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 騎士団の夕食時、食堂で先日手伝って貰った騎士さん達にお菓子を配っていると、冗談なのか本気なのか、5人くらいから告白めいた言葉を貰いました。


 一律、お気持ち有難うございます、でもごめんなさい。


 と、お断り文句を口にしましたが、ちょっと上から目線の自意識過剰だったでしょうか。


 皆様笑って流して下さいましたが、後から恥かかされたって刺されたらどうしましょうか。


 美少女の上手い躱し方神対応編とか、何処かで編纂されてないでしょうか。


 今度美少女見つけて教えを乞うてみましょうか。


 何て下らない事を考えつつ、自分の夕食とお風呂を済ませて部屋に戻ると、ベッドで指人形が正座で待っていました。


 これ、契約が済んで人に見えるようになったら、ちょっとイケナイ趣味だって思われないでしょうか。


 ベッドで正座待ちは止めるようにお願いしてみましょう。


「お帰りなさいませ、我が君。」


「そろそろ我が君呼び止めようか。レイカで良いです。じゃないと契約しません。あと、ベッドで正座で待ってるのも止めて。」


 並べてみると、指人形がそれは柔らかく笑みを返して来ました。


「では、契約が済んだら、毎晩腕枕しますね。」


 うっとり目の中にハートマーク浮かべるのやめて欲しいです。


「はい? そのサイズで腕枕したら潰れるでしょ、しかも全身。朝になったら漏れなく延し魔人出来上がってる状態って、流石に気持ち悪いから。」


「・・・大きくなったら。」


「なりません。させません。大きくなるなら、この部屋入れませんから。」


 はっきりきっぱり言い切ってみると、指人形はぷうっと頰を膨らませてご不満の様子です。


「レイカ様は残酷です。」


「ええ、残酷上等。魔王の器持ちですからこれでも。」


 ここは一歩も譲りませんよ?


「でも、ほら、何処かでお倒れになったりした時には、大きい方が良かったってなりませんか?」


「あのね、人間そう簡単に倒れないから。か弱いお嬢様路線行く気ないし。」


 腕組みして反論して行きますよ。


「ああ言えばこう言う。」


「ええ、ええ、可愛くないですとも。ぜんっぜん気にしませんからね!」


「ぐっ! 可愛いですけどね? やっぱり誰にも見せないように監禁しちゃおうかな。」


 この、無害そうな笑顔で言う事が、やっぱりヤンデレ気質ですね、この魔人。


「契約、やっぱり止めよう! 後が怖過ぎるから。」


「またまたぁ、そんな事仰って、世界から排除される存在として追われる身になるのはお嫌でしょう?」


「・・・脅し?」


 にっこり良い笑顔返って来ましたね、この性悪魔人め。


「とはいえ、今直ぐの契約は仰る通り早計かもしれません。僕も色々リサーチして来ましたが、レイカ様の敵は中々さるものでしたよ?」


 言い出した指人形に、思わずばっと目を向け直してしまいました。


「敵って、まさかエセ賢者? 見付けたの!」


 つい声を大きくしてしまうと、指人形はしっと小さな指を口の前に立てました。


「本人の特定には至っておりませんが、こちらも魔人の中での情報網を駆使して、レイカ様の器の主殿に付いていた魔人の事を聞き込みして参りました。」


 この良い加減な魔人が、ちょっと頼もしく感じたりしたのは、きっと気の所為です。


「へぇ、魔人組合みたいなのがあるんだぁ。」


 感心して言ってみると、指人形には何故かにっこりスルーな笑顔を貰いました。


 これって、それ以上聞くなって時に駆使する笑顔ですよね?


 咳払いなどして続ける指人形が、本当胡散臭いです。


「実はその魔人、器殿が禁呪に踏み切るキッカケとなった、“神々の寵児”殿を攫った実行犯だった事が分かりました。しかも、器殿の指示でも意思を汲み取って動いた訳でもございません。つまり、第三者に唆されて行ったようですね。」


 これには、ムッと顔を顰めてしまいますよ。


「ちょっと、魔人って主人の言う事絶対で、他の人間の言う事なんか聞かない筈じゃないの?」


 何となく魔力を貰って仕えるとか言っていた指人形の発言からそんな存在だと思い込んでいましたが、実はもっと独立した自由な存在だったんでしょうか?


「はい。本来そうなのですが、器殿は自らに様々な制約を課して生きていた人だったので。どうやら、かの魔人と契約した自覚はなかったようなのです。ですから、当然意思の疎通もなく、命令も要求も会話もない。」


「魔人の方が、レイナードの望みを想像して先回りしていたって事?」


 それが本当なら、あの黒いアゲハ蝶、ちょっとだけ可哀想な存在でしたね。


「そういうことのようです。で、それを第三者に気付かれて利用されたということのようですね。」


「ホント、エセ賢者最低。」


 指人形は吐き出したこちらを見て、にこりと柔らかい笑みを向けて来ました。


「レイカ様、大好きです。」


「あーはいはい。あーとーございます。でも、ごめんなさいです。」


 怖いので、ちゃんとお断り文句も口にしておきますよ。


 と、指人形がふふっとおかしそうに笑っていました。


「分かってますよ? 長期戦は覚悟です。でも、いつかは僕無しでは生きていけなくしてさしあげますから。」


「わー、こーわーいー。」


 ホントに怖いんですが、何とかなりませんかね、この拗らせ魔人。


「まあ、それに関してはこれからじっくり時間を掛けて取り組んで行きますから、一先ず今は置いておきましょうか。」


 脱線させたのは、そちらですけどね。


「そんな訳で、敵は魔人を特定して唆す手段を持つ者のようですから、念には念を入れて、今の段階での契約は見送りましょう。この状態ならば、レイカ様以外の者には僕の存在を感知出来ませんから。その状態を保ちつつ、レイカ様を陰ながらサポートする方が有効でしょう。」


 こう病んでない状態の指人形ならば、やっぱり頼りになるんですよね。


 本当残念な存在です。


「うん、まあそうだね。」


「ええ、その間に僕はレイカ様に張り付いて、敵を特定するお手伝いをさせていただきます。今の僕限定で駆使出来る裏情報網も捨て難いですし。」


「へぇ、出所は?」


 さり気なく挟んだ突っ込みには、やはり指人形にっこり笑顔で流しに掛かりますね。


「まあ、言いたくないならいいけど、腹黒指人形の事だから、ちょっと想像付くけど。」


「へ、へぇ。それはどんな?」


 えへんと脇腹に手を当てて胸を逸らしてみせますよ?


「今の貴方の存在を認識出来てるのは、世界の運営を司るもの、神様とかそんな存在だけの筈。そこに交渉を持ち掛けて有利な情報を引き出してるんじゃないの? さしずめ、私との契約の為の必須事項だからとか言いくるめて。」


 そうこの魔人、基本的に腹黒いんですよ。


 お陰でこちらも世界的なご都合に振り回されずに済んでいる向きもあるのかもしれません。


 そういう意味では、この腹黒魔人が専属で良かったのかもしれませんが。


「まあ、それに関しては口出ししないので。でもやり過ぎ注意、何事も程々にって大事だからね。」


「・・・やっぱり大好きです、レイカ様。」


「はいはい。」


 平和な未来が遥か遠くに感じるのは何故でしょうか。


 細かい事は気にしちゃ負けだってことにして、考えない方向で行こうと思います。

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