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第十五話


通りに面した大きな窓は全て内側から塞がれている。昼日中に見た外観とは全く別の様相を呈している。


入り口のドアの前でまた一つ深く呼吸をする。左手の傘を持つ手に力を込める。




勢いよく扉を開くと暗く照明の落とされた店内にあの柔らかな明るい髪の彼女の透き通る白い肌を探した。




「いらっしゃいませ。」


奥のカウンター越しに若い男性が口を開くのが見えた。襟の大きく開いた白いシャツに袖を少し捲った腕が逞しい。




カウンターまで歩を進め


「あの。」


とバーテンダーらしき男性に声をかける。


「オーナーいらっしゃいますか。」


傘を掲げ


「お返ししにきたんです。」


と告げる。




男性が、何か発しようとしたその時あの女性が奥から現れた。


両手にグラスとボトルを抱えている。




「いらっしゃいませ。」


「少しお待ち下さい。ただ今ご案内致します。」




そう言うと近くのテーブルに向かう。


なぜか通路に沿ってではなく誰もいない反対側のテーブルを廻って大きく回り道をしながら若い男女の席に運ぶ。


それが済むとぱたぱたと僕のもとに戻り


「どうぞ。こちらへ。」


とカウンターに近いテーブル席に案内される。


彼女の目線が僕の肩越しに向かって


「お連れ様もどうぞ。」


と言ったその瞬間に僕が頭を抱えたくなったのは言うまでもなく。


恐る恐る振り返る。


はーい。と軽やかな声をあげて見慣れたお団子頭が視界いっぱいに広がる。




「尾けてきたんですか。」


体中から力が抜けていくのがわかった。


「人聞きの悪いこと言わないでほしいわ。」




ロックね。ダブルで。とオーダーをすると




「飲みに行くって言ったでしょ。」




いつもの理不尽な上から発言で反論は全てシャットアウトされる。




僕は力なく項垂れながら案内された席に歩を進める。




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