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 会議室での緊急会議に一段落が付いたところで、シルヴェイン王子が改まったような目を向けて来ます。


「ところでレイカ殿。これからもう一つ片付けておいていいだろうか?」


 何をでしょうか? と頷きつつ無言で促してみたところで、会議室の扉が外から叩かれます。


 ヒヨコちゃんのご飯まではもう少しあるかと思っていたのですが、お母さんが降りて来たんでしょうか?


「シルヴェイン王子! 王太子殿下がお見えです!」


 外から掛かった言葉に、シルヴェイン王子と顔を見合わせてしまいます。


 それ、これからですか?


 という目線に、シルヴェイン王子が苦笑いしました。


「分かった、お通ししてくれ!」


 扉の向こうにシルヴェイン王子が答えたところで、開いた扉から第一騎士団の制服の騎士さん達に囲まれるようにして王太子とマユリさんが入って来ます。


 王太子と騎士さんがたの鋭い視線がこちらに向けられて刺さるかと思いました。


「・・・本当に、女性化したのだな。」


 視線の鋭さは緩みましたが、マジマジと観察するような視線が煩いですね。


「あの! 中身がレイナード様じゃないって本当ですか?」


 今度はマユリさんが身を乗り出しつつ訊いてきます。


 すっとその場で立ち上がってマユリさんの方に向き直ると、囲む騎士さん達が警戒するように間に立ちました。


「マユリさん、日本人ですよね? 向こう出て来たのは高校生の時?」


 気にせず問い掛けてみたところ、騎士さん達の眦が上がりましたね。


「えっと、そうです! あの、レイナード様の中の人は?」


 あ、名前名乗ってなかったですね。


「レイカです。フルだと市井怜樺ですね。マユリさんの本名は?」


「皆本茉由莉です。わあ、本当に日本人なんですね! 嬉しい〜!」


 可愛らしく胸の前で両手を握り締めるマユリさんに、王太子と騎士さん達の目元が緩んでます。


 マユリさん、魅了系チートでも貰ってるんでしょうか。


「マユリさん、その内日本食再現開発しましょうね!」


「するする!! どう説明しても宮殿の料理人さん達分かってくれないんだもん! ラーメン、やきそば、チャーハン、スイーツも! 夏はアイスとシャーベットでしょ!」


「んー、果汁とシロップ投入してカチ割り氷くらいなら、氷魔法使える人なら簡単に作れるんじゃないかな?」


「レイカさん大好き! 私レイカさんに何処までも付いてくから!」


 大興奮のマユリさんの発言に、王太子が顔色を失ってます。


 と、気分が良くなったので、チラッと振り返ってシルヴェイン王子にドヤ顔見せますよ?


「ほら、食への拘りは愛を超えるんですよ?」


 こそっと告げたところで、シルヴェイン王子が呆れ顔になっています。


 それから、くいくいっと顎を横向けるのでそちらに視線を向けると、不機嫌顔の王太子が目に入りました。


「えーと、それは一先ず置いとくとして。」


 咳払いして話しを戻すことにします。


「マユリさんが知ってるルートとシナリオについて詳しく聞かせて貰えませんか? 私、ここの出典全く知らなくて。」


「え? でも、ルートって知ってるなら、詳しくは知らないってこと?」


 いえいえ、マユリさんとは世代が違う上、乙女ゲームって言葉は知ってても、プレイしてみた事はないんですよね。


「えっと、マユリさんの発言から想像してみただけで、本当に全く知らないです。選択式乙女ゲーム?で合ってるかな?」


「うん、そうなの。でも、これまではそんなこと言っても信じて貰えないし、言えなくて。」


 しゅんとしながら言うマユリさんは、確かに庇護欲を唆る系美少女ですね。


「それじゃ、知ってる事何か言えば聖女の予言ってことになって? 聖なる未分化な魔法を使えるから崇められるみたいな感じだった?」


「そうそう。本当は普通の魔法使えたら良かったのにって思うけど、聖なる魔法って仕組みが分かりにくくて使い難いのよね。」


 愚痴調になってきたマユリさんの発言に、周りが戸惑い顔になってきました。


「そっか。じゃ、ここは一つ、これまで溜めてた色々を吐き出す会にしましょうか? で?聞かせて良いのは誰? それ以外は邪魔だし、部屋から追い出しとこうか。」


「は? 何だと!」


 そう声を上げたのは王太子でした。


「はい、そこ。王太子殿下はヤキモチ妬かないで下さいね。これからちょっと込み入った話ししますので、最低限王太子殿下とシルヴェイン王子殿下とお父さんは居て下さい。隊長達は退室して貰って、お付きの騎士さん達は本当は全員出て貰った方が良いですけど、駄目なら何聞いても黙ってられる大丈夫な人だけ残して下さい。」


「おい! 何でお前が仕切ってるんだ? 何様のつもりだ!」


 こういう事言い出す人、本当好きじゃないんですけど、この人追い出す訳にもいかないので。


「この間の話しの続きですよ。私が色々調べるって言った、探る先をもしかしたらマユリさんは知ってるかもしれないんです。マユリさんの身の安全の為に、情報規制利かせるべきじゃないですか?」


 真面目な顔で言い切ると、王太子が黙りました。


「・・・貴様、何者だ? ただの異世界から来た女じゃないだろう?」


 何だか妙な警戒心を持たれちゃったみたいですね。


「いえ、ただの異世界から中身だけ飛ばされた貴方よりちょっとだけ人生経験長い女子です。」


「は? 嘘を付け。それならお前は幾つだ?」


 思いっきり疑わしそうに告げる王太子に、じっとりした目を向けて返します。


「マユリさん、後で王太子殿下にセクハラについてしっかり教えといて下さい。あっちでは28歳でした。あ、因みに行き遅れ発言やめて下さいね。マユリさんと一緒に軽蔑の目で見ますからね?」


 途端に慌てて開け掛けた口を閉じてチラッとマユリさんに目を向けた王太子さん、命拾いしましたね。


「しかし、28歳の中身が19歳のレイナードの身体に招かれて、女性化したのだろう? やり難くはないのか?」


 咳払いから始まったその言葉は、始めてこちらを気遣うような中身で、少し驚いてしまいました。


「そうなんですよね、今更19歳のノリにはなれなくて。でも周りは19歳の女の子扱いでしょう? こちら良い加減小狡い事も知ってる大人なので。」


「・・・成る程な。まあ小狡いかどうかはともかく。使えそうだから押さえておくべきだというのは分かった。」


 ん? 何か不穏な発言が聞こえたような。


「うん。やはりシルヴェイン、彼女はお前の目の届くところに置いておくべきだな。取り敢えず頼んだぞ?」


「ええ、まあ。その方が良さそうだとは思っています。全く、兄上相手に少しも遠慮がない。ある意味大したものです。」


 この兄弟、本人を目の前にして随分な発言じゃないでしょうか。


「さて、では異世界の女史殿の要請通り、お前達は外で待て。」


 王太子が真面目な顔で騎士達に命じました。


 同じくシルヴェイン王子の合図でトイトニー隊長とカルシファー隊長が会議室を出て行きました。

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