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第十四話
見慣れた景色をぐんぐん進みキャンパスも通りすぎあの公園が近づく。三駅分は歩いた。
今日は夜空が澄んでいる。
星がいつもより近い気がする。
一つ大きく息をする。
夏の夜の空気を体に取り込む。
真っ暗だった夜道にようやく明かりが見えた。もう少し。足早になるのがわかった。
ステンドグラス風の看板はライトアップされていて昼間見た時とは全然違う。
美しかった。
闇夜の中で蝶の羽のように危うく儚げな、だからこその煌めきを放つ別世界への入り口のようだった。
けれど。
佇まいはまさしくそれで。位置からしてもここがあの店であることは間違いないのに。
店の名は「レア」ではなかった。
蝶のように輝く看板に記されていたのは
アルファベット四文字で
「Real」だった。