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第二話
「あら。まぁ。たいへん。」
奥の方のレジから高く透き通るような
声が響いた。
抗い難い災難の中にあってこれほど救いと
思えるような響きがこの世にあったのかと
文字通りずぶ濡れの体を些か何でもないことのように取り繕いながらその声の主をを辿った。
淡い色の髪だった。
長く緩く柔らかく背中でひとつにまとめられていた。
それから淡い色の大きな瞳。
声と同じように透けるような白い肌。
年齢は。わからない。
けれど自分より上であることはなんとなく
わかった。
学生ではない。落ち着きというよりは
幼さが垣間見えたのにも関わらずそう思ったのは何故だろう。
警戒心無く人の核に触れてくるようなその危うさが幼さであるようにも思うし、それすらも内包した包容力のようなものを感じたのかもしれない。
何れにしろ一瞬で彼女の糸を手繰り寄せたい衝動に駆られたのだ。
それが全てで。それこそが真実であるとでも言うように。