二騎士団ナイザリークでもちょっとした騒めきが起こったくらいでした。


 これを受けて慌てることになったのが、レイカの第二騎士団ナイザリーク入団です。


 ヒヨコちゃんの託児があるから第二騎士団ナイザリークに留まっているという建前があるので、巣立ちの前に入団してしまう必要があります。


 今日中に納品に来るという制服等の試着を行って、入団の手続き書類も急ピッチで関係部署に回されているそうです。


 今夜夜会に出ている暇はないのではないかと思いましたが、昼前にはシルヴェイン王子からエスコートを引き受けるので夕方迎えに来ると連絡がありました。


 あちらでも、会社主催のパーティーに参加したり、裏方の手伝いをしたことや、他社のパーティーに呼ばれたこともあって、パーティーマナー自体はある程度分かっていますが、身分社会のこちらのパーティーはもっと細かい決まり事が色々とあるようです。


 セイナーダさんにザックリと礼儀作法教育と共に説明されていますが、実践してみて始めて実感出来ることもあるだろうと、さくっと流されたところも多々ありそうですね。


 シルヴェイン王子のエスコートだから有難いことも、だからこそ最低限押さえておかなければいけないところもありそうなので、現場では精々空気読んで頑張ろうと思います。


「という訳で、巣立ちまでこれから餌やりは毎回観察に来ますので、第二騎士団ナイザリークの会議室の一つをこちらの待機所として開放して頂きたいです。」


 トイトニー隊長に要求するマニメイラさんの圧が凄いです。


 そして睨み返すトイトニー隊長、視線で人が殺せそうですよ。


 会議室に連れて行かれて片隅で我関せず、ヒヨコちゃんとコルちゃんを撫で撫でして過ごしてます。


 飛行訓練が本格化してから、ヒヨコちゃんが時折べったり甘えに来るようになって、ちょっと可愛いです。


 別れの時が近付いてるのが分かるんでしょうか。


 お母さんと似た仕草で後ろ頭をスリスリして来ます。


 触ると生まれたての頃と比べて羽も大きく硬くなってきてるし、手触りが変わって来ました。


 鳴き声もピヨピヨから時折腹から出してるようなピーヒュルルっていうのを織り交ぜてくるようになりました。


 翼を広げて、見て見て〜っていうアピールがあったりと、順調に巣立ちに向かっているようですね。


 魔法使いさん達が観察したくなる気持ちもちょっと分かります。


 が、隊長とは仲良くして欲しいです。


 言葉のぶつけ合いと視線のぶつけ合いが、見てて痛いです。


「ファーバー公が興味を示されたってことで、細かく報告書を上げなきゃいけないのよ!」


 マニメイラさんが全てをぶった斬るように上げた一言が耳に入ってきました。


「あぁ、ファーバー公が。」


 初めて、何か分かり合ったような相槌を返したトイトニー隊長ですが、何者でしょうかファーバー公。


「あの方のご要望なら、塔も動かざるを得ないだろうな。なら、最初からそう言えば良い。」


「だから、最近になってからなのよ、多分お耳に入ったのが。」


 苦い口調のマニメイラさん、何だか問題ありそうな人物なんでしょうか。


「まあ、公自身が見学に来られるというのでなければ問題ないだろうが。会議室は開けておこう。」


 いきなり折れたトイトニー隊長ですが、マニメイラさんの顔付きはまだ微妙なままです。


「上からの話しだと、もしかしたらご見学もあるかも。だから、待機出来る場所が欲しかったのよ。」


「・・・面倒だな。何とか止められないのか?」


「無理よ〜。今となっては、あの方の絶対の支援は塔にとって無碍に出来ないものだからね。」


 トイトニー隊長もマニメイラさんも苦い表情です。


 何処にでも粗略に出来ないけど扱い辛い存在っているものですよね。


「じゃ、団長には報告しておくが、鉢合わせなきゃ良いが。」


 トイトニー隊長からのちょっと気になる発言に、つい2人に視線を向けてしまいます。


 それに気付いた2人がちょっと気まずそうな顔になるのは何でしょうか。


「ファーバー公はな、ウチの団長とはちょっとな。」


「混ぜるな危険的な?」


 返してみると、少し妙な顔をしてからトイトニー隊長はふっと苦笑を抜いてきました。


「まさにな、公も魔法研究の支援をされたりと悪い方ではないんだろうが、団長とはお考えが合わないことがあってな。」


 つまり仲悪いってことですね。


 如才なく振る舞ってそうなシルヴェイン王子が珍しいですね。


 ということは、そのシルヴェイン王子の庇護を受けている立場のレイカにとっては、要注意人物なのかもしれません。


 脳内メモをしっかりとっておきましょう。


「ファーバー公は、王兄殿下でいらっしゃる。先王が若い頃、正妃様を迎えられる前にお生まれになった庶子のお子様で、魔力量が少なめでいらしたことで王位継承からは外されたのだそうだ。だが、魔法には興味を示しておられて、様々な魔法研究の支援をしていらっしゃる方だ。」


 そんな人が、何故シルヴェイン王子とソリが合わないのか不思議です。


 ?マークを頭に一杯浮かべつつ首を傾げていると、トイトニー隊長が渋い顔になりました。


「これ以上は、気になるなら団長に直接聞いた方が良い。・・・いや、君は聞いておくべきかもしれないな。」


 トイトニー隊長の意味深な言葉に、すっかり興味を煽られてしまいましたが、本当は怖い王族の裏事情、とかが飛び出して来そうで、触るべきか悩ましいところですね。


「そーですかぁ。へぇ。」


 薄めの反応で取り敢えず流しておく事にしました。

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